18話
『ギョギョッ!!ギョギョギョ~!!(美味しそうな餌が来ましたねぇ!!いただきま~す!!)』
…うわ速っ!!
なんでその巨体で、水中で俺達より素早く泳げるんだよ!?
気色悪っ!!
…犬人族の巣から出発した俺達は、早速件の川へとやってきた。
しばらく川辺から石を投げたり、即席の竿でもって釣りの真似事なんかして粘ってみたのだが、いつまでたっても一向に「悪食」は姿を現しやがらねぇ。
…クソッ、まさか肝心の「悪食」に出会えないとは想定外だったぞ。
このままじゃ日帰りバーベキューの予定が、キャンプになっちまうじゃねぇか。
三人で相談した結果、時間もないので強行策に移る事にした。
川に入って、上流へと遡りながら虱潰し…ローラー作戦ってヤツだ。
これなら、悪食が川下にでも行ってない限りは見つかるだろう。
それに、俺達リザードマンの体力なら川を遡るくらい、屁でもないしな。
…で。
結局、出会わないまま滝壺まで到着しちまった。
『…あっれ~?…これってさ、アレかねぇ。…悪食、川下に行ってるのかね?』
…。
なんというツモの悪さ。
つーか、フルールのババアの言い方だと川に行けば会えるくらいのカンジだったじゃねーか!!
確証が無いんだったら、事前に連絡してアポイントメントの一つもとっとけやババア!!
…クソッ、このたらい回し感、マジでお使いクエスト臭がしてきたぞ…。
探し回るのに結構泳いだから、俺ハラ減ってきたんだけど。
…そこらの魚でも取っ捕まえて、焼きながら待ってるか?
…ってオイ。
…なんだこりゃ。
『どうしたアギト?…なんだ、珍しい魚だな。』
『沼では見たことが無い種類だね。…美味しいの?ソレ?』
いや、つーか。
…コレ金魚だ。
出目金。
『キンギョ?…赤いのにキンギョっていう名前なの、ソレ?』
いや、そんなの俺に聞かれても知らんし。
…ってかデケェな、この金魚!
俺の頭よりデケェぞ、キショっ!!
…アレだな。
金魚って、小さいから可愛く見えるもんなんだな。
…こんだけデカいと、もう鯉なんかと変わらねぇな。
生臭いだけのドブ魚だわ。
『ギョーッ!!ギョー!!』
!!
なんだコイツ!?
叫び声まで気色悪っ!!
…って、金魚って鳴いたっけか?
『!!気をつけてアギトッ!巨大な魔物の気配がするよ!!』
『これは…上だっ!滝の上流だっ!!』
あ?滝の上って…。
…なんだ、あのバカでかい物体は…。
って、落ちてくるぞっ!?お前ら逃げろっ!!
『ギョギョギョーッ!!!!』
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まさか、悪食が巨大金魚だったとはな…。
…いや、デカいとは聞いてたけど、デカすぎだろ…。
ちょっとしたクルーザーみてぇなサイズしやがって。
…そんだけデカけりゃ、そりゃ犬人族も一飲みだわな。
しかもキモさに拍車がかかってるんですけど!!
顔ボッコボコに膨らんでるし!!
病気?なんかの病気なの?
…あ~、違うな。
そういえば、なんかこんなツラした金魚も居たな。
何つったっけ?
…にゃんちゅう?
…確かそんな名前だった気がする。
って事は、コイツはさっきのデカい金魚の変異種か?
…変異して不細工さに磨きがかかるのってどんな気持ち?ねぇねぇ?
『ギョギョーっ!!!(なんか悪口を言われてる気がしますねー!!!)』
お?なんだやるかコラ?
いっちょ前にふくれっ面しやがって、もしかして怒ったの?オコなの?
『アギトっ!魔法が来るぞっ!!』
『ギョェー!!(【水鉄砲】)』
おおっと、危ない危ない。
…残念ながらその魔法は見たことがあるんだなぁ。
魚の変異種だから、どうせ水魔法だろうと思ったよ!
知ってる魔法にみすみす当たってやる程、俺は優しく無いんだなぁ。
『…ギョギョ(【水鏡】)』
!?
いってぇえ!!
…クソッ!何だ今の!?
後ろから魔法が飛んできたぞっ!?
ちくしょう…右肩をパックリ切られちまった…。
…まぁ、当たったのが頭とかじゃなかっただけ儲けもんか。
『なんだ今の魔法っ!?最初の魔法を水の壁で反射させたのか!?』
『…っていうか威力がヤバいよ。一応咄嗟に風の防御壁を作ったのに、易々と貫通したよ…?』
…クソ!見た目のキモさに騙されちまった…。
魔法をそんな風に使える知能がある奴だったとは。
水中での速さは俺等以上。
魔法の威力もザリガニの変異種なんかよりずっと強い。
認めたくはないが…。
…コイツは、中々の強敵じゃねぇの。
水の中ならな。
【爆裂魔法】
『…ぎょっ!?ギョギョッ!?(…えっ!?私、飛んでるっ!?)』
舐めんな魚類。
素早さに自信があるみてぇだったが、一帯の水ごと吹っ飛ばされたら関係無ぇよな?
俺達は確かに水中の適正があるけど、最初から水中戦する気なんてさらさら無ぇんだよ。
『…ああ、そういえばそういう作戦だったな。』
『…それじゃあ…【嵐】』
青年の魔法は相変わらずハデだなぁ。
…こりゃあ前の火炎旋風の炎無しバージョンか?
…なんか竜巻の大きさだけなら、前のより大きくない?
あ、キザの野郎も協力してんのか。
良し、上手い具合に吹っ飛ばした水と悪食を巻き込んだな。
そのまま水面を移動して…。
…オーライオーライ!
…はいストーップ!そこで下して!
…ねぇ、今どんな気持ち?
我が物顔で川の主気取ってたのが、陸に揚げられて虫の息って。
…口パクパクして、ねぇどんな気持ち?
『ぎょぉ…ぎょ…ぎょぎょぉ…(み、水…【大…瀑…】)』
いや、させないよ?
何のために陸に揚げたと思ってんの?
ほれ、ミサイルランス。
『ギョェェェッ!!(痛ぁぁぁい!!)』
『集まっていた魔力が…散った!?』
『…たぶん、体内の魔石を砕いたのかな?本当にアギトは器用だよねぇ。』
まぁ何百匹も魔物を解体してりゃあ、どのへんに魔石があるか予想もつくわな。
もったいねぇけど、あの魔法は厄介だから仕方無ぇか。
頼みのスピードを生かせねぇ、魔法も使えねぇんじゃ、正にまな板の上の鯉って奴だな。
…いや、まぁ金魚だけど。
さてと。
んじゃまぁ、さっさと終わらせるか。
…流石にタタキは厳しいから、やっぱ焼きかなぁ。
どっちにしろ、これから袋叩きにはするんだけど。
…いただきます。




