第四十八話「特に何でもない話」
今回もすごく短いですが、次回から通常通りに戻ります。
「よし! キャンプ地に戻るか…!」
…とか言って文字通りキャンプ地に帰ったわけだが。
「うん。まあ早朝だし、誰も起きてないわなー」
清々しいまでの笑顔で呟く。
日が昇った! 希望の朝だ! 俺の物語りはこれからだぜ!
……そんな気分で岩場を後にした訳だが……。
「イタいッ!! 余りにもイタいッッ!! にょぁぁああああああ!!!」
キャンプ地のある砂浜で四つん這いになって崩れ落ちる。そして奇声を発し、悶える。
「いや、貴方、何やってるのよ…。まあ、元の調子に戻ったようで何よりだけど…」
呆れたような表情でそう言う雪奈。
と、その時。
「……疾ッ!! 破ッッ!!! 覇ァアアアッッッッ!!!!!」
どこからか、凄まじい気合いが聞こえてくる。
俺と雪奈は顔を見合わせると、気合いの響くキャンプ地の裏へ向かうことにした。
「なんだ、燈禅か…」
そこにいたのは、元Sクラスから引き抜いてきたクラスメイト、燈禅拳児だった。
対抗戦で函音ちゃんと戦った、身体強化能力のイデアを持つ彼だよ。
「ふッ…、ふッ……。…ッ破ァッッ!!」
何やら朝の修行的な事をしているようだ。
足元には、汗の染み込んだ砂が広がっており、とんでもない練習量で動いているのだとよく分かる。
「…燈禅は…、何もないところで戦ってるけど、何をしてるの?」
そう俺に聞いてくる雪奈に対し、俺は、
「ありゃ、仮想敵と戦ってるんだな」
と答える。
今となっては、この記憶が本当なのかどうか疑わしい限りだが…霧式碧もかなりの鍛練を積んできた。
そのお陰で、分かる。燈禅は今、とてつもなく格上の相手と戦っている。
こりゃあ、邪魔しない方がいいか?
そう思っていた矢先、燈禅が尻餅をついた。
「ありゃりゃ、負けたな」
どうやら、仮想敵に負けてしまったようだ。まあ、仕方がなかろう。相手は、燈禅にとって、物凄く格上なのだから。
「ほい、燈禅。お疲れ」
ゼエ、ゼエと肩で息をする燈禅に、空間魔法の収納空間から取り出した、異世界謹製回復のおいしいポーションと、タオルを渡す。
「む。…霧式か。すまない。恩に着る」
燈禅は少し口元を緩めると、そう言う。
「うむ。感謝するがいい」
「ああ」
低く落ち着いた声、大きな体躯。そして更なる強みに至らんとするその精神。
まさに武人。
俺は、そんな燈禅を結構気に入っている。
人外にまで鍛えたら、もしかしなくても俺を越えるかもしれない逸材だ。
「燈禅…いや、拳児と呼ばせてくれ。一つアドバイスだ。上半身と下半身にラグがある。もう少し上半身を速く動かしてみろ」
俺の一言に、拳児ははっとしたような表情をすると、急に「フッ」とニヒルに笑いだし、「有り難い。いつか手合わせ願いたいものだ」…言って礼をした後、鍛練を再開し出す。
そうしてそこから二日が経ち、山あり谷ありの人外魔境キャンプは終了した。
そうしてこの無人島もとい人外魔境島へへ国からの迎えの船がやって来て学園に帰ってきたのだが。
そこで俺は新たな問題に直面することとなる。
因みに、キャンプ最終日、再びヒアルガンの襲撃に会い、その肉を食べた。結果、俺の食った肉だけやたら魔力含有量が高く、魔力中毒でお腹がフィーバーな事になった。
俺の魔力抵抗値を上回る魔力含有量とは…。流石人外魔境。最後にしてやられた。




