イワネ
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「タツ、あとで漁港や市場はいこうじゃないか。まずはサーヤの言う通り頼むよ。」
「カイトが言うんじゃしょうがないな、ちょっと行ったところに何軒かみせがあったはずだから聞いてみるよ。」
そういうと、タツはサッと船を降り、駆けていった。この辺り、漁船に乗っていたこともあり、見事なものである。
「ねぇカイト。この旅はどれくらい続ける予定なの?」
2人きりになった船上でサーヤが問いかける。
「そうだな。各国を海路で繋げて、それが出来たら一旦終わって、そこからは陸路で内陸国を見て回りたいな。」
「それなら、早くても数年はかかるわね。よかった。」
「なんだ?早く帰りたいんじゃないのか?」
「ううん。だってすぐ帰っちゃったらまたカイトは王様になるための訓練あるでしょ?私ももうメイドとして働かなきゃだし、タツはどうでもいいけど、今みたいにはみんな会えないから。」
さっきまで進んできた海を見つめながら、サーヤは呟く。
「そうだな。でも、この旅は大切だぞ。うまくいけばマギ国はもっと豊かになるし、島全体をよく出来るかもしれない。それに俺たち3人はずっと一緒さ。」
カイトはサーヤの隣で海を見つめる。
潮風と海鳥の声が響く。のどかで、どこか悠久の時間を感じさせるその風景に2人は自然と……
「……カイト……あのね、……」
サーヤが顔を赤らめながら何かを囁くように声を上げる。
「おーい!!2人ともどっち向いてるんだよ!こっちこっち!絹を見たいって客を連れてきたぞ!」
「痛っ!!なんで俺殴られてるの!?ねぇカイト!?なんでサーヤに殴られたのかな?」
「さぁな俺にはわからんよ。」
船から降りた2人はタツと合流し、カイトとの時間を邪魔されたサーヤはタツを殴った。
「何してるのかしら?こっちは商売しに来たのだけれど。」
3人の様子を見兼ねたのかタツが連れてきた女性が話を切りだす。
「これはすいません。さっきのは気にしないで下さい。僕はカイトと申します。マギ国から来ました。絹を買っていただけるんですか?」
カイトは初めての商売に、緊張気味に喋りだす。
「あたしは、イワネ。どうぞよろしく。絹はどこ?早くみたいんだけど。」
カイトの丁寧な挨拶とは対照的に、名前だけを名乗り、すぐに荷物の確認を迫る。
「ちょっと待ちなさいよ。」
船に向かおうとするイワネの前にサーヤが腕を組み立ちはだかる。
「ヤガワの人は教養が豊かだって聞いたけど、礼儀は全くなっていないのね。こっちはマギの高級な絹を売ってあげるって言ってるの。そんな態度なら他の商人に売ってもいいんだから。」
「そう。ならこっちも遠慮するわ。あなた達のような若くて、どこの馬の骨とも知れないものの商品なんて買ってくれる人がいればいいわね。」
サーヤとイワネが双方腕を組んだまま睨み合っている。
2人とも体は華奢で、身長も同じくらいだが、女性的な発育がイワネの方がよく、同じ体勢でもイワネの方がやや優勢に見えてしまう。