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怒りの矛先・後編

読んでいただきありがとうございます。

次回は明日の昼頃になるか、仕事の状況では今日の夜中に投稿します。

「害虫は駆除なのだ」


 拳は緩やかな軌道を描き、ジハードの元へと振り下ろされる。目で追えない速度でもなく、禍々しいまでの魔力を纏っているようにも見えない。


 まるで小さい子供がじゃれ合うような、隙だらけで幼い殴打。ジハードは自然と手を伸ばし拳に触れた。


──パシン。


軽い音が響くのと同時に、少女は興奮したのか恐れたのか、声を震わす。


「貴様、何者──なのだ?」

「何者って、何者でもないのだけれど……」

「ならなぜ、わっちに触れる事ができたのだ!」


 何を言っているのだろうか、この子は。


 痛くもない事に驚くジハードよりも、目を丸くし分かりやすく驚いてみせる少女は、口をポカリと開けていた。


「んだよ。こいつが防げんなら、余裕じゃねーか!この魔人の角は高く売れそうだぜ。行くぞお前ら!」

「おうよ!いつも通り行くぜ!腕力強化バニッシュ


 ガウスの加護が身体を向上させているのも加わり、文字通り風の如く速さを以て、一気に飛びかかる。


 ガウル戦とは全く違う、徹底した戦術。


「早く逃げ「今話してるのだ。黙るのだよ」」

「ガバッ……!?」


 目で追えなかったバッシュを視界に収めた時、彼の腹部には大破した鎧の先に少女の拳がめり込み、くの字となり悶絶している姿だった。


「吹き飛ぶのだ」


 そのまま少女は一歩踏み込み、バッシュを後方へと吹き飛ばす。少女に飛びかかる力も加わり、勢いはけたましい音が鼓膜に残る程強いものだ。

 遥か先で砂煙が巻き上がる。


「何が?起きたんだ」

「くそ! コイツ何者だよ! マーニャ!」

「分かってるわよ! でも、コイツ私の攻撃効かないのよ! 意味がわからないわ!」

「もっと強力なのを撃てよ! ジハード! 貴様、何座ってんだ! 早く俺を守りやがれ! 回復できる俺が居なくなったらお前ら、死ぬだろうが!」


 一定の歩調で歩く少女の先には後退りをし、臆面した様子を浮かべるガウス。その数メートル離れた場所からマーニャが弓を引くが全て弾かれていた。


 このまま放っておけば、少女がガウス達を殺してくれるかもしれない。けれど、それで本当にいいのだろうか。


 ──食い扶持を繋ぐためだ。


 自分に言い聞かせ、起き上がったジハードは駆け寄る。少女は別段急いだ様子はなく、追いつくまでは容易かった。


「無駄な人殺しは辞めるんだ」


 肩を引き、少女を無理やりに振り返らせる。


「ぉお、グアッとなったのだ。でも何故殺しちゃ駄目なのだよ?」

「意味がないからだよ。こんな奴らを殺しても」

「なにが無意味だ、ブァアカが! お前は此処で死ね!マーニャ、ジハード諸共に魔人を討ち取るんだ」

「そりゃあいい! ギルドにもいい口実が出来るし、名誉も頂ける。一石二鳥てやつだね! 一撃で決めるわ! 一撃必殺(ゲイボルグ)!」


 軌道に入るもの全てが吹き飛ぶ程の、高威力を持った真っ赤に染まる矢は、稲光をほとばしらせ一直線にジハード達を襲う。


「なんなのだ、これは」


 マーニャが一撃で終わらせると豪語した矢は、いとも簡単に防がれ、平然とした声と共に矢は灰になり消え去る。ジハードはしっかりと捉えていた。矢が少女に直撃したのを。


 ──一体何があったのだろうか。

 だが、そんな事より。


「これは俺のケジメだ」


 少女に背を向け、ガウスの元へと歩く。拳を強く握り、義憤で血液を沸騰させながら──


「お前、また俺ごと殺す気だったな?」


 腰が砕け、へたり込むガウスは歯をガタガタと鳴らしていた。


「クソ野郎が! 裏切る気か!」


 弓をジハードへ向けて躊躇いなく引く。だが、少女に向けた技は大量の魔力を消費するのか、勢いがない。


「俺だって何もしなかった訳じゃない。これぐらいなら──」


 難なく矢を避け、ガウスの胸ぐらを掴む。


「別に俺を馬鹿にするのはいい。実際、俺は巫覡の一族でありながら、無属性だ。けどな……けど」

「は、離せ! このグズが! マーニャ、こいつを殺……へ?」


 ジハードの手首を掴み暴れていたガウスの力が緩む。視線の先を目で追えば、少女がマーニャの弓をへし折り、コメカミを掴んでいるように見えた。


「マーニャ! 大丈夫か!?」

「アググガ……は、はな──ぜ」

「よそ見している暇はないだろ、ガウス。お前はあろう事か、俺の妹を駆け引きにだしやがった」

「それは方便て奴だろ! 本気にするなよ」


 半べそをかきながら、媚びるような様子を浮かべるのがまた腹ただしい。


「なんでお前は、魔人の攻撃を受けても平気なんだよ……、さては隠している事があるのか? 謝るからアイツを倒し助けてくれ」

「巫山戯るなよ?」


 気がついた時、ジハードの拳はガウスの鼻を直撃していた。


「へぶらっ!!」


 鼻血を出しながら後ろへ倒れ込むガウスを見ながら、ジハードは淡々と口にした。


「俺に力はない。なにせ無属性なんだからな」

「クソ……ッたれ……が」


 気を失いのび切ったガウスから目を逸らし、手首を捻りながらランバートへ向けて歩く。事が全て過ぎてみれば、肩の荷が降りたかのように体は軽く、頭が冴えているのが実感出来た。


 ガウスには可哀想な事をしてしまったと思える程に。

 溜まりに溜まった一撃は、彼にだけ向けたものではなかった。今まで我慢してきたものが、ガウスの発言を引き金とし噴き出したもの。これでジハードはギルドで、後ろ指さされる事が確定してしまった。


「明日からどうすっかな……。つか、コイツらはちゃっかり剥ぎ取って懐にしまい込んでたのかよ。とことん汚ぇ奴等だ」


 追加報酬となるガウルの牙など素材をしっかりとマーニャとガウスの腰巾着から取り、明日の事を考えていると──


「まだ話は終わってないのだ!」

「何がだよ。君もあまり、こっちの大陸には来ない方がいい。あんな奴らより、強いやつなんかわんさかいるんだから」


 両手を広げ、道を阻む少女の頭に手を乗せてジハードが述べると、小首を傾げながら言った。


「わっち等にとって、よそもんの貴様達は弱いのだ。そんなことより」

「そんな事よりって」


 強いまなざしから目を逸らす。


「わっちは貴様に興味があるのだ!!」

「興味って……」


 けれど、少女の発言は新鮮だった。今まで一度も妹以外に興味があるだなんて言われた事がない。誰しもが無関心で、ジハードの言葉を聞こうとはしてこなかった。故に、足が止まる理由には十分に事足りる。


 ──嬉しかったのだ。


「わっちは、カンムル!」

「俺はジハード。ジハード=バレット。そうだ、いい事を思い付いた」

「なんなのだ?」

「俺と一緒にパーティを組まないか?」

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