第二十話「夏だ! クラス対抗戦!~3~」
不良勝負を書こうとして、どうしてだか血肉滴る肉弾戦にはならなかった…。なぜだ、解せぬ。
はあ……。…試合前なのにすげェ疲れた。
…だってよ? なんかいきなり理事長ポジション陣取ってる元魔王が現れて色々と事件になるし? 聖岳ちゃんにハリセンで叩かれるし、叩かれるし、叩かれるしぃ……。
やべぇ、試合勝てるかなあ…。調子にのって「全勝してやると」か宣言しちまったよぉ…。
「ああ…なんかすごい鬱…」
「もう! 霧式君ってば!! 聞いてる?」
俺がどんよりずーんしている中、月守 明ちゃんが何やら話していたようで「話聞けよ」とソフトに注意される
「ごめん。…聞いてなかったよ…」
「もう、ちょっと、ちゃんと聞いてよねー! 霧式教・官!!」
「ははは! 言うようになったな? 明少佐?」
「これはこれは、すみませんでありますー! ま、茶番はここまでとして。…対抗戦のトーナメントが発表されたよ!」
「「「おお…!」」」
明の茶番にてちょっとは元気が出たであります! …いや、上官のキャラじゃないな…。
ともかく、これで漸く本格的に対抗戦が開始されるだろう。
「ま、言わなくても分かると思うけど、相手は行き成りSクラス! 間違いなくウチらを潰しにかかってるねー」
「…まあ、俺らは最凶だけどな! 兄貴もいるし!」
「そうですね。マスターもいますし」
明るく分かりやすく現在の状況を伝える明に、番条くんが「兄貴サイキョー!」と調子にノリ始める。…最強の字が“最凶”になってるし…。
ってこらそこォ!! そこのリンさァん?! あなたも便乗しない!!
「あー、ごほん。皆、今からチーム代表に選ばれた者を呼ぶぞ。呼ばれた者は前に出ろ!」
俺がそう言うと、クラスメイト全員から「はい!」という元気かつ素晴らしい返事が帰ってくる。打てば響くとは、まさにこの事だな。
ちなみに、この対抗戦は、十人のクラス代表チームが相手のチームとそれぞれ個人で戦い、勝者の多いチームが勝利となる。
因みに、勝者を分かりやすいよう理事長もといフィリスが頑張った結果、ブロックが何と9つもあるというおかしなものになってしまったようだ。つまり、大将以外の9人がAからIまでのブロックに一人づつ配置され、そのブロックの上位ニ名が、クラスの勝者として数えられる仕組みだ。
Sクラスはかわかわいそうな事だが、俺らFクラスと初戦で当たるため、永遠にその上位二名に入る事はないだろう。ザマァ。
あと、入手した情報によると、俺らに喧嘩吹っかけてきた滓我大騎は代表チームに入ってはいないようだ。まあ、欠番とかで入ってくるかも知れないけどな。あはは!!(フラグ)
そんな事を思いつつも!俺はリストアップしたメンバーの表を見ながらチームに選ばれたクラスメイトの名前を呼び始めた。
「…まず、越劾 番条」
「ウッス! 兄貴! 光栄の極みっす!」
お、おう。元気そうと言うか気合い盛り沢山でよろしい。…敬ってくれるのはいいんだけどその兄貴って呼び方何とかならない?
「…次、火崎 アリス」
「はあい、はあーい!」
手を振りながら挙げて自己アピールとはやるな…。元気そうで宜しい。
「よし、次は鳴雷宗田!」
「おう…! 遠距離、近距離共完璧だ。試合には必ず勝つ」
お、おおう? あの合宿以来ホントに変わったよね…。お前。未だに何でか分かんないけどイケメンになったし、性格も変わったし…。相手はお前の兄貴だけど大丈夫か…?
まあ、それはともかく…。
「次、衡國リン!」
「はい、マスター…くす…」
あ?! 今、くすって聞こえた!! 俺の事マスター呼ばわりしといて笑ったな?!
ま、まあ、気合いはありそうだし宜しい…のか?
「つ、次だな。…月守明!」
「了解!!! 防御は任せなよ!」
戦意があって宜しい。次は…
「綾瀬怜那だな」
「パワーアップした私の力、見せてあげるわ!! 」
おう。存分に見せてくれや。
「そして耀樹光」
「僕のエンジェル的輝き。見せてあげるよぉっ☆」
お、おう。個性的で大変宜しい。
「んで、牙座 呀楼くん!」
「へっ、俺の野生はヤベェぜ…?」
何かキラキラネームで素晴らしい。確かに野生を感じるよ。
「次は木戸 伸二」
「…おう」
個性派揃いのFクラスには珍しい、真面目タイプの眼鏡くんだ。常識的で大変宜しい。
「後は俺を含めたこの十人でチームを構成する! さあ、そろそろ時間だ! 皆、試合相手と作戦を確認しとけよ~!」
「「「「「「はーい!!!」」」」」」
この夏のクラス対抗戦では、Fクラス~Sクラスの全クラスがそれぞれ競い合い、個人戦ので一番多くの勝者を排出したクラスが優勝だ。
まずは番条くんの試合だ。…戦うのにあのリーゼントが邪魔にならないといいけど…。
† † †
『さてさて始まりましたァ!! 年に二回のこの戦い!! まだ学生である生徒達が、各々のイデアを用いて戦う[イデアバトル]によってお互いに鎬を削り、高め合う!! 実況はこの私ぃ!! 瑞木 亜理彩…と!! 解説のパンバさんでお送りしまーす!!』
『パンバ、デス。ドウモ、ヨロシクオネガイシマシュ』
『いや~、相変わらず聞き取りにくい声ですね~』
『ウッセェゾ、ハゲ』
『………。…で、では、気を取り直して第一試合、越劾 番条選手対築和 明神丸選手の試合……スタートですッ!!』
そして皆さん、忘れないで霧式碧だ。
実況の足りない部分をスキルの【念話】によって補っていくから宜しくな。
オラ、ワクワクすっぞォ!!
そうして、某天下一武道会よろしく鳴り響くゴング。
それを皮切りに両者は動き出……。さない。
実況の瑞木とやらも戸惑いを隠せない感じで問う。
『あれ? 両者全く動きませんね~。パンバさん、これは一体どういうことなんでしょうか?』
『ソンナコトモ、ワカンネエノカヨ、ハゲ…。カレラノアイダデハ、イマトテモ“高次”ナカケヒキガオコナワレテンダヨ』
『…さっきの事まだ引き摺ってるんですか…。て言うか“高次”の所だけやたら発音がよかったような…』
おいおい、この実況マジで大丈夫か? パンバさんめっちゃ毒舌だよ!
相手の明神丸選手(笑)は、俯き加減で突っ立っている番条に嫌気が差したのか、イライラしながら吠える。
「ナァ?! 怖じ気づいたのか?! このリーゼント野郎が!! 来ないんならこっちから行くぜ!?!」
「………」
しかし、黙りこくったままの番条。
よし。順調に番条の策に嵌まり始めたな。
『ん? おっと? Sクラスの明神丸選手、改造学ランの内側から二本の金属バットを取り出した?! パンバさん、これは…?』
『コイツハ明神丸選手ノイデア、【超絶ブラックシャインバット】ダネ。恐シイマデノカタサト、ソノクロビカリスルボディが特徴ダネ』
「だりゃあああああぁああああああ!!!!」
『おおっと?! 裂帛の気合いを上げながら明神丸選手が突っ込んでゆく!!』
『マッタク、ナンノ策モカンジラレナイデスネ、Fクラス。ヤルキアンノカ、コラ』
ふぅ。分かっていないな。もうそこに番条はいない。
「おっりゃぁぁぁぁあ!!」
明神丸! 空気を震わすような叫び声を響かせながら二本のバットを降り下ろす!!
だが―――。
「残像だ!!」
番条が、消えた。
「なっっ?!」
いや、正確には既にそこにいなかった。
「どう言うことだよ!?!」
そう。番条のイデア…【釘】。
一見して、本当にただの釘なのだが、このイデアには恐ろしい効果がある。
―――即ち、空間の固定である。
正しく言えば、釘を打ってそれを頂点として作成した図形の中で起きた事象を固定するというものだ。
そして番条は図形内になっている自分の“像”を固定したのだ。
そしてこのイデアの真骨頂はそこではない。
「だぁぁぁぁあ!?! なんなんだよおおおお!!」
固定した事象は触れれば消えてしまうが、その代わりそれが固定されてる間、本来発生するはずの“事象”はその図形内に集中する。
最大の特徴は、図形が複数ある場合、その全てに事象が発生する点だ。
つまり、“像”を事象として固定した番条には、図形内に“像”が存在する以上は番条に“像”は発生しない。
故に、不可視となった番条は更に図形を描き、どんどん自身のハリボテを作ってゆく。
「なあああああああああ!! 苛つく!! 出てこい番条!! いるんだろ?! この幻全部消して出てこいよ!!」
そして、その像はある一定の条件を満たしたときのみ一点に集合し、実体化する。
それが…。
――異世界謹製魔方陣【概念実体化陣】が作動した瞬間だ。
次回は超巨大な番条ロボが明神丸君を圧殺します。嘘です。




