第十二話「分身!!」
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これからも『異世界に召喚されて帰ってきたら、現実世界でも無双出来た件』をよろしくお願いします!
「俺、八節棍のイデアで……」
「私、盾のイデア!」
「ぼ、僕は電子レンジのイデアで――――」
放課後。
思ったより沢山のクラスメイトが集まった。……というより全員か。
「函音ちゃん……全員集まったね…?」
「そうですね…。…皆悔しいんです! あんな風に言われたら誰だって頑張ってやろうって思いますよ!」
虚空にパンチしながらいう函音ちゃん。やる気に満ちているようで何よりだけど、……この現状、ほとんど俺が半分洗脳みたいな演説したからなんだ。
函音ちゃん、俺みたいなクズにはならないでね(自嘲)。
「……皆、落ち着いて!! ちゃんと全員、平等に教えるから!」
「「「「はーい!」」」」
「落ち着いてくれ」と俺が言うと、皆笑顔で返事をしてくれた。素直になったなー(棒)
………ほんとにあの演説はやり過ぎたかもしれない…。反骨心丸出しだったのクラスメイトがここまで従順になるなんて……!!
いや、そうか!! 俺がリーダー器質だからだ! そうにちがいない。この圧倒的カリスマが……。
と、今はそれどころじゃなくて。
「よし、皆、今から俺が使う技は誰にも話しちゃダメだぞ?」
俺はそう言いながら、クラスメイト全員が「「「?」」」と首を傾げる中、スキル【分身】で、自分の分身を全生徒にマンツーマンで行き渡るように作る。
「コイツは俺のイデアの力じゃない。まあ、言うならば分身だ! どうやって身に付けるのかはこの際置いとく!!」
「「「おお」」」
いい言い訳が見つからなかったので取り敢えずそのまま事実を言う。
しかし、クラスメイトはキラキラした純粋な目で「霧式、スゲー!」みたいな目線を送ってくるだけ。…特に何かを訝しむ様なことはないな。
……こりゃ、マジでやり過ぎたか。まあ、好都合だからいいか。前向きに行こう。前向きに。
「じゃ、じゃあコイツらお前らの先生な。全部俺だから安心しろ。マンツーマンで教えてくれるぞ」
「「「「はい!」」」」
何かもう一糸も乱れねぇな。軍隊かよここ。
まあ、とにかく俺は監督係だ。教師役は全部俺の分身がやってくれるさ。
「んじゃあ一休みっと」
俺は言いながら、イデア実技演習場の観客席みたいなところにポツンと座る。
「全く、お前はなにやってるんだ?」
そして、気配もなく近づいてきた聖岳ちゃんがいきなり耳元で言った。
「おわああ?! 聖岳ちゃん!?!」
「バカ者! 聖岳先生だ!」
「あべしッ!!」
いきなり現れたと思ったら思いっきりハリセンで叩かれたよ。
え? 自業自得?
……気にするな。
「で、何で聖岳先生がここにいるんすか?」
「ん? 聞いてなかったか? 私がFクラスの担任だぞ?」
「そうなんすか? 俺はてっきりSクラスの担任だと…」
確か、少し前はそう公表されていたはずだが。
「……Sクラスの担任をしていたという実績を欲しがった蓋原というヤツがいてな。まあ、真っ当ではない手段でそいつがSクラスの担任になった」
Sクラスにはクズが多いと思ったらなんと先生までゴミなのか。やっぱり人間、似たもん同士引き合うもんなんかね? あ、雪奈は例外な?
「全く、この学園の制度は色々とややこしい。クラスや担任の決め方ももうちょっと考えてほしいものだ…」
眉間を揉みほぐしながら言う聖岳ちゃん。なんかちっちゃい子が背伸びして、大人の真似してるみたいで可愛い……。
といっても、まあ確かにこの学園の制度は複雑で分かりにくい。……というかおかしい。
まず入学段階からして変だ。
この学園には“入試”と呼べるものは簡単な筆記テストと面接だけ。
そして、死の危険性さえある辛辣なイデア競技の選手を育成するこの学園は、年齢問わずで、ほとんど誰でも入れるのだ。
そして結局入試を受けた人間は大多数が入学出来る。
さて、ここからは復習だ。
仮入学した生徒は適当に割り振られた“仮”クラスに籍を置くと、一ヶ月ほど精神的に余裕を持たせる期間を過ごし、その後すぐにあることが始まる。
――イデア測定テスト、ゲリラ小隊が襲撃していた時に行われていたアレである。
これはイデア測定と面接+小実技の二つに別れており、このイデア測定テストのは基準に見合わない者は、暫定的に決定しているS~Fのクラスから下ろされる。
そしてFクラスを越えて落とされると、退学。
例えその者の持つイデアが幾ら強力でも、それを使いこなせる実力がなければ、切り捨てられると言うことだ。また逆もしかり。
因みに、なぜ入試の時にイデアの測定を行わないかというと、その時にイデアを測定する技術を盗まれないようにしているということだ。
何気にちゃっかり国家機密を所有してたりするこの学園はやっぱりおかしい。
そして技術を盗まれないようにするという目的が、強者のみを受け入れ、大多数の弱者を切り捨てるというその方針によって本末転倒と化している事に気付けない学園理事長もおかしい……。…アホなのか?
…とまあ、この学園の変なところは山程ある訳だけど……。
うん、それにしても、クラスメイト達への訓練は上手くいっているようだ。
流石俺の分身体。人への教え方をよく心得られておる。
何に使うのか分からないようなイデアやすごく弱いイデアにも明確な使い道を見つけて指導しているし、それによって自分に自信を持たせることで、イデアその物の格を上げさせている。イデアは心の有り様によって強くもなれば、弱くもなるからな。
「全く、お前のイデアは本当に訳がわからんな。理論上お前はイデアを出せる筈がないのにな…。…うむ、訳がわからん。」
イデア実技演習場に無数の“俺”がいる様子を見て聖岳ちゃんがそう言う。
聖岳ちゃん的に非常に知的好奇心が擽られるらしく、余りにも様変わりした生徒達のイデアに「どうなってるんだ?」と首をかしげている。
……うん。まあ、ここはイデアのせいにしておこう。
「やっぱり便利ですよね~、イデア」
「……いや、お前のは便利とかそのような域を越えている気がするが…」
「気のせいですよ~」
何気ない会話をしつつも、俺は聖岳を一瞥する。
あの妙に観察眼に優れた聖岳ちゃんが、俺がイデアを出さずにイデアの能力を使っていることに気付けていない。
……やはり相当お疲れのようだ。
そんなことを思いながら演習場を見渡す。
天井の採光窓から見える空は暗い。
この学園は全寮制だ。そろそろ寮に帰らねばならぬ時間だろう。
電気があるからこそ明るいイデア実技演習場だが、外はもう真っ暗だ。
俺はパンパンと手を叩きながら注目を集めると、全員に寮へ戻る準備をして、出来次第帰るようにと伝える。
「「「「「「yes sir!!!!!!!」」」」」」
やたら発音よく言われた。……ますます本気で軍隊かよ…。
おい! そこのドヤ顔しながら親指たててる俺!! もしかしてお前らが要らんこと吹き込んだんじゃないだろうな?!
「……(ドャア」
いや?! そんな自慢げにドヤ顔して頷かれても?!
くっそぉお!! これはバチなのか?! 分身に任せて自らの職務(?)をサボったバチなのか!?
あああああぁぅぁぁぁぁぁぁぁぁあ……!!!!
俺は心の中で叫び続けていた。
どうやら日本に帰ってきて、感覚的に異世界でめっちゃ讃えられてたのを忘れていたらしい。同時に憎まれてもいたわけだが。
道理で今、精神が悲鳴を上げているわけだ。
また一からメンタルを叩き直さねば。
そんな風に決意する俺を「してやったり!」みたいな表情で見ながら虚空へ溶けるように消えていった分身体。
……決めた。俺、もう二度と分身なんか使わない。
ぜってーだかんな!!!




