プロローグ
≪ヴァリアー≫は、人間によって構成される、治安維持――表向きはそうなっている――組織である。
組織の相手は害獣である大型の獣から、一般的にモンスターと呼ばれる、300年ほど前からこの世界に現れ始めた、突然変異した危険生物達……だけではない。
魔人。
そう呼ばれる、おとぎ話に出てくる悪魔のような、人型の生物とも刃を交える。
彼らの目的は一切不明……というよりも、目的など存在しないのだろう。
彼ら魔人は自らを“ヒト”と呼称し、草食の者も、肉食の者も、雑食の者も存在する。大きな特徴としては、人間と同じように脳が発達しており、共通語で会話ができるほどの個体も多いことだ。
彼らは、ただ普通に、人間と同じように生活しているだけだ。人間と彼らでは文明にかなりの差があり、彼ら魔人は自然の中で暮らしているので、人間から見ると少し野蛮に見えるだけなのである。
――だがここで、問題が生じる。
魔人には、人間とは決定的に違う部分がある。
……彼らは人間の定めた法律を守ろうとしない、ということだ。
法律や掟といったものは、魔人の種族によっても違う。彼らにとっては、人間の定めた法など、あってないようなものだった。
魔人は、環境の変化に即座について行ける変異遺伝子を持っているとされ、動物の毛が季節によって生え変わる……どころではなく、体の細胞そのものを変質させて“別の生命体”になることができるほど、発展性のある生命体である。
人間以上に、この世界で長く生き残るだろうと言われている生物たちなのだ。
勿論、人間を毛嫌いする魔人もいる。自分達の方が強いのだから、人類に何を遠慮することがある、と。
そんな魔人にむざむざ殺されてやるだけの理由もない人類は、武器を手に、彼らと戦う。
彼らを敵とし、魔物とし、憎むべき対象へと変える。
だが、魔人の中にも、いろんな考えを持った者がいるのだ、と。
これは、そういう物語。
空をドラゴンが舞い、地面の下を人間が支配し、森を魔人が闊歩する、神に祝福された世界。
――血塗られし竜の時代の、終わりの一部を紹介しよう。