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第18話 ダンジョン

「調査隊を出そうか」

「そうねー。少数精鋭でいきましょ」

 名の知れた冒険者、それこそ王都でも有名なパーティがこっちに来ていた。ほか、シーマが魔の森の探索で組んでいたメンバーを含めて編成する。

「ニャーに任せるにゃ」(フンス

 シーマは意気揚々と準備をしている。最近は上がってきた税収をもとに、装備の新調を進めていた。


 ちなみに王都周辺はひどい状況らしい。有力なパーティが根こそぎといっていいくらいの勢いでクルツバッハに来ていた。

 クルツバッハまで遠征できないような弱小パーティしか残っておらず、周囲の魔物討伐も滞っているようだ。

 王都ギルドの嘆願という悲鳴を受けて、こちらから遠征しているほどである。


 チコさんに呼び出された。調査隊の出発前に激励してくれと言われたからだ。

 目の前には36名の精鋭がいる。それぞれが一芸に秀でた者ばかりだ。そして、マリオンと俺の婚約発表にショックを受けて姿を消していたクラウスも参加していた。

「もうこうなったら正式に結婚する前に魔王を僕が倒して、その功績を盾に……ぐふふふふふふふ」

 ということらしい。本当に魔王を討ち取ってくれるなら助かるが、かといってマリオンを嫁にやるわけにはいかん。まあ、やつの婚活の箔にはなるだろうよ。


「此度の任務、受諾してくれて感謝している。命がけになるとは思うが、一人も欠けず、復命することを強く望む。

 さて、魔王の根城の入り口は古文書で調べたとおりだ。もし見つけたらすぐに引き返して報告するように」

「はっ!」

「あと、冒険者諸君。今クルツバッハ家では広く人材を求めている。なにしろ領地が魔の森方面に広がっていくわけだからな」

「「はっ! ……んんんん??」」

「功績を上げた者には篤く報いるだろう。そのためにも生きて帰ってくるんだ。いいな?」

「「「はっ!!!」」」

 最初はリーダーだけの返答だったが最後の激に対しては全員が声をそろえて応じた。よしよし。


 こうしてダンジョンアタックは何度も行われた。罠の解除やマッピング、魔物の強さや配置の確認。

 そして、5層目に現れたボス。扉の封印を守っているそうだ。その扉に刻まれていたのは、古文書で確認した魔王の紋章と一致したと報告が上がってきた。


「よし、俺が行く」

 と宣言すると、家臣たちに全力で止められた。

「殿が行ってはなりません!」

「殿は勇者である前にこの地の領主なのです!」

「まずは冒険者を当らせてみるべきかと」


 うん、こいつらの言い分は正しいのだろう。探索が始まってはや二月。死者は幸い出ていないが重傷者は出ている。アナスタシアの魔法で回復しているが、危険は変わりない。

 だが、だからこそ勇者である俺が先頭に立って切り開かないといけないんだ。


 そう、目の前の書類の山はお前らに託す。

 俺は世界の未来を切り開くため、ダンジョンに挑む。そして魔王を倒すんだ!

 

 背後でチコさんが俺の広背筋を狙って手をワキワキさせている昼下がりのことだった。


 王家からもらった装飾過剰な装備品は即座に売り払った。王家の重宝だと伝えると、どっかの貴族家がいい値段で買い取ってくれたと、出入りの商人がホクホクしていた。

 魔の森から上がってきた希少な素材を使って資金にものを言わせて作った装備だ。長老樹の樹皮と高位魔獣の皮革を重ねて作った皮鎧にこれまた希少なミスリルでコーティングした。

 ミスリル自体は魔力を通すことで固くなったり、打撃を吸収したり、魔法を弾いたりと万能な様相を見せる。魔力の通し方で性質が変わるので使い手を選ぶが。

 また、豊富な資金で買い集めた聖剣、魔剣の類も用意した。

 自身の帯剣としては、ミスリルのブロードソードと短剣を装備した。通す魔力の属性を増幅するので、使い勝手がいい。さらにミスリルを混ぜた金属で作った投げナイフも用意している。

 

「うふふふふふ」

 マリオンが抜き放ったカタナを前に笑みを浮かべている。何度かダンジョンに入っていて、新しい剣技をひらめいたとか、なんかその時にロックゴーレムを両断したとか聞いている。

 カタナ自体も何やら強化されているらしい。


「…………」(フンスフンス

 シーマは曲刀を二刀流で構え、型をなぞっていた。敵がいることを想定しての型稽古だ。つばぜり合いから目の前に魔力弾を設置した後大きくバックステップ。そして両手に持った曲刀を真横に投げた。

 飛んだ曲刀は弧を描いて魔力弾の位置を切り裂くと、そのまま飛んでシーマの手元に戻る。あれ俺でも初見は無理だ。何とかして防ぐかなんかするんだろうが、ダメージは避けられない。


「なにとぞ、なにとぞおおおおお!!!」

 アナスタシアの周辺に冒険者たちが集まっていた。

「えーっとですねえ、勇者様がいるから大丈夫ですの。みなさまの志はありがたく思いますけども……」

「ですから……」

 なんか困ってるみたいだから割り込むことにした。

「どうした?」

「あ、ルーク様。この方々がダンジョンについてきたいと……」

「聖女様の盾にならせてください!」

「一生守ります!」

 なんかイラっとしたのでアナスタシアの前に立った。

「ふわあああ……」

 装備の試着だったが、白銀に輝く鎧に身を包んだ俺はそれなりに見栄えがするはずだ。

「諸君らの気持ち、ありがたく思う。だがアナスタシアは俺が守る。大丈夫だ。そのうえで彼女を守りたいならば相応の実力を示してもらおうか?」

 大丈夫だ。のあたりでアナスタシアを抱き寄せる。なんか敵視が集まってきた。

 ので軽く魔力を開放してみる。盾志願の冒険者たちは固まっていた。というか、クルツバッハに攻めてきた魔族の半分も力を放出してないんだがな。


「では、行こうか。アナスタシア」

「は、はいい……」

 彼女の顔が赤い気がした。野郎どもに囲まれて緊張していたのだろうか。


 俺たちは食料などの確認のため、城門付近の広場に向かうのだった。

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