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第四十話「狂乱の夏休み編2」

 お待たせしました! 最新話です。




「あああああ!! 終わった!! 終わったあぁぁぁあああ!!」


 誰もいない教室、力尽きたような呀楼の叫びが響き渡った。


「まあ、二十三時間五十九分もかかったけどな。本当に一日で終わってよかったよ」


「いや、ホントに終わったんだよな? これ、夢じゃねぇよな?」


「いや、だから夏休みの宿題、今終わったから。日記とか全部俺が未来予知して書いたじゃん」


「ホント霧式はスゲーよ。あったま良いんだなー」


「よせよ、照れるじゃねぇか」


「何だよそれ」


「「あはははははははは」」



 徹夜明けのテンションである。


 ああ。眠い。見ろ。東側の窓の地平線を。太陽が、白き光の塊が昇ってくる……!


 まあ、そんなことはどうでもいい。


 昨日の丁度今頃…つまり早朝だな。4時位だ。とにかく、クラスメイト全員を教室に集め、件の“鬼勉強会”を開始した。


 俺が精神系の魔法で、皆に高揚効果と集中効果を与えた事もあり、全ての宿題を五時間程で完了。

 皆、まあまあ頭良かったし、魔法による集中力でかなりの量のある宿題も素晴らしいスピードで終わらせてくれた。


 ただし、呀楼は例外。


 記号問題こそ、驚異的な野生の勘で全問正解だが、それ以外がてんでダメだったのだ。


 バカ。


 驚異的なバカだった。


 何なのこいつ。


 だって「なあ、霧式? “積”ってなに?」なんて聞いてくるんだぜ?


 小学生レベルの基礎中の基礎から叩き直してやったよ。二十四時間激鬼コースでな。


 結果分かったこと。




    『バカは死んでも治らない』




 今、呀楼の宿題の丸付けが全て、終わった。


 呀楼が解いた問題、記号・選択問題以外は全問不正解。


 このチート級…いや、バグ級のステータスを持つ俺の腕を高々夏休みの宿題の採点で疲労させるとは、よっぽどのバカだよ。



 あれだ。確かに、この学園は年齢問わずだし試験の問題も簡単だよ?


 でもお前の学力じゃ普通は受からないからな?!


 ……そうか、今年の問題は記号の選択問題が多かったからな。それでギリギリ合格点に至ったんだな。


 幸運なヤツめ。



「これにて鬼勉強会は終了。キャンプの開始は明日からに延長するから、今日はもうゆっくり寝ろ」



「わかった。まあ、すげぇ眠いしな。二十四時間起きっぱなしだからな…」


「そうかい。んじゃ、部屋かえって寝な。おやすみ」


「へーい」


 こうして、鬼勉強会は終わった。


 だが。


「あ!! 日程表とか“しおり”作ってない?!」


 ……ということで、俺は二十四時間起きっぱなしからの徹夜を敢行し、なんとかキャンプ旅行計画書を完成させるのだった。





      †  †  †





 俺達がいるのは、帝都から少し離れた、国際港である。


 そしてそこに、松川総理の手配してくれた無駄に豪華な船が到着する。



 行き先はとある無人島。


 移動時間に二日程かかるそうだ。


 皆、既に出発の準備は済ませている。呀楼以外は、勉強会の後に準備させたからな。勿論、俺もだ。


「呀楼、ちゃんと準備はしてきたんだろうな?」


「ん? 大丈夫だろ?」


「何だその疑問形は。そこはかとなく不安になってきたんだが」


「大丈夫だって!」


「呀楼、その大丈夫はフラグな気がするぞ」


「伸二よく言った! っと、政府の船が来たな」


 言ってる間に政府の船が到着。

 船には全員分の個室があるからしっかりリラックスできるな。


「よし、皆! 船に乗るぞ! しっかり案内人の言うことは聞くように!」


「「「「「はーい!!」」」」」


 こうして俺達は船に乗り込んだ。


 そして、出港。目的の無人島へ向けて、順風満帆の出発を切った……筈なのだが。



「む、霧式…」


 口元を押さえた聖岳ちゃんが、長い白衣の裾を引きずりながらやって来る。


「ど、どしたよ聖岳ちゃん…」


「“ちゃん”をつけるな馬鹿者…。……酔った。船酔い……。…酔い止め持ってないか?」


「いや、持ってますけど…」


「じゃあくれ。頼む…うっぷ…」


「あーあーあーあーあ、リバースしないでくださいよ?! ちょっと酔い止め持ってくるから?!」


「ちょっと、もう危ない…」


「あああああ、ヤバイ! はっ、そうだ! 酔い止めのポーション!!」


 俺は空間魔法で作った収納用の空間から、酔い止めポーションを取り出す。


 栓を抜くと、キュッポンといかにもそれっぽい音が鳴る。そして腐った内蔵と踏み潰した苦虫を百匹くらい煮詰めたような強烈な臭みが臭いだす。


「うえええっっ!! 霧式、それ臭い!! やめ――ひゅあッ?!」


 自分で匂いを嗅ぐのも嫌なので、栓を開けて間髪入れず聖岳ちゃんの口にポーション瓶を突っ込む。


 その地獄のごとき匂いと味に、ジタバタと抵抗をする聖岳ちゃんだが、一際大きくビクリと体を跳ねさせると、ぐったりして動かなくなった。気絶してしまったようだ。


「あー、やっちゃったな。…始めて飲んだ時は俺も気絶したし…。、」…まあ、仕方ないな。うん」


 聖岳ちゃんを、俗に言う“お姫様だっこ”で抱き抱えながら、医務室へ向かう。



「あの、すみませーん。ひどい船酔いの方がいて運んできました~…あッッッ?!」


 言いながら医務室へ入室すると、そこには幼女がいた。それに俺は、思わず驚きの声を上げてしまう。


(ばッ?! バカなッッ?! 聖奇しくも岳ちゃんと同じ属性だと!?)


 しかし、ただの幼女ではない。


 大きな紅の瞳、それと同じ燃えるように赤いショートカットの髪。と白亜の大聖堂を連想させる白い肌―――とんでもない美幼女だ。



 そして幼女が着ているのは―――――


「あッ! 有り得ないッッ!!? ナース服…だと?!」


 戦慄の表情で固まる俺。


 ――赤髪をショートの美幼女はナース服を着ていたのだ。


 赤い神と白いナース服の織り成す、この絶妙なコントラスト!!


 余りに強い破壊力(インパクト)だッッッ……!!!


 駄目だ。…この破壊力は俺の目に毒だ……!


 神よ、何故俺にこのような試練を与えたもうた……。


 いやしかし、これは世界の宝なのには違いない…。

 ああ、頭の中でイケナイ妄想が…。


 俺がかつてない涅槃の境地にいるような顔をしていると、そこに声をかけてくる者が。


「あの、すいません。その女の子、はやくベッドで寝かせてあげてくれませんか?」



「ん? ああ、すまない。少し涅槃の境地に達していたんだ」


「…は、はあ…そうですか」


 言いながら聖岳ちゃんをベッドで寝かせる俺に、ナース幼女は「あ、こいつ変人だな」と言わんばかりの表情をした後、それを一瞬で取り繕う。


 ……こやつ、思ったより黒幼女かもしれん…!!


「で、船酔いって言ってましたけど、普通は気絶なんてしませんよ?」


 医務室から出ようとして、行き成り声をかけられてビクリとする俺。


「い、いやあ、応急処置をしたら気絶して…」


「いや、気絶するような応急処置とかないでしょ」


「…………(汗)」


「………」


 どんどん自分で墓穴を掘ってしまった。

 この沈黙が痛い。…どうしよ。


 よし、もう逃げよう。

 この腹黒ナースから逃げよう。ここにいてはいけない。


「……ふ、ふは。そんな事を気にしていては目の前の患者は救えないぞ!! さらばッッッ!!!」


 取り敢えず、俺はそれっぽい台詞を決めながら、医務室からダッシュで離脱する。


「あっ!! 待て不審者!! 誤魔化して逃げるなぁあ!!!」


 後ろから何やら聞こえてくるが知らぬ!! 俺は過去を振り返らない! …いや、まあ、大嘘だが。


 と、とにかく! 明日には目的地につくはずだ!!



 ――――ついこの間発見された(・・・・・・・・・・)、地図にも載っていない島に……!!!



 次回予告


 霧式、世界の異変の片鱗を見る―――!!!

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