表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に転生&転移した俺のスキルは「忘却」でした~勇者パーティを追放されたけど、実は最強の対魔法兵器だった件~  作者: アラベ幻灯


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/18

一体何をしているんだ?

これがこの物語の最新エピソードです。皆さんに楽しんでいただけたら嬉しいです。

数か月に及ぶ旅路の果て。


 ケン、そして勇者ライトノベルとそのパーティは、ついに目的地へと辿り着いた。


 メロニラ・フォン・ギオルヤネリヒの屋敷。


 それは“屋敷”という言葉では足りない。


 小さな城と呼ぶべき規模だった。


 白亜の壁。


 高くそびえる塔。


 そして異様なほど静まり返った空気。


 門前に立つ兵士たちは、一様に奇妙な装備をしていた。


 銀とも鉄とも違う、鈍い光を放つ金属の兜。


 顔の大半を覆い、その下の表情は一切見えない。


 ケンは無意識に眉をひそめた。


(……なんだ、あれは)


 違和感。


 だが、その正体は掴めない。


 ライトノベルが一歩前へ出る。


「勇者ライトノベルだ。メロニラ・フォン・ギオルヤネリヒに面会を求める」


 静かな声。


 門番たちは一瞬だけ互いを見やる。


 そして――何も言わず、門を開いた。


 軋む音と共に、重厚な扉がゆっくりと開かれる。


 招き入れられるように、一行は中へと足を踏み入れた。



 広大な玄関ホールを抜け、案内されたのは屋敷奥の応接間だった。


 重厚なカーテン。


 差し込む光は弱く、室内は薄暗い。


 その中央。


 一人の女が、椅子に腰掛けていた。


 痩せ細った身体。


 病的なまでに白い肌。


 呼吸は浅く、不安定。


 ――あの女。


 ケンの脳裏に、以前見た光景が蘇る。


 遠くの城の窓辺に立っていた、あの女性。


 間違いない。


 メロニラ・フォン・ギオルヤネリヒ。


 そして彼女もまた、あの奇妙な兜を被っていた。


 その下の表情は見えない。


 だが、わずかに口元が動く。


「……ようこそ」


 かすれた声。


「勇者ライトノベル様。そして……ケン様」


 ゆっくりと視線が向けられる。


 その視線は、まるで最初からケンを知っているかのようだった。


「長旅、お疲れ様でした」


 形式的な歓迎。


 だが、そこに温かみはない。


 全員が席につく。


 静寂。


 最初に口を開いたのは、ライトノベルだった。


「本題に入る」


 無駄のない声音。


「アクセルに関する件だ」


 メロニラは微かに首を傾ける。


「……アクセル?」


「すでに死亡している。だが、彼の所持していた資料から――」


 机の上に、書類が置かれる。


「あなたとの資金の繋がりが確認された」


 沈黙。


 メロニラは動かない。


 ただ、静かに言う。


「……何のことでしょう」


 とぼける。


 完全に。


 ライトノベルは一切揺るがない。


「証拠は揃っている。貴族としての地位を利用した資金操作、違法取引、そして犯罪組織との関係」


 一拍。


「この件は王国法廷に持ち込む」


 宣告。


 だがメロニラは、微かに笑った。


「……勇者ライトノベル」


 かすれた声。


「それは、あなたの言葉だけではありませんか?」


 空気がわずかに変わる。


「証拠があろうと、それをどう解釈するかは別の話」


 ゆっくりと続ける。


「あなたの言葉と、私の言葉」


 一瞬の間。


「どちらが重いかしら?」


 ライトノベルは即答した。


「それで構わない」


 迷いはない。


「判断は法廷に委ねる」


 立ち上がる。


「行くぞ」


 それ以上の会話は無意味だと判断したのだろう。


 一行もそれに従う。


 ケンも立ち上がる。


 そして――


 違和感。


 背後。


 扉が、ゆっくりと閉じる音。


 振り返る。


 重厚な扉が、完全に閉ざされた。


 外へ出たはずの――


 ケンのハーレムの少女たちは、すでに廊下の先へ出ている。


 だが。


 ケン。


 ライトノベル。


 そしてパーティの面々。


 その全員が、まだこの部屋の中にいる。


 次の瞬間。


 金属音。


 周囲にいた護衛たちが、一斉に構えを取る。


 魔法陣が展開される。


 詠唱。


 殺気。


「――!」


 ケンは即座に前へ出る。


 発動。


 忘却。


 だが――


「……は?」


 何も起きない。


 魔力は流れている。


 だが、効果が発動しない。


 護衛たちの動きは止まらない。


 そのまま魔法が放たれる。


 爆音。


 閃光。


 ケンは辛うじて回避する。


「……なんでだ」


 理解できない。


 その時。


 メロニラが、ゆっくりと立ち上がった。


「無駄ですよ」


 静かな声。


「その兜」


 ケンの視線が、護衛たちへ向く。


 あの金属。


「特殊な合金で作られています」


 メロニラは続ける。


「あなたの能力――“忘却”」


 一瞬の間。


「完全に遮断する」


 沈黙。


 ケンの思考が止まる。


「……は?」


「あなたのことは、ずっと観察していました」


 淡々と。


 事実を述べるように。


「その力の性質。範囲。制御。限界」


 そして。


「アクセルに助言したのも、私です」


 空気が凍る。


「最初から」


 短く。


「あなたを殺すために」


 ケンの瞳が揺れる。


 その時。


 ライトノベルが、一歩前に出た。


 静かに。


 迷いなく。


 ケンは彼を見る。


(……頼るしかない)


 この状況で。


 自分の力は使えない。


 ならば。


 残るのは――


 勇者。


 ライトノベル。


 彼しかいない。


 次の瞬間。


 剣が抜かれる。


 閃き。


 そして――


 突き刺さる。


 胸に。


 ケンの。


「……え?」


 理解が追いつかない。


 熱。


 血。


 視界が揺れる。


 ライトノベルの剣が、ケンの胸を貫いていた。


「……っ」


 言葉が出ない。


 ただ、見上げる。


 目の前の男を。


 仲間を。


「……ライトノベル……?」


 声が震える。


「……お前……何やってんだよ……」


 答えはない。


 ライトノベルの表情は、何も変わらない。


 感情がない。


 その後ろ。


 パーティの仲間たち。


 全員が、動かない。


 助けようともしない。


 ただ――冷たい目で見ている。


 その光景。


 異常。


 完全な異常。


 その時。


 メロニラが、静かに言った。


「……無駄です」


 ケンの意識が揺れる中。


 その声だけが、はっきりと届く。


「勇者ライトノベルは、あなたの言葉を聞きません」


 一瞬の間。


「そもそも――」


 微かに、笑う。


「彼に“意志”など、存在しないのですから」


 沈黙。


 そして――


「何年も前から」


 その言葉が、落ちた。

このエピソードを楽しんでいただけたなら幸いです。次のエピソードも近いうちにアップロードします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ