エピローグ パパとお姉様の秘密のおはなし
「――して、結果はどうなった?」
国王、サリスト・ナーシェイの私室。
ソファにのけ反ったお父様がやけくそ気味に口を開く。そのご様子、もうわかっているのではなくて?
正面に座ったわたくし――サリスト・ナーシェイ三女にして、ホラン公爵家夫人――フェルシュ・ホランはゆったりと扇を口元に当てた。
「一縷の望みもない『お断り』ですわ。さすがヴィルシュ家といったところねぇ」
「クソ、これだからあの家は嫌いなんだ。道理が通じん」
「同意しますわぁ。でもあの娘には、侯爵も手を焼いているのではなくて?」
クッ、と父は嗤った。
「まぁ、アイツも煮え湯を飲まされたと思えば多少は溜飲が下がるか」
「――それよりも、お父様?」
「なんだ?フェルシュ」
「金貨100枚をはやくお出しになって?今回はわたくしの勝ちでしょう?」
お父様は口をひん曲げて、チェストから取り出した革袋をドスンとテーブルに置く。
「はぁい。ありがとうございますぅ」
「イケると思ったんだがなぁ。王配作戦。それどころかこちらが譲らざるを得ない状況に追い込まれるとは……ヴィルシュの子はヴィルシュ、とでも言うべきか」
お手上げ、とばかりにソファに寝転んでしまった。あらあら、拗ねてしまったわ。
わたくしはスパイスをふんだんに使った王家秘伝のお茶を堪能する。
……あぁ、このお茶の配合を賭けの褒賞にすればよかったわね。次はそうしましょうか。
「パズゥはお熱だったのだけれど、相手が悪かったわねぇ」
……パズウェルは顔は良いし、努力家で頭の回転も良い。なにより王族とは思えぬほどに心根が真っ直ぐで愛らしい。
姉の欲目だけれど、あの子は結婚すれば素晴らしい夫になると思うの。
「……もっと上手く誘導すべきだったか?」
額に腕を当て、だらしなく呟く。私室ですもの。好きになさればよいわ。
「無理よ。あの子は人形ではないわ。自分の足で情報を掴んで、自分の頭で考えて進む道を選んでいる――今回はすこしだけ失敗したけれど、ね」
「はぁ~!わが子の成長を喜ぶとするか」
「さすがお父様。寛容でなによりですわぁ」
「ったく。なんであの子が振られるんだ。あれほどよい男は他におらんというに」
わたくしは、カップを置いて考え込む真似をした。
「……恋は、先に堕ちた方が負け。きっと戦う前から、勝負は決まっていたのでしょう」
でもね。
……ねぇ、ディア・ヴィルシュ?
あなた、我が家の至宝を振ったことをいつの日か後悔しても知らなくてよ?
以上にて、愛され末っ子8男坊パズウェル視点のお話が完結となります。
最後までお付き合いいただきありがうございました!




