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【完結:修正予定】緋色のグロニクル  作者: カジー・K
第12章 斜陽編 -炎天も嚇怒も撃ち堕とせ死星-
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第196話 氷竜評判

カーリー視点は第93話ぶり?



 ◆カーリー◆



 一歩歩くごとに、隣で巨乳と髪の毛がぽんぽん揺れている。


 いや、別に巨乳は悪くない。かといって好印象もないけど。


 身長も私より少し高いくらい。女性としてはかなり高い方だと言える。これに関しても別に悪くない。かといって好印象もないけど。


 ――それより、その髪型の方が気になる。


 真っ白な髪の一部を、両側で結んで垂らしている。全てを結んでいる訳では無いので、後ろ髪は腰辺りまで広がっている。


 きっとこの人物を絵に描く際は、髪の毛の占める割合が大きくなりすぎることだろう。


 ツーサイドアップ、だっけ。


 活発な少女、というイメージを与える髪型だ。


 彼女は二十歳を過ぎているように見えるので、一般的にはあまりその髪型が勧められる年齢ではないはずだけど。


 それなのに、不思議と調和が取れている。少し童顔気味だからだろうか?


 前髪をかき分けるように、誇らしげに屹立した透明感のある一対の角は、彼女が氷竜である証だ。


 そして、極めつけは“氷竜の戦士隊における序列二位”という立場。


 顔立ち・体型・能力面。それら全てに恵まれている“溌溂(はつらつ)な”レイネには、なんとなく近寄りがたい雰囲気を感じていた。


 いや、違うか。彼女はどこも悪くない。


 ただ、どこをどう見ても自分より優れていると感じてしまうせいで、同じ女としてなんとなく隣を歩くことに気後れしてしまう、というのが正しいんだと思う。


 昔の私なら気にならなかった……というか、性別など関係なくあらゆる他人との交流を嫌っていたけど、こういうことを考えるようになったのも……ある意味成長と言えるのかもしれない。


 なんとなく勝手に劣等感を刺激されてしまうけれど、それによって生じた苛立ちをレイネさんにぶつけずに我慢できれば、それでいい。


 あんまり嫌な女になって、レンドウに嫌われたくないし。



 それにしても、溌溂という二つ名を戴いている割に、レイネさんは静かだ。


 私の右側を歩きながら、洞窟の奥にじっと視線を這わせている。


 本来は外見の通りに明るい人物なのだろう。けど、任務に当たっては真摯に対応する。そういうことなのだと思う。


 このチームAの中で最年長であるということも、彼女の現在の振る舞いに影響を与えているかもしれない。


 嫉妬を覚えてしまうことが申し訳なくなるくらい、立派な人物だ。



 ――それとは逆に、私たちの後ろを歩く二人。


「バカ。またすぐそうやって……」


 白い髪を後ろで縛っているはずなのに、そこから更に爆発したように広がっている少女。その肌は地下暮らしが長かった頃の私に匹敵するほど白い。あまり太陽に当たらないようにしているのだろうか。彼女が“堅実な”スピナ。私と同じくらいの年齢に見える。


「あたっ。……だから髪をぐしゃぐしゃしないでって!」


 少し灰色がかったくしゃくしゃの髪は、元々くせ毛なのだろうか。それとも、スピナによって施されたアートなのか。サイドの髪だけを伸ばしているのは、氷竜の里で流行っているお洒落なのかもしれない。私とスピナより幼く見えるやせ型の少年が、“勤勉な”テサー。二つ名は耳障りがいいのに、外見だけ見るとやんちゃそうというか。率直に言うとバカっぽい。


 溌溂の名を持つレイネさんがちゃんとしすぎているせいもあるかもしれないけど、堅実と勤勉の名を冠するスピナとテサーの方は少々以上に見劣りしてしまう。さっきからうるさいし。


 うるさいというか、彼女らは実際に声に出して喋ってはいないんだけど。


 恐らくは龍の系譜に連なる者の能力の一つ、“念話”を用いて二人でこそこそと話しているのだろう。


 見た感じ、年下のテサーが馬鹿話を振って、それに突っ込む形でスピナが「バカ」などと返しつつ肘で小突いたりしているようだ。


 ……叱るくらいならいっそのこと無視を続ければ、年下の少年のいたずらなんかすぐに収まると思うんだけど?


 そうしないあたり、迷惑そうな反応をしながらも口角が上がっているスピナは、まんざらでもないのだろう。


 仲がいいのは大変結構。


 でも、任務中にそれはどうなの。


 緊張感が無い……そう、まさに緊張感が無いというのが相応しい。急に命の危険が迫らないとも限らないと思うんだけど。


 きっと、大きな失敗や後悔を経験したことがないんだろうな……。


 などと考えていると、突如としてビシッと姿勢を正した背後の二人。


 どうしたんだろう? と思っていると、


「カーリーちゃん、ごめんねー。うちの子供たちが」


 隣を歩くレイネがこちらに顔を寄せ、口元を左手で隠しながら耳打ちしてきた。


 彼女の豊満な胸が、私の右腕に当たって潰れている。


 なんなんだろう、この距離感。


 初対面の相手の心に押し入っていく為の処世術だろうか。気づいてないのかもしれないけど、私、同じ女性だから……あんまりそういうの効かないと思うんだけど。


「スピナちゃんって普段は真面目なんだけど、大好きなテサーちゃんに話しかけられると舞い上がりがちでさー」


「……いえ、別に大丈夫です」


 と返しておいたものの、少し苛々させられていたのは事実だ。


「ありがとねー」


 もしかしなくても、レイネが念話で後ろの二人を叱ってくれたようだ。


「こちらこそ、ありがとうございます」


 この礼には、複数の意味が込められていた。


 氷竜の子供たち(スピナに関しては同年代な気もするけど)を叱ってくれたこともそうだけど、そもそも私がアンダーリバーへ向かうのを護衛してくれていることも。


 氷竜アイルバトスとその眷属たちには感謝してもしきれない。


 なんだかんだ、この人たちのことも私は好きになれると思う。


 アンダーリバーへと通じる地下洞窟を歩く道すがら、いつの間にか不安感が溶けていることに気付いた。


 ――氷の竜なのに、あたたかい人たちだ。



「新キャラである氷竜たちの描写が全然できてねぇ!」ということで、せっかくチーム分けも出来たので、まずは「レイネ・スピナ・テサー」に絞ってカーリー視点の評価をお送りしました。

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