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何かの訪れは、突然と

読んでいただきありがとうございます

「しかし、貴様は変わっているのだな」

「人の事を貴様と言うのは、駄目だぞ」


「うーん」と、指の腹で顎を撫でつけ、カンムルは元気よく手を上げる。


「分かったのだ! 貴様様」

「何も分かってねぇよそれ。……まあ、で、俺がなんで変わってるんだ?」


 ランバートへ、カンムルの歩調に合わせて歩く。日は傾き始め、あと三時間もすれば、この平原は茜に染まり闇に落ちる数時間の間、幻想的な空間を作り上げる。


 ジハードは、暖かい風に髪を撫でられながら言った。


「俺にとっちゃ、人という者に特別な感情はないし。どちらかと言えば、こうやって接してくれる魔人? のが」

「わっちは人なのだ!」

「お、おう。すまない」

「分かればいいのだよ」


 満足したのか、大きく頷き納得した様子を浮かべる。横目でそれを見たジハードは、ヤレヤレと鼻頭を指先で掻きながら溜息をそっと吐いた。


「わっちも、貴様様と居れば何かわかるやもしれないし、よろしく頼むのだ。でも、ギルドとやらは何をするのだ」


 改めて質問をされ、ジハードは答えに困る。彼女は魔族だ。つまり、ギルドの連中の大半が請け負っているのは、彼女にとっての仲間ではないのだろうか。


 要するに、ジハードは今、カンムルに仲間殺しを強要しようとしていた。


 ──そんな事、出来るはずがない。


「薬草を刈りに行ったり、とかかな」

「そうなのだ? てっきりブルーウルフとかを撃退したりするのだと思っていたのだよ」

「ブルーウルフ?」


 聞いた事のない名前だ。


「ほれ。貴様様が奴らから奪った巾着の中に入っていたではないか。牙やら爪やらが」

「ガウルの事か?」

「貴様様達がなんて呼んでるかは知らないのだ。けれどぞやつを、わっち等はブルーウルフと呼んでいるのだよ」

「なるほど。つまり、カンムルにとってブルーウルフってのは味方じゃないのか?」


 ジハードの何気ない質疑に、カンムルは目を細めて応答する。


「だから!! わっち等は害獣じゃないのだ! 一緒にしてくれるな! なのだよ! むすぅ」

「ごめんごめん。なら、質問を変えよう。カンムルにとって、害獣は困る物か?」


 大きく頷き──


「当たり前なのだ。民の農作物は食い荒らされ、あろう事かその民すらも食料とする。わっち等も良く、討伐隊を派遣していたのだ。まあ一番の敵は、貴様様達なのだよ」

「なら何故、俺を殺さない?」

「分からないのだ。でも、何が違うのだよ」


 簡単に、赤子の手をひねるようにジハード程度は殺せるはずだ。けれど彼女はそうしない。本当に、言い伝え通りの怪物ならば、対話を良しとしてもいないだろう。


 カンムルは本当に不思議な子だ。


 会話は絶え間なく続き、気がつけばランバートの街、入口へと辿り着いていた。


「此処が貴様様達の建物か。わっち等とは全然違うのだな」

「見た事ないのか?」


 大きな看板を見上げながら、ジハードが問うとカンムルは頷く。


「当たり前なのだ。と言うか、来たの自体初めてなのだよ」

「そう言えば、俺達が攻めた話は聞くが、攻められた話は聞かないな……」

「何か言ったのだ?」

「あ、いや。何でもない」


「じゃあ行くか」と、間髪入れずにジハードが話を続け街へと入る数メートル先で、眼前に立ちはだかったのは、赤いマントに女神・フレイルの刺繍を施した帝国騎士の二人組。


 完全な装備をし、物々しい雰囲気を漂わせる彼らは、鎧の軋む音と同時に言った。


「君達はランバートに用があるのかい?」

「ええ、まあ」


 カンムルを隠す形でジハードが答えると、二人でコソコソと話している。

 何を話しているのか気になり、耳を凝らしていると──


「すまない。今、ランバートへは入る事が出来ないんだ」

「何があったんですか?」

「うむ……君は見る所、冒険者だね?」

「そうですが……あの、一体何が」

「なら、気をつけて帰るといい。命は大切にな。女神・フレイル様の御加護があらんことを」


 騎士達が去り、背を伸ばし入口の先を見てみると結構な量の騎士達が居るのを視認できた。


「なんなのだ。何も見えぬのだあ!」

「あ、ああ悪い。今日は、ランバートへ行けそうにない。このまま帰ろうか」


 ジハード一人なら強引にことを運べたかもしれない。けれど後ろでは裾を引っ張るカンムルが居る。


 先程はコートを取れと言われなかったから良いが、傍から見れば怪しいだろう。ジハードに興味すらない街の人々ならまだしも、治安を守る騎士達じゃどう反応してくるか分からない。


 ──致し方がないか。


「途中で、猪でも狩って帰ろう」と、踵を返しながら、ジハードはセラピアに申し訳ない気持ちを抱きながらボソッと口にすると、カンムルは腕を組み頬を膨らませた。


「猪とな。アイツは嫌いなのだ」

「嫌いって、そらまたなんで? 美味く──怖いとかか?」

「怖くないのだが……アイツらは、民が一生懸命作った穀物を食い漁るのだ! なにより、突進ばかりしてくるのだよ!」


 猪に追われるカンムルを想像し、頬が緩む。


「そら見てみたいものだ」

「貴様様! 今バカにしたのだよ!」

「はははっ。怒るな怒るな」

次回は、今日の夜中にできる限り投稿します。

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