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リザードマンは妻と娘の待つ世界に帰りたい  作者: 須藤 蓮司


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波乱の10話

 転生17日目。


 朝方、同期の四馬鹿がヘロヘロになりながら魔石を持ち帰った。

 これといった大きな怪我は無い様子だ。


 な?だから言ったろ?

 俺達位強くなってれば、たとえ魔法を使う魔物だろうがさほど恐れる相手じゃ無いって。

 …しっかし、お前等疲れきってんな…。



 でも魔法の特訓をしまーす。

 折角魔石も手に入った事だし、遅れてた分も取り返さなきゃいけないしね!


『…君もスパルタだよね。魔石は少し加工してからの方が魔力のコントロールがしやすいから、加工してる間だけでも休ませてあげたらどうだい?』


 いやいや、成長期は待ってくれないからね。

 魔法だって早いうちから練習しといた方が覚えが良いかもしれないし、のびしろも増えるかもしれん。

 あくまで可能性だけど、早いにこした事は無いだろ。



 そんなワケで魔法の特訓が始まった。


 まずは魔石からの魔力の流れを感じる為の特訓。

 それぞれ胡座をかき、手のひらにのせた魔石とにらめっこする事数時間。

 …お、なんか陽炎の様に立ち上る、モヤっぽいのが見える…気がする。

 これが魔力の流れか?


 それから数分もするとキザと、意外な事にタンクとドクロも魔力を感じられるようになった。

 …ノーキン&カリブの二人は、まだまだ時間がかかりそうだな…。


 おーい、俺達は次の段階に進んでるからな。

 …お前等、早くしないと四馬鹿が二馬鹿になっちまうかもしれねーぞ?


 続いて魔力のコントロールの特訓に移ったが、これがとにかく難しい。

 魔石から立ち上るモヤの流れて行く方向を変えてみようと念じてみるが、まったく変化が無い。


 ぐぬぬ…マジかよ全然ダメじゃねーか…。

 …まさか、俺には魔法の適性が無いなんてオチじゃねーだろうな…?


『…ああ、なるほど。そういう事か。』


 後ろから聞こえた独り言が気になって振り返ると、キザの野郎が持った水色の魔石の上で、つむじ風のように魔力が回転していた。


 おーマジか。

 それってキザがコントロールしてるんだよな?


『…コツに気付いた。この魔石はおそらく「風」の魔力を内包している。つまり…。』


 …皆まで言うな、なるほどな。

 ベタだけど色は属性だったのな、つーか気付けよ俺。


 俺は手にしたゴルフボール大の魔石を注視し、再度魔力のコントロールを試みる。

 色は赤、ヒカゲ青年の魔石と同じだ。

 …って事は…。


 俺が魔力の流れに脳内のイメージを重ねる様に念じると、モヤは突然ボワッ!と渦巻きながら爆発・・した。


 危なっ!!鼻先を爆炎がかすったし!!

 …あっれ〜?なんかコントロール飛び越して燃えちゃったぞ。

 具体的にイメージしすぎたか?


『…は…ははは…。まさか、もう魔法が使えるようになるとはね…。折角、珍しく君に良いトコを見せられるチャンスだったのに…。』


 あ、コレもう魔法って事でいいの?

 よっしゃ一番乗り!!


 ホレホレキザ君、いつまでも魔力回してばっかいないで、そよ風の一つもおこせんのかね?

 …あー違う違う、もっと具体的にイメージするのが魔法のコツよ?

 …ダメだなこりゃ、残念だけどキザ君には魔法の適性が無いでーす!


 …お前等二人はそれ以前の問題だな。

 さっきの話聞いてたろ?

 魔石の属性をちゃんと考えて、それに合ったイメージをするんだよ。

 …一旦コントロールの方は置いといて、具体的にイメージする練習をした方が良いかもな。


 …テメエ等二人は…論外だな。

 もう諦めて、あっちでザリガニ共の死体片付けるの手伝ってくれば?


『君もまだまだ練習が必要だよ?制御が甘いし、さっきの魔法じゃ自分や味方を巻き込みかねない。』


 アッハイそうっすよね。


 …青年も中々言うようになったじゃないか。

 …さっきの言い方なんて、顔はいつもの通りなのにほんのちょっとだけ怒気が乗っていたし。

 危うくこの年でお漏らししてしまう所だったよ。

 …いや、まあ生後17日とかだし、本来ジョバジョバお漏らししてる年なんだけど。



 結局、昼までに魔法の使用まで辿り着いたのは俺だけだった。


 …キザが惜しいんだけどなぁ…最後の最後で躓いてる感じだな。

 …あ、そうだ。

 お前アレだ、魔法を単体で使うんじゃなくって、弓矢と一緒に使ってみたらどうだ?

 丁度風の魔石使ってるし、矢に風を纏わせるだとか、矢の軌道を風で操るみたいな?

 そっちの方がイメージもしやすかろう。



 そしてその後。

 昼休憩で俺がプリップリのザリガニ肉にむしゃぶりついている時、事件が起きた。


『…アギト兄ぃ!アレって…。』


 うっせえなノーキン、俺は今ザリガニ食うのに忙しいんだよ。

 …しっかしザリガニ共、沼地の頂点の一角だけあって美味いな…マヨネーズかチリソースと絡めて食いたいわ…。

 子供の象くらいのサイズがあるだけあって可食部の量も申し分無いし。


『アギトのアニキィ、本当にマズいっスよ…。』


 …これだから馬鹿舌リザードマンは…。

 肉ばっか食ってるから海産物の旨味が分からんのかね?…いや、沼産物か?

 お前アレだぞ?こんなサイズのエビ、高級老舗旅館とかでも絶対出ないんだからな!?


『兄ぃ!ボスですよ、ボス!!』


 お前はどっかのアイドルさんか。

 いや、確かにデカイけど、残念ながらコイツはボスじゃねーんだよ。

 昨日散々ザリガニ狩ったんだけど、結局最後まで出てこなかったんだよな、あの腰抜け野郎…。


『…ふんっ、役立たずとガキ共が集まって、何の悪巧みだ?俺の寝首をかく相談でもしていたか?』


 鱗が逆立つような不快な声に振り返ると、数人のリザードマンを従えた糞ボスが見下した目でこっちを睨んでいた。


 …おお、これは我等が色情無能親父ボス

 繁殖しごとに多忙な中、本日はどのような難癖ようけんですかコラ?

 …あ、やべ、最後素になっちゃった。


『…この糞ガキが…そんなに頭を噛み砕かれたいのか…?』


 おお、こわいこわい。

 怖すぎて思わず手が出ちゃいそうだぜ。

 ついでに槍も出ちまったらスンマセンねぇ、ぶひひ…。


『…用があるのは僕でしょう。…君も悪ふざけが過ぎるよ。』


 だってよー気に入らねーんだもん仕方ねーよー。


『…それで?わざわざボス自らいらっしゃったのは、決闘の日取りが決まったのでしょうか?』


『…フンッ、卵係風情が気取りやがって。変異したと言っても、元が貴様ではたかが知れているわ!…どうせこけおどしに決まっている!』


 …こいつマジ頭悪ぃーわ。

 言葉のキャッチボールすらマトモに出来ないのかね?

 セリフから漂う三下臭がパネェし。

 …とてもじゃないが同族とは思えん。

 …リザードマンじゃ無くて珍種のワニか何かなんじゃねーの?


『…要件は、それだけですか?』


『…おお、そうだった、要件だったな。』


 …お、糞ボスの取り巻き共が武器を手にしたぞ。

 こりゃあ、やっぱアレですよね。


『決闘の日取りだったか?…もうどうでも良かろう、そんな物。そもそも何でこの俺が、真面目に貴様なんぞの相手をしなくちゃあいけない?』


『…そう、ですか。それでは、決闘は中止ですね。』


『…ああ。代わりと言っちゃあなんだが、たった今貴様の処刑が決まったぞ。罪状は俺への反逆罪だ!』


 おお、来た来た!

 糞ボスが完全に不意討ち狙いで愛用のバトルアックスを打ち下ろしたけど、残念ながらそこには既にヒカゲ青年は居ないんだなぁ。

 …頭悪いから仕方ないんだろうけど、魔術師(ウィザード)舐めすぎ。


『…今ならまだ、手が滑った事にしてさしあげますが?』


 振り返った糞の遥か頭上に、ユラユラと空気を歪ませながら浮かぶ青年の姿。

 …コレ、中々カッコイイだろ?

 …そうです俺が考えた魔法でっす!

 足下の空気を暖めて、自分の下から上昇気流を発生させる魔法でっす!

 イエーイ!!


 …よく成功したな、あれ。


 練習じゃ一回も成功しなかったのに。


 …ああ、さっき飯食いながら話してたのを、もう応用してきたのか。

 やっぱ青年パネェわ。


 …そして不意討ちなんていう糞ダサい手を使った上に、糞簡単に避けられちゃった糞ボスが、青い鱗面に青筋浮かべて激オコのご様子。


『…糞にたかる蠅がっ!ガキ共もろともブッ殺してやらぁっ!!殺れ!』


 …いや、その例えだとお前が糞になるが…まぁ糞だけど。

 糞の声を合図に、取り巻きのリザードマン達が俺等に向かって、武器を振り上げて襲いかかってらっしゃった。


 ハイハイ、分かってましたよ。


 皆さん、準備はよろしくて?

 …それじゃあ、楽しい楽しい同族殺害ともぐいを始めましょうか。

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