第四十九話「早速トラブル」
今回から体育祭篇をやると言ったな? アレは嘘だ。
あ、あとグロい描写にご注意。
…いや、まあ、別にそんなグロくないけど…。うん。一度書いてみたかったんだ。そういうの。
「さあて!! 帰ってきたぞ! 我らが国立イデア総合学園に」
叫ぶ。超叫ぶ。ちょうど今、港から学園まで政府の送迎バスで戻ってきたんだが………
「…霧式、声が大きい…」
聖岳ちゃんがこのグロッキー状態である。
…どうしろと? またあのポーション飲ませるの? ……ダメだろ。
「…ていうか聖岳ちゃん、まだ船酔い引き摺ってたの…」
「…聖岳ちゃん言うな………」
「ああ、聖岳ちゃん先生。これはすまないねぇ」
相変わらず聖岳ちゃんは覇気のない様子。こりゃあ、ふざけてもハリセンのバチは当たるまい。
「…だから聖岳ちゃん言うな………」
「すまそすまそ~」
ちょっとふざけてみる。
ん? 聖岳ちゃんの目から光が消えた。
待て、何だ。その右手に持っているものは。…オイオイ、そりゃあハリセンじゃねぇか。
「ま、待つんだ聖岳ちゃん先生!!? 話し合おう!? あ、謝罪いります?! 今なら誠心誠意込めて五十円で!!」
「……。…反省する気がないな? うん? どうにか言ったらどうだ??」
「嘘だッ!!? 船酔いモードの時はハリセン連打のキレが失われるはず!? どうやってそん――ッなぶるべりっとるふぇん?!!!?」
久しぶりにハリセンで叩かれた…!!
フルボッコだどん!
「…うん。まあ、聖岳先生ありがとう。お陰で活が入った気がするよ」
「…やっと人のことを先生と呼んだと思えば…。…お前は、……マゾなのか…? …いやまあ、人の性癖をどうこう言うつもりはないが…」
「聖岳ちゃんちょっと待って誤解ィ!?!」
「“ちゃん”をつけるな!!!」
「がぶるへんらごふッッッ!!?!」
非常に滑稽なやり取りを繰り広げる俺と聖岳ちゃんに、端からニヤニヤ見守っていた伸二が口を開く。
「……いつも通りの日常だな」
……。
…なんてことを言うんだ伸二。微笑みながら言うんじゃねぇ。
何て心中で呟きながら、聖岳ちゃん&女子達と別れ、男子療へ向かう。
で、意気揚々と男子療に戻ったら。
「…霧式、あれは………」
伸二が露骨に眉を顰めながら言う。
「…ああなんかバリケードテープ張られてるな。…ブルーシートでおおわれてる場所もあるし…」
俺がそう言うと、
「何があったんだ?」
「さあ…」
そう。男子療にバリケードテープが張られていた。
刑事ドラマとかでよく見るあの黄色いアレである。
警察官とおぼしき人物達が何やら話し込んでいるが…。
ん? あれは…。
「藤原さん!!」
知り合いを見つけた俺は、そう言いながら駆け寄る。
「ん? おお、霧式じゃねえか! どうした?」
藤原さんも俺に気がついたようだ。
よく見たら周りの人も知り合いだな。伊藤さんに佐藤さんだ。……名前に“藤”つく人多すぎだろ…。
それにしても……
「……藤原さんたちが出っ張ってるってことは…余程デカイことがあったんですね?」
「…ああ。まあな」
俺の真面目な問いに、少し離れたところでおいてけぼりを食らっているクラスメイトたちを一瞥しながら、藤原さんは簡素に答える。
藤原さん―――フルネームは『藤原 阿東』。
なにやら両方名字みたいな名前だが、この新生・大帝日本国を影で支える立派な立役者の一人だ。
この藤原さんが所属するのは『対テロ実働警察隊』。
表向きには公表されていない組織――所謂、国家直属非公開組織というやつだ。
“警察”とは名ばかりで、あらゆる事態を迅速処理し、判断するために独自の指揮系統を持っており、そのため国家に匹敵する権力を持っている。構成員全ては天皇と国に絶対の忠誠を誓い、表向きには死んだことになるらしい。
そんな『隊テロ実働警察隊』がこんな所までわざわざ出っ張ってきたということは、ここで国家の存亡に関わるとんでもない事態が起きている…もしくは起きた、ということになる。
マジやばくね?
「…うーむ。まあ、いいか。…霧式だから教えるが…」
「なになに??」
ワクテカである。
「……実はな。この療の警備員二名と清掃員一名が死亡した。…それと学園の生徒、滓我大騎も死亡した……と、思われる」
思われる…? 何か引っ掛かるな。
「…藤原さん、“思われる”ってのは? 断定できない理由があるってことですか…」
慎重に言葉を選びながら問うと、藤原さんは「…そういうこった」…というと、ブルーシートで覆われている場所へ俺を促す。
ブルーシートの向こう側には、累計三つの遺体があった。血が染みたシートを被せられてはいる為、その詳細はわからない。
「…霧式、さっきの清掃員の遺体なんだが…。……無理矢理上半身をネジ切られたような形跡があるんだ」
藤原さんは、そう言いながら血が一際大きな染みをつくっている遺体のシートをわずかに上げる。
中の遺体を覗くようにして見ると―――
「上半身が…ない…」
「ああ。そうだ」
それは血の気が引く、身の毛もよだつものだった。
ちょうど臍のある辺りから、本当に捩じ切られたかのように上半身が消失している。
断面からぶらりと背骨が飛び出し、それに巻き付くか溢れるように腸が飛び出している。筋繊維がなんか、布地がほつれるか何かするような感じで断面からはみ出しているのだ。
中々にショッキングな光景。
しかし、不可解なことも多くある。
第一、人間の胴体を捩じ切るなんてそんな簡単に出来るだろうか?
「……いや、普通に考えて有り得ないな…。…藤原さん、上半身はどこにありますか?」
思案顔で問う。しかし、返答は俺でも予想だにしない、意外なものだった。
「…それがな…、ないんだ」
「ない?」
「どこにも上半身が、ない」
「それは…」
絶句する俺に、藤原さんは人差し指をたてながら口を開く。
「上半身はないが…。ヒントはある」
ヒント?? なんだそりゃ
「…部屋で発見された滓我大騎の死体の細胞から採取された遺伝子が、清掃員の井藤さんとまったく同じだったそうだ」
「それってまさか…」
そう呟く俺に、藤原さんは深刻な表情をして頷く。
また、厄介なことに巻き込まれてないか? 俺。
前書きでハッスルヒャッハーし過ぎましたね。
次回辺りからだいぶ話がダークになってきます。




