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第四十六話「バカなの? 死ぬの?」

 お待たせしました。次話更新です。





 寒い。熱い。真っ暗だ。



『…おれを、ぼぼ、ぼくを、見て…』



 ここは、どこだ。


『みてみてみてみてみてみてみてみてみてみてみてみてみてみてみてみてみてみてみてみてみてみてみてみてみてみてみてぼくをおれをみてぇえええええ!!!』



 お前は、誰?


 お前は、何なんだ?



 正体を問う。


 すると歪みと言うかノイズのようなものを音声に伴って、声なき声が返ってくる。


『…ぼ、ぼぼぼ僕は…おれは、霧式碧(・・・)


 じゃあ、俺は…誰だ??


 自分について問う。この声の主なら、俺の知らない俺を知っている気がする。


『おま、お前は偽物。お前はおれを自分だと信じききききききった、憐れな肉人形…』



 じゃあ、今までの記憶は―――???



『ぜんぶぜんぶぜんぶおれのおれのおれのおれのおれのおれの…』



 じゃあ、今まで俺が抱いてきた思いは―――???!



『ぜんぶぜんぶぜんぶおれのおれのおれのおれのにせものにせものにせものにせものにせものにせものにせものにせものにせもの……』


 じゃあ、俺は、一体何なんだ?! 誰なんだ!!?


 全てお前のものなら、俺は何なのだと。叫びながら問う。


『お前は、カジ ユウキ。俺と同じ、魔剣を従えた勇者…』



 知らない…。…そんなヤツは知らない!!!


 逃避。


『いずれ、お前は、思い出す…。他人の罪を自分に重ねる傲慢さと…』


 俺は、俺は……。


『他人を騙る、愚かさを…』


 震える声が、揺れる魂が俺の記憶も呼び覚ましてゆく―――




「わああああああああああああああああああ!!?!!?!」




 午前4時02分、キャンプ地。



「はぁあっ、はあっ…はあっ、…っは…はあ……夢、か…」



 ひどい夢を、見た……気がする。

 いや…、俺じゃない…。あいつは…。



「あれ、何だったっけ…。思い出せねぇ…。 …てか、何で泣いてんだ…俺…」


 頬を伝う、妙に熱い涙を拭い、寝袋から這い出る。


 今まで当たり前のように霧式碧として生きてきた。

 自分に自分以外の過去があるなど、考えた事もなかった。


 もし、俺が“カジユウキ”の記憶を思い出したら俺は、どうなるんだろう。


 その時はもしかしたら。



 今の霧式碧(オレ)は消えてしまうのかもしれない。


 マイナスにぐるぐる回る思考。同じ場所を何度も何度も繰り返すように――。



「………ちょっと、外出るか…」



 余りに思考がネガティブになるものだから、俺はそう呟きながら、テントを後にする。


 一人、寝袋から俺を見詰める存在がいるのも知らずに。





      †  †  †





 このキャンプ地の近くにいい岩場がある。そこで少し休憩しようではないか。


「よっこらせっと…」


 「お前はおっさんかwww」と突っ込まれそうな掛け声で比較的大きな岩に座る。


 朝早い…いや、早すぎる中でも、スーパーコンピューター並の性能を持つ俺の脳は、全くボケる事なく、クリアな思考を展開してゆく。


 …俺がア=ユを担いでキャンプ地に戻ったとき、そこに火崎アリスはいなかった。


 どこに行ったのか、回りのクラスメイトや、聖岳ちゃんに尋ねても、忘れてるというか…『火崎アリスが』存在していた』という記憶自体が抹消されているようだった。


 見た感じあれはイデアによるものではなかった。恐らく、異世界での闇属性魔法によるものだろう。


 前々からヌゥェゴモル教団とあの異世界の関係を疑っていた訳だが、またまた更にキナ臭くなったな。

 魔法…。間違いなく、ヌゥェゴモル教団の中には、異世界の人間…あるいは、その情報を知る者がいる―――。



「……こうして考え事するときは、一人でいるのに限るな…」


 自嘲するように笑いながら言う。

 そして後ろに誰かが接近する気配。だがあえて動かない。


「貴方、昨日からどうしたのよ? いつもの調子はどうなったの?」


「……雪奈…か…」


「……本当に貴方らしくない…。本当に何があったの? …昨日だって、散歩行ってくるって言って戻ってきたと思ったら、顔面蒼白になってて声も掛けられなかったし…」


「……心配…してくれてるのか?」


「…べっ、別に心配なんて…!? わ、私はクラスメイトとして気遣っているだけよ!! うん。そうよ! そう!」


 激しく頷きながら言う雪奈。…デレたな。


「…お前は、お前らしくて、いいよな…」


「…突然なによ」


 そう言う雪奈の顔も見ずに、俺は深く俯き、膝の間に顔を埋める。


「…俺…。もしかしたら、霧式碧(オレ)じゃないかもしれないんだ…」


「…どういうこと?」


「…俺は、今まで霧式碧として生きてきた。…その記憶もちゃんとある…でも、それは俺じゃないらしい。…それで、段々思い出してきたんだ。…俺じゃない俺…カジ ユウキの記憶…」


「…ちょっと待って…。 それってどういう…」


 突然、話し出した俺に、混乱しているのか「待って」と制止を呼び掛ける雪奈。だが、俺は話を続ける。


「前なら霧式碧としての記憶を頼りに自分は霧式碧(じぶん)だってはっきり言えた。でもさ、嫌でも少しずつ思い出してくるんだ。“カジユウキ”の記憶が今の俺をジワジワ殺していくみたいで…」


「………」


 黙って聞く雪奈。


「もし、俺が霧式碧じゃないとして、じゃあ今の“カジユウキ”でさえない俺は、何なんだ??」





「……俺が俺だっていう証拠は…何なんだ?」





 俺がそう、悲痛に放った言葉の雰囲気は。



「はあ、…貴方、バカなの?」



 呆れるような様子でそう言った雪奈によって、華麗にブッ壊された。




 次回も雪奈が出る…予定。

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