あとがき2
■“創造する力”について。
魔法っぽいオリジナル能力。
上位存在である黒竜に選ばれ、龍としての位を与えられた者が、その属性に対応した力を行使できます。
龍の血族にも同種の力の行使権が与えられますが、生まれ持っての素質によっては、いちいち龍や同胞から分けてもらわないと、自分の意思で振るえるほど体内では“創造する力”を生成できない者も多いです。
また、龍は自分の眷属に力を与えることも、取り上げることも、行使権の一部または全部を凍結することも自由自在。
アニマを例にすると、ルノードは「身の安全のためにも、強すぎる力を持たせたくない。人間と争わせたくない。でも死なないように治癒能力だけは高めておきたい」と考えていたため、アニマの多くは体外へと思うままに“創造する力”を放出することができません。身体に傷を受けた際、それを回復するために、半自動で緋翼が生成される程度となっています。
生まれながらにして緋翼の生成量が多く、戦闘にも利用できるほどの資質を持ったアニマの一部が、エリート部隊である黒騎士になっているという訳ですね。
黒騎士への厳しい訓練は若いうちから始まり、それは本来戦闘訓練を受けるべき年齢を大きく下回っています。志願は任意。
でも同族愛が強いせいで、才能あるものは自分からどんどん黒騎士に名乗りを挙げちゃうんだよなぁ。
緋翼以外の“創造する力”にも共通として、本人の思い描いた形を作って道具にする能力があります。
レンドウも苦労していた通り、自分の身体から切り離した状態で固定させたり、さらに動かしたりするのは難易度が高いです。
炎竜ルノードとその眷属が振るう緋翼は、真の力として赤い炎と化し、物質を焼き尽くす。
吸血鬼を元にしたことで、黒翼と似た性質も持ち合わせており、多くのアニマは密度を高めたい場合に使用します。
黒翼のように、影の中を移動する能力を発現させたアニマはいまのところいません。
氷竜アイルバトスとその眷属が振るう氷翼は、物質を凍らせる力。
武器に纏わせた際の攻撃力には特筆すべきものがあります。特殊能力と言えるべきものがあるのかはまだ秘密で。
金竜ドールが使用した黄翼は、彼のみが真価を発揮させられる高エネルギー物質です。
ドール自身を無限に回復したり、黄翼を元に流体金属で造られたような兵隊、金鎧兵を生み出すことが可能。
また、この黄翼を機械を動かすエネルギーとして利用することで、人間界にあるいくつかの国は大きく発展したという設定もあります。
吸血鬼が使う黒翼は、高位の吸血鬼が影の中に潜って移動する技が使える以外は、言ってしまえば他の“創造する力”の基本的な能力に同じ。
現状では、少々見劣りする能力となっています。
作者は吸血鬼になんか恨みでもあるのか?
魔王ルヴェリス、そして最終編にてジェットが手に入れた灰色の力。
レイスが振るう謎めいた白い力。
花園で見えたストラウス、テンペスト、メロア、名前の分からない残りの2体が扱う力。
これらについては、続編をお楽しみに。
■神がいない世界? シンとはなんなのか。
神童という言葉が作中に存在する通り、大昔には神という概念はありました。
そもそも、この世界における共通語が日本語を元にしているものですし。あと和製英語も沢山伝わっています。「ワ風、ヨウ風、エイ語」や「アメリカザリガニ」などのワードで地球との関係性を匂わせるのは好きでした。
そういうあたり、ちょっとだけ異世界転生モノに憧れているところもあったのかな、私。
しかし、この世界では実際に人などとは大きく隔絶された、とんでもない力を振るう存在が王の上に立つことが多く、それがいつしかシンと呼ばれるようになっていました。
当人たちとしてもシンとして振舞い統治するうちに、実在しない(するか分からない)ものを心の拠り所とし、信仰する流れは排斥していった方が都合が良かったため、こうなりました。
神という概念はわざと廃れさせられた形ですね。
この世界では「悪いことをしているところを、神さまが見ているぞ」「お天道様は見ているぞ」といった言葉が使われず、「我らがシンが見ているぞ」となる訳ですね。
ちなみに、これは予想されていたかもしれませんが、シンの語源は神です。結局はそうなのね。
清流の国を統治していたメロアという龍は長らく休眠状態になっているため、現代を生きる人間の誰しもが直接会ったことがありません。
そのため、少しずつ昔の時代に逆行しており、神さまという表現がされています。
龍のお世話などを担当していた家系が宗教団体と言えるものを復活させていることもあり、半分宗教国家のような側面も。
ファンタジーもので宗教国家というと「頭のおかしい教信者が世界を引っ掻き回す」イメージがあるかもしれませんが、今のところそんなヤバい国として描くつもりはありません。
今作における「シン」という言葉を改めて定義するなら、「その民族が王よりも更に尊いものとして仰ぐ、国家の象徴」という感じでしょうか。
国政に介入したり、戦争時には軍を率いて戦うこともある、超アグレッシブな天皇みたいなイメージかな?
一人称視点の作中で「超アグレッシブな天皇みたいなもんかな?」なんて言う訳にも行かなかったので、恐らく読者の多くが「結局シンってなんなんだ……」と思っていたのではないかと。
これで正しくニュアンスを伝えられているかは正直分かりませんが、ようやく説明出来てよかったです。
……こういう「その作品特有すぎる設定」を読者に分かりやすく説明する能力が無いのなら、もっと分かりやすいテンプレ設定にしとけやって感じなんでしょうね。本当は。
でもオリジナル性を目指したくなっちゃったのよ。
■結局、魔法とか魔術の詳しい定義は説明できるのか?
一応は考えてあります。
“幻想”と呼ばれる龍である幻竜グレアムによって、ニルドリル以外にも多くの魔国領の貴族が洗脳されており、魔国領はぐちゃぐちゃになっていました。
それにより魔法や魔術の知識もグレアムにとって都合がいい様に歪められ、現在の教科書を鵜呑みにして育った子供たちは可哀想なことになっています。
大人たちも魔法・魔術を感覚で使っていることが多いので、正直いくらでも論文をでっちあげられる下地が揃っていた、という背景があります。
魔王ルヴェリスも体調を崩していたため、ニルドリルの裏切りや、魔学がわざと歪められていることに気付くことができませんでした。まぁ、その体調不良すらもグレアムの呪いのせいなので、もう全部あいつが悪い。
続編では洗脳された者や裏切者が粛清されていて、正しい魔法・魔術の理論が周知された世界になっている予定です。
魔法も魔術も、覚えさえすれば好きなだけ使える訳ではなく、しっかりとそのコストを表現していきたいですね。
「一晩寝るだけで精神力が全回復して、こんなに強力な魔法をバンバン撃てる化け物が沢山いたら、世界なんて何回滅んでも足りないだろ」と言われないよう、しっかりと設定を練りたいです。
■実は「グロニクル」はその全てが過去編となる予定だった……。
これこそ一番の裏話かも。
元々、今書いていた最終決戦から5~6年くらい未来に全然違う主人公がいて、グロニクルに登場したキャラたちが先輩として主人公を導く予定でした。
が、高校生の当時からインターネットで「小説の書き方講座」なんかで検索してみると、「素人は過去編に挑戦するな!」という指南が沢山ヒットした訳です。
要約と意訳を込めて簡潔に言うと、「過去編の結末は本編を見れば分かってしまうので、ネタバレされている状態で読むことになり、読者としては盛り上がりにくい」という感じですね。まぁ、少なくともどのキャラが死んで、どのキャラが生き残ったのかはバレバレですもんね。
私はそれに大いに納得し、いつか過去編としてグロニクルを書くよりも、最初から時系列順に書いていくべきだな、と考えました。
実際、グロニクルの中でも更に過去編として書きかけの「ペットのケンリ」を公開しましたが、あれをそれ以上続けても読者が楽しめるとは思えないので、これで良かったのだと思っています。
今からグロニクルの更に過去を頑張って肉付けしていくより、続編を書いた方が作者も読者も絶対楽しめるはず!
■その他のキャラのあれこれ。
……も書いていきたいのですが、それに関しては1キャラ1キャラ丁寧に解説していると無限に終わらない気がするので、気が向き次第「〇〇(キャラ名)の設定」というタイトルで追加していこうかと思います。
長くなりましたが、「緋色のグロニクル」の全体を通してのあとがきとしては、こんな感じです。
――最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました!