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273 それぞれの言い分

 ――次の日。


 アリアたち一行は、予定通り、ハーペンハウスの武器屋を巡ることになった。

 夏らしい日差しが降り注ぐ中、歩くことになってしまう。


「あああああ! もう、熱いですわ! えどわ……エド! 何か、冷たい食べ物を買ってきますの! 頼みましたわよ!」


「ふざけるな! 自分で買ってこい! 暑いのは、エレノア―ヌだけではないのだぞ!? 少しは我慢しろ!」


「我慢なんてできませんの! 冷たいものが食べたいですわ!」


 エレノアの顔からは、汗が流れている。

 自慢の長い赤毛は切られたため、若干、涼しくはなっているハズであった。

 ただ、それでも我慢できないものは我慢できないらしい。


 そんなワケで、駄々をこねるエレノア。

 それを見かねてか、カレンが口を開く。


「涼しくなる方法を知っていますよ。私の拳法術の技に、そういうのがあるので。どうでしょう? 試しますか?」


「本当ですの!? お願いしますわ!」


 エレノアは、すぐさまお願いをする。


「承知しました」


 カレンは返事をすると、左腕を背中側に回す。

 そして、溜めを作り終わると、一気に放つ。


「……へ?」


 カレンの放たれた拳は、エレノアの顔面に吸い込まれていく。

 このまま当たるかと思われた。

 だが、エレノアの顔面に当たる寸前で、拳は止まってくれる。


 拳がまとっていた勢いが、エレノアの髪を激しくなびかせていた。

 まるで、突風でも吹いたかのような動き方である。


「どうですか? 涼しくなりましたか?」


 腕を下ろしたカレンは、質問をした。

 ただ、答えが返ってくることはない。


「…………」


 あまりの迫力に、エレノアの魂は抜けてしまったようだ。


「おやおや、少し涼しくさせ過ぎたようですね」


 カレンはそう言うと、エレノアのこめかみに拳を当てる。

 そして、グリグリをし始めた。


「あああああああああ! 痛い、痛いですのおおおおお! 誰か、助けてくださいましいいいいい!」


 どうやら、無事に魂は戻ってきたようだ。

 エレノアの体は、若干、浮いていたが、すぐに地面に降り立つことになった。


「……ひどい目にあいましたの」


 エレノアは、こめかみを触っている。

 相当、痛かったようだ。


「涼しくなったようで良かったですね。ついでに、多分、頭も良くなっていますよ。羨ましい限りです」


「この、馬鹿! 痛みで暑さが紛れただけですの! ケンカを売っているなら、買いますわよ!」


 そこから、エレノアとステラの不毛な言い争いが始まってしまう。


(……今日も元気だな、二人とも。というか、カレンさんのあれって、拳法術関係ないだろう。まぁ、たしかに涼しくはなると思うけど。冷や汗をかいてしまうからな。万が一、当たっていたら、頭が爆発とかしていた気がする)


 アリアは、空を眺める。

 雲一つもない快晴であった。






 ――そんなこんなで、歩くこと数分間。


 アリアたち一行は、武器屋に到着をする。

 何の変哲もない、どこにでもありそうな店構えだ。

 早速、アリアたちは、武器を物色し始める。


 その様子を、ミハイルとカレンは黙って見ていた。


「アリア、アリア! この剣は、どうですの? 中々、良いと思いますわ!」


 サラはそう言うと、アリアに剣を渡す。


「値段も、お手頃ですし、悪くはない気がしますね」


 アリアはそう言うと、軽く素振りをする。

 その都度、ブンブンと風切り音が発生していた。


「これを買いましょうか。だ……ミルさんにお金をもらってきますね」


 剣を鞘に納め、アリアは歩き始める。

 目的地は、近くで立っているミハイルのもとであった。


「これを買いたいのですが、よろしいでしょうか?」


「うん、良いよ! 性能も良さそうだし、値段も良い感じだから!」


「ありがとうございます」


 アリアは確認をしてもらった後、お金をもらい、店主のもとに向かう。


「お! それに目をつけるとは、中々、やるな! さすが、ウワサの武器商人!」


 スキンヘッドに厳めしい顔。

 ただ、今は、朗らかな笑顔を浮かべている。


「え? 結構、ウワサになっている感じですかね?」


「それはそうだろ! 赤毛のお嬢ちゃんと青年の戦いは凄かったからな! 俺も昔は軍人だったから、多少は分かっているつもりだ! まぁ、素人から見ても、見ごたえのある斬り合いだったは思うがな!」


 どうやら、エレノアとエドワードの戦いを見ていたようだ。


「そうなのですね。ハイ、これ、お金です」


「毎度アリ! あ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど良いか?」


 店主は、アリアに剣を渡すと、疑問顔になっていた。


「何でしょうか?」


「お前たちは、また、あそこで露店をするのか?」


「いえ、明日にはハーペンハウスを出発しますね。今日は、仕入れをする予定です」


「それは良かった! いや、今日は俺の店で買ってくれたみたいだけどよ! 他にも、仕入れ先はあるだろ? となると、うちの競争相手になるかと思ってな! まぁ、明日には出発するみたいなら、その心配もなくなるってワケだ!」


 武器屋の店主は、アリアたちが競争相手になるかもしれないと思ったようだ。

 今は、ホッとした顔をしている。


「見た感じ、繁盛しているみたいですけど、そこまで気になりますか?」


 アリアは、疑問を口にした。


 武器屋には、アリアたち以外の人も、それなりにはいる状況だ。

 なので、苦戦しているようには見えなかった。


「同業他社を意識しない奴なんていないだろう! たしかに、昔と比べれば儲かってはいるがな! それでも強力な競合相手の登場を、歓迎するのは難しい! まぁ、そんなところだな!」


「私たちは流れの武器商人なので、安心してください。というか、やっぱり、今って、武器の売れ行きは良いのですか? 実演はありましたけど、それでも、かなり売れたなと思いまして」


「おう! 今なんて、戦争中より売れているぞ! まぁ、嬉しいのか、悲しいのか、複雑なところだがな!」


 店主は、頭をペチペチと叩く。


「お店が繁盛するのは良いことな気がしますけど?」


「それはそうだけどな! 武器を主に買っているのが、ハーペンハウスの平民なんだよ! まぁ、最近は治安も悪いからな! 自分の身は自分で守るしかないってワケだ! これも、戦争で焼け出された奴らが、ハーペンハウスに流入してきたせいだろうな! あとは、傭兵が増えているのも気がかりだ!」


 店主は、一転、険しい顔をになってしまっていた。


(……流入してきた人たちが、食うに困って、強盗か。警備の人たちも、すぐには来ないからな。というか、そもそも、助けてくれなさそうだし。だから、自分の身は自分で守るために武器を買うしかないと。ハーペンハウスに流入した人たちも出ていくワケにはいかないだろうし、難しい問題だな、本当に)


 アリアは、険しい顔の店主を見ながら、そんなことを思う。


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