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結末は雪よりも雨がいい  作者: ふじみや
2/2

夏の日の出来事。

前話

意気投合した2人は2人っきりでカフェに行く

先日、雪乃とカフェで談笑し、メルアドを交換してから、雪乃と涼太郎は特に学校以外の場所でよく遊ぶようになった。

石上家で小説を読んだり、対照に大磯家で映画鑑賞したり。

あの放課後の思わぬ出会いから、二人はさらに仲良くなっていっていた。

「ねぇさ、この主人公流石って感じじゃない?」

「ね、ブタ野郎だよね~」

後に、音楽以外でも、互いに小説や映画が好きなことを知ったので最近はよく、こうしてお互いの家に入り浸っている。

そして夕飯時が近づいて来ると、家に帰る。

これがほぼ習慣となっていた。

夏休みが明けた九月。

二学期が始まると、学校は一気に現実の慌ただしさを取り戻した。

涼太郎にとって、あの暑い日に雪乃と過ごした時間は、まるで白昼夢のように。

いつもの憂鬱な学校生活へと一部もどった。

駅前の古い喫茶店で、冷たいクリームソーダを挟んで語り合った『スノウノイズ』の熱量。

学校での雪乃は相変わらずクラスの中心にいて、バドミントン部の仲間含め、その他よく話していた人たちと笑い合っている。

ただ、すれ違いざまにお互い振り向いて小さく目を合わせて微笑み合った。

それだけで、涼太郎の胸の奥は妙に熱くなった。

自分の地味な日常に、確かな変化の兆しが訪れていた。

だが、学校での涼太郎には、もう一つの静かな日常があった。

「石上くん、ここの棚の整理、お願いしてもいい?」

放課後の静まり返った図書室。

窓から差し込む西日が、無数の埃の粒を金色に光らせている。

静寂の中に響いたのは、図書委員のペアである目黒小海の声だ。

小海は涼太郎と同じクラスの図書委員の相手にあたる女子生徒だ。

少し長めの黒髪を低い位置で一つに結び、いつも図書委員の腕章を真面目につけている。

彼女は雪乃のような華やかさこそないが、どこか凛とした、落ち着いた雰囲気を持っている。

「うん、分かった」

涼太郎は台車から文庫本の束を取り出し、指定された日本文学の棚へと向かった。

二人は一年の頃から、週に一度の委員会活動を共にこなす仲だった。

お互いに口数が少ないため、作業中の大半は無言だ。

しかし、涼太郎にとってその沈黙は、決して居心地の悪いものではなかった。

むしろ、クラスメイトたちの騒がしい声から逃れられる、唯一の避難所のようにさえ思えた。

「……石上くんって、本当に本を丁寧に扱うよね」棚の向こう側から、小海がひょっこりと顔を出して言った。

手には古い文芸誌が握られている。

「そうかな。普通だと思うけど」

「ううん。他の男の子の委員は、結構雑に戻したりするから。石上くんはいつも背表紙を綺麗に揃えてくれる。そういうところ、すごく助かってるよ」

小海は少しはにかむように微笑んだ。

涼太郎は前髪の隙間からその笑顔を見て、少しむず痒く視線を落とした。

「大したことしてないよ。家でもこうなだけだし...目黒さんこそ、貸出データの整理とか、いつも一人で終わらせちゃうし」

すると彼女は、

「私は、こういう地味な作業が好きなだけだから」

小海はそう言って、自分の胸元に文庫本を抱きしめた。

実は、小海がこれほど熱心に委員会に顔を出すのには理由があった。

彼女は、小さい頃から本が好きで、とにかく本に触れるこの仕事が大好きであったことと、落ち着いた性格もあってこういう落ち着いた仕事が好きなのだそう。

そんな中、裏で小海は、涼太郎に恋心を持っていた。

きっかけは、初夏のひどい雨の日だった。

委員会が終わると、外は土砂降り。

傘を持たずに昇降口で途方に暮れていた小海に、涼太郎が

「俺、置き傘あるから」

と、自分の傘をぶっきらぼうに押し付け、本人は全くの自覚無しだが、矛盾を露呈するかのように傘を差さずに走り去ったのだ。

クラスでは根暗だと言われている彼が、本当は誰よりも優しくて、そして時折、長い前髪の隙間からのぞく瞳が驚くほど綺麗であることを、小海は知っていたため、それほど驚いた事ではなかったが、流石にここまで気遣いできることに、関心とそれとは別に違う感情が湧きあがった。

「あのね、石上くん」

小海が少しだけ距離を詰めてきた。木床の匂いに混じって、微かに漂う彼女のシャンプーの甘い香り。

ローファーのつま先が、涼太郎の靴に近づく。

「次の委員会の時、もしよかったら……おすすめの小説、教えてほしいな。いつも私の好きな本ばっかり教えちゃってるし...石上くんがどんな本を読んでるのか、気になってさ...」

「俺が読む本、暗い話ばっかりだけど。それでもいい?」

そう聞くと彼女は

「うん。石上くんが好きなものなら、なんでも読みたい」

こう答える真っ直ぐな小海の瞳に、涼太郎は一瞬気圧される。彼女の言葉に込められた熱量に、鈍感な涼太郎はまだ気づいていなかった。

その時、図書室の引き戸がガラガラと大きな音を立てて開いた。

「あ、いたいた! 涼太郎!」

静寂を破って入ってきたのは、文化祭実行委員をしているクラスメイトの悠生だった。

悠生は、お調子者の軽い足取りで二人の元へと歩み寄ってくる。

「なんだよ、まだ仕事終わってないの? クラスの連中が、文化祭の出し物の件で涼太郎の意見も聞いときたいってさ。ほら、早く来いよ」

「いいのに...うん。分かった……。この仕事だけ片付けたら行く。」

焦らすようにそう言い、

「ごめん目黒さん...これ片付けたら少し空けるね」

「ええ、大丈夫。行ってあげて」

小海は努めて平静を装い、優しく手を振った。

しかし、涼太郎が悠生に連れられて図書室を出ていく後ろ姿を見送る小海の胸には、小さな焦燥感が芽生えていた。

彼女の手は、抱きしめた本の端を少しだけ強く握りしめていた。廊下に出た涼太郎は、悠生に「悪かったな、邪魔して」と茶化されるように肩を叩かれる。

「てかさ、 目黒さんと仲いいの?あの子、結構男子の間で『隠れ美少女』って噂だぜ。根暗のくせに隅に置けないな」

「変なこと言うなよ。ただの委員会のペアだから」

涼太郎はヘッドホンを首にかけ直し、悠生のからかいをあしらった。

お読み頂きありがとうございますm(_ _)m

こちらのお話、実話を交えております故、いい作品に仕上がったつもりではございますが、何卒未熟な点はご容赦下さいm(_ _;)m

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