第63話 試験の何が嫌って、やはり結果待ちの期間ですね…
いよいよ花粉症の季節がやって参りました。まぁ、自分はそんな事には関係無く、1年中アレルギー性の鼻炎なんですけど。
試験後、トリスはレンバッハ家に帰ってきて速攻自身に与えられた部屋のベッドに大きく倒れ込む。
「ふぅ〜。まさかマルティナさんに会うとはな〜。世の中分からないものだ。」
トリスの脳裏に浮かぶのは、当時12歳であった彼女の姿。バレやしないとタカを括っていた分、ここでの再会はトリスに恐怖を与えたのだ。トリスは人に興味が無く、自身から積極的に関係を築こうなどとは一切考えることのないほどだ。人付き合いが下手とも言えるが。そのため、1度会ったことがある人物など、数日後には記憶の彼方にあるかないかといったところである。
『コンコン』
いきなり部屋のドアがノックされ、慌ててトリスはベッドから飛び起きる。
「はい、何でしょう!」
『お食事の準備が整いましたので、食堂までお越しください。』
「あ、どうもありがとうございます。」
夕食が出来たので、メイドが報せに来てくれたようだ。返事をしてからノソノソとベッドから降り、食堂に向かう。
この屋敷には、ホルスとトリスの他にはメイドや執事などの下働きの者しか居ない状態だ。ホルスの両親は領地持ちの貴族として、領地と王都を行き来する生活をしているのでここにはまず滞在することは無いそうだ。
そのため食事は広い食堂で行われるのだが、2人は揃ってテーブルの端の方で向かい合って食べるので、少々寂しい食事となる。幾度となく下働きの者を食事に誘ってみたものの、頑なに応じないので既に諦めの境地に至っている。
「おー、遅かったね。調子でも悪いの?」
トリスが食堂に着くと、既にホルスはテーブルについていた。料理は並んではいるが手をつけられた形跡は無いので、トリスを待っていてくれたようだ。
「態々待っててくれて悪いな。ちょっと試験で疲れただけだから大丈夫。」
「まぁ、1人で食べるのは寂しいしね。」
そう言いつつ、部屋の隅に待機しているメイドに目を向けるホルス。身分がどうのとという理由で断られた事を少し根に持っているようだ。メイドはちょっと気まずげに知らん顔をしている。
「まぁまぁ。俺の予想では、そんなしないうちに賑やかになるだろうから、そんな目でメイドさんを見ちゃいかんぞ?」
トリスが宥めるように言うと、ホルスは不思議そうに首を傾げる。
「?何でそんな事が言えるの?」
「ん〜、何となくかな?」
「何それ?まぁ、トリスがそう言うなら信じてみるよ。」
笑顔で納得した自身の主人を見て、トリスに目礼するメイド。メイド自身も笑顔の裏に、寂しいという感情を隠していた主人を気にしてはいたのだろう。ホルスはしっかりしているように見えて、まだ15歳の少年なのだ。いくらこの世界の人間が早熟とはいえ、親元を離れて1人で道を切り開いていくのは不安だったのだろう。トリスは友人としても精神年齢的に年上としても、この実は寂しがり屋のホルスの助けになれるのは、嬉しいことなのだ。
『気にしないでくれ』という意味を込めて、メイドに肩を竦めてみせるトリス。メイドは再び目礼するのだった。
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「よし!じゃあ食べようか。」
「そうだな。冷めたら勿体無いからな。」
テーブルに並んでいる料理から、まずはスープを飲む。1年の中では比較的寒いこの時期にピッタリな温かいオニオンスープ風の料理で、冷えていた体を芯から温めてくれるのを感じる。
「ふぅ。本当にいつ何を食べても美味しいよな〜。」
「うん、そうだね。しかもローテーションで当番が代わるから、メイドさんの誰が作っても美味しいってことだよ。」
「え?全員高レベルな料理の腕前なのか?」
トリスはびっくりする。普通は専属の料理人が居ると思っていたからだ。
確かに普通の貴族の家ならそうなのだが、元々はこの屋敷内で料理を必要としていたのはホルス1人だけであったので、態々雇う必要は無かったのだ。また、侯爵家だけあって、メイドの質も異様に高いのだ。そんな話をハナタカに聞いているメイド。ちょっと口元が歪み、鼻腔が膨らんでいるが気にしないことにする。
「ところで試験は大丈夫かな?」
「どうだろうね?少なくとも実技はいけそうな手応えだったよな?」
「となると、問題は筆記試験だね。…解答欄が全部1つずつズレている恐怖。」
「ヒッ!止めてくれ!恐怖じゃないか!」
「名前と試験番号記入欄が空欄。」
「あ、ありがちだな…。」
トリスの恐怖心を煽るかのように、ニヤリとしながら次々と試験あるあるを言ってくるホルス。
『実はコイツドSなんじゃ?』と内心引いているトリス。
「結果発表日が2日後だから、それまで悶々としているのは嫌だよね〜。」
「そうだな。しかもこの期間中、受かってる受かってない関係無く、二次募集に向けて勉強しないといけないしな。で、受かってたら『無駄じゃん!』ってなるんだよな。」
「そうそう!よくそんな話を聞くよね。」
「碌に遊べもしないこの期間、本当に無駄だよな…。」
大学受験を思い出して、遠い目をするトリス。
この期間中、何しようかと2人で頭を悩ませるのだった。
ヒロイン募集中っす!作者の脳内では、いいとこ2、3人が限界です!




