十話目
10分くらい歩き、ギルドに着けば、タイミングを計ったかのようにギルドマスターが現れた。
「おお、ソルティか。ここに来ると言うことは儂になんか用かの?」
ああ、本当にここの街の人は一部人を除くが、皆話が通るのが早くて助かる。まあ、これは冒険者として優秀なギルが僕のことを慕っているから、と言うのもあるだろうけど。
「今回雇ったアスターと言う大工から、ギルドマスターは鑑定が使えると伺ったので、この街を住みやすくするため、テイマーが必要なので、テイマーの才能がある子供をスラム街に住む子達の中で探して欲しいんです。
本当なら、後ろ盾に最初はテイマー経験の豊富な人材が初代として役目を果たして欲しかったんですけど、アスターさんが言うにはこの街にはテイマーがいないと言われてしまったので、お金は僕が払いますので、鑑定していただけないでしょうか。
それに、経験豊富だからこそのプライドがあるテイマーの方が多いでしょうから、スライムをテイムしてくれるテイマーはいないでしょうし、育成した方が得策かと思いまして。
テイマーがいないと言うことは指導できる人間がいないと言うこと、僕はテイマーの知識はあるのでテイマー育成終えた後に次の街へ向かうので指導には問題ありませんのでご安心を」
そうプレゼンをすれば、ギルドマスターは難しい顔をして奥の部屋に行き、直ぐに戻ってきた。
そして僕に聞く。
「なぜ、スライムなんだ? なぜ、スライムをテイムしてくれるテイマーでないとならない?」
「この街では魔法使いが稀少です。ですから、この街の住人数を考えると全ての魔法使いがゴミ処理に当たらなければ処理しきれないはずです。ですので、魔石を使う家具の使用が限られてきて、生活しづらい状態になっています。
その原因となっているゴミ処理がなくなれば、魔法使いは本来の職務を全うできるはずです。そのゴミ処理の役割を変われる唯一の存在、それが金属でもゴミでも食料にできる雑食モンスター、スライムと言うわけです。
それを実現するためには、スライムをテイムすることができ、指示することが出来るテイマーと言うわけです。まあ、テイマーでなくても、スライムをこの街に定住させる手段はありますが、その手段は不確かな部分がありますので」
ギルドマスターがなぜ、こんなことを聞いてきたかわからないが、魔法使いが稀少な存在であるこの街の暮らしが安定するにはこの手段しかないのだ。
その説明に納得がいったのか、ギルドマスターは難しい顔をやめて、
「スライムをテイムし、スライムをこよなく溺愛しているテイマーが知り合いにいる。そいつが初代になってくれるかどうかはわからないが、変わり者だが、面倒見がよいからテイマーの指導は引き受けてくれるだろう、名目上学習所の特別教員として招くと言う形で一度会って見てはどうだ?
優秀なら、年下だろうと意見を受け入れる素直な奴だ。会って見る価値はあると思うが。
それから、他の街の常識から言えば、ゴミ処理の管轄は魔導ギルドなんだが、この街では魔法使いの存在は稀少なため、魔法使いも冒険者ギルドの管轄になっている。だから自動的にゴミ処理の担当管轄は冒険者ギルドだ。
正直、ゴミ処理の負担が減れば、ソルティの言う通り魔法使いが本来すべき仕事に割り振りが出来るから、有難い話ではある。先に依頼主はお前さんとして契約し、10年契約で、その先の契約は冒険者ギルドが受け持つと言う契約で良いだろうか」
ほんと、ギルドマスターには頭が上がらないよ。
ギンノスケの拾い癖のおかげで、スライムはあの山に定住してくれた。ギンノスケはオスだけど、母性に満ち溢れているからね、スライムが家族になったのは一瞬の出来事だった。
ここでは育てた者が無くなればこの街から去る可能性があったから、確実に成功させるためにはテイマーとその後継者が必要だったからね、指導者がいるだけで有難い。
そう話を聞いた後、いつの間にか契約書を作成していたのか、差し出され、しっかりと見落としがないように読み込んだ。
うむ。カティロ様からは相当な寄付金を頂いたし、契約金についてはそれで良いかな?
「テイマーの選び方については、先任者の推薦がなければ出来ない。必ず2人ずつ選び、規定人数より多い時には実力が同等である時は性格、本人の意思、考え方、行動の仕方で判断して欲しいんです。
責任感のない奴らにはやらせないこと、それを満たしてくれる人を選んで欲しいですね。そうでなければ、血族制にしない意味がありませんから。
まあ、不正が見つかれば裁く立場が必要ですね、これはこちら側から指導しましょう」
裏の仕事を任す事になるが、致し方ないか。合法なやり方をなるべくならするように指導しなくては。
騎士、ギルドに2人ずつってところが妥当かな。
「……我々を監視すると?」
「いえ。貴方達を監視するためではありませんよ。未来の貴方達の代わりにトップに立つ人間を監視するのです。人間は良き深き生き物、いつ欲に溺れるかわかりませんからね。
まあ、今の貴方達は汚職などしないでしょうけど、未来必ずしないなんて可能性がない訳がないでしょう? トップに立つ人間が必ずしも善人であれと言うつもりはありませんが、私利私欲で権力を利用するならば許さないと言っているだけのこと、しっかり汚職をせずに役職をこなしていれば痛くも痒くも無い監視のはずですよ?」
わざとニッコリと微笑んで見せれば、ギルドマスターは溜息をついた。
「それもそうだが……、汚職をしているとは言え、頭がいい奴らだ。生半可な監視だとバレるということを頭の片隅には入れておくんじゃぞ」
年上の忠告には従うのが僕のポリシーですからね?
「勿論です」
そりゃ、厳しく鍛えさせて頂きますよ?
6日目。
今日も山探索を中止してもらい、ギンノスケには鑑定の様子を見るのに付き合ってもらっている。
ちなみにスラム街の家の修繕作業は終わっていなく、完全に扱い方をマスターしたアスターさんに頼めば、良い笑顔で「任せろ」と言ってもらえたので、安心して鑑定に集中できると言うわけだ。
さて、今鑑定料金を一括で払い、大人については知識を身につけてもらってからと言う事にして、とりあえず一番年下は赤ん坊、一番年上は20歳までの男女子供達の鑑定をしてもらった。
合わせて、260人の子供達の鑑定をしてもらった結果、とても良い才能を持つこと子供らが多いことがわかった。……ここ重要ね!
まず、テイマーが思った以上の人数がいて、10人。
そして、魔法使いが12人。
テイマー、魔法使いを除く監視役候補も絞れたし、鑑定をしてもらって正解だったな。
まあ、テイマーのうち1人は監視役候補として引き抜くけど、スライム計画も、魔法使いを増やすことも、監視計画も上手くいきそうだ。
まあ、誰をどう指導して行くかは決めたものの、本人達の意向も優先したいし、何よりももしかしたら僕が考えている以上に秘めた才能を持つ子がいるかもしれないから、密かに全員の鑑定結果をメモしておかないと足元がすくわれるかもしれないしね。
「ギンノスケ、この子達の中で、ギンノスケの母性を擽られるのはどの子?」
と聞いてみれば、ギンノスケは一人一人の様子を伺った後、気に入った子達の手首に甘噛みをしていく。
その中にはテイマーでありながら、僕が監視役候補として目をつけていた子もギンノスケのお気に入りの子であるようだ。
ふむ。この街の子供達は良い子だ、ギルも慣れ親しんだ子がメンバーに居れば過ごしやすくなるだろう。僕の部下にすると言う名目で、監視役候補の子らも僕の家に連れて行くことにしよう。
ギンノスケが気に入ったのなら、テイマーの子は竜騎士候補として考えた方が良さそうだ。
「今、ギンノスケに手首を噛まれた子達は僕の家で合宿として泊まり込みで、僕の部下候補として修行してもらう。ある一定の能力に達したらギルと同じように僕の養父に鍛えてもらえる資格を与える。
後、今から僕に肩を叩かれた子もおいで」
本当にギンノスケが気に入らない子がいれば、「ワフッ」と言って怒るだろうから、僕は安心して誰が向いているのか、考えることが出来る。
僕は迷うことなく、自分が考えた監視役候補の肩を叩いていき、ギンノスケの様子を見ながら最後の候補者の肩を叩き終える。どうやら、ギンノスケのお眼鏡に叶わない子らはいないようで安心した。
まあ、最終的には監視役に選ばれた子には、竜騎士の知識や戦い方を除く全てを叩き込んでもらうけどね。アンジュさんにもし、才能がある子がいれば知識や戦い方を叩き込んでくれるかと聞いた時、良い笑顔で、
「どんな環境にいても、才能がなくても何か秘めた力があるのなら指導するのが強き者の役目だからな、喜んで引き受けるぞ」
と言ってくれたので大丈夫だろう。
しばらくは知識面では僕が、いきなり戦い方を教えてもついていけないだろうからギンノスケに子供達の筋力、体力をつけてもらおう。
午前中は知識面の授業。午後の暗くなる前までギンノスケの担当と言うことにしよう。
ギンノスケも毒があるもの、ないものについてはなぜか完璧に答えられるので、毒があるか否かを子供達に教えてもらうことにするか。
毒がある時は「ワフッ」と良い、ない時は手首を舐めるようにと言い聞かせておくか。あと、事前に子供達にもそう言っておこう。
「テイマーの子達には後日来る、テイマーの方に指導をしてもらいつつ、学習所で学んでもらう。
魔法使いの子達には魔法だけではなく、魔力が足りなくなってもギルドに戻って来られるように体力、護身術を身につける方針でいる。
鑑定には鑑定が出来るギルドマスターの指導、魔道書使いについては指導者との交渉をしてくるつもりでいる。
だか、これだけはわかって欲しい。部下候補に上がっている子らは特別才能があるわけではないよ。
僕は皆、同じくらい秘めた可能性があると感じている。君らはまだ何色にも染まっていないキャンパスだ、君らの努力次第で自由に何者にでもなれる。
君らはたくさんの可能性を秘めている、たくさんの努力をし、ここで選ばれなかったから劣等生なわけでもないし、部下になれなくても劣等生ではない。それだけは理解していてほしい」
魔道書使いの指導者には、フォルテさんに紹介された魔道書店の店主に頼みたいと思う。この街のスラム街の子供らはギルの背中を見て育ってきたのだろう、根っからの悪い子はいない。
正直、魔道書使いの中には悪ガキがいる。でも、法に触れたことはしないし、せいぜい怪我しない程度の落とし穴に落とされるくらいだ。
絶妙に落とし穴に落ちるような策を練り、そして絶妙に怪我をしないギリギリのラインの落とし穴を作るのだ。……ここまで巧妙に落とし穴の悪戯をされると、むしろ天晴れだと感じている。
ここ重要!面白いことに、 魔道書使いの才能がある悪ガキは、なぜか落とし穴に落とす悪戯しかしてこないのである。
「魔道書使いの卵の悪ガキ!
本当は手元に置いておきたいくらい、僕の笑いのツボに入る悪戯をしてくるから気に入っているんだが、あえて手元において指導しないことにした。
魔道書の世界を知った上で、ギルとともに僕の一部として働きたくなったら、いつでもおいで? 君の巧妙な悪戯技術は、正直言って役に立ちそうだ」
まあ、実はギンノスケは根は優しい悪ガキタイプが一番気にいるタイプなんだが、才能がどうであれ、あの子だけは甘噛みしちゃいけないよと鑑定に行く前に言っておいた。
正直、不服そうな顔をしていたが、僕のおねだりを優先してくれるから、甘噛みしないでくれたけど。
「……特別視しないんじゃなかったのかよ!」
顔を真っ赤にさせながら、そう言った。気に入ったとか言われるタイプじゃないから、言われ慣れてないんだろうけど、照れ隠しの仕方がバレバレだな。
まあ、褒められ慣れてない僕も、照れ隠しの仕方が似たような感じだから人のこと言えないけどさ。
「能力はって言ったでしょ? ギルの指導、実は一生懸命受けてたみたいだけど、今の君は僕の実家いるスライムに瞬殺されるくらい弱い。
本当はね、僕とギンノスケの弟子にしたかったんだよ? ギンノスケも君みたいなタイプ、実は好きなんだよねー。それわかってたから、君を選ばないように事前に頼んでおいたんだよ。
例え、どんなに気に入っていたとしても君の可能性を潰すような真似をするほど僕は盲目じゃないからね。君は僕に指導されるよりも、あの方に指導された方が強くなるって感じたから、君に修行はつけない。だから、強くなって僕のところにおいで?
まあ、あの方の元に残るって決めたなら、まあ渋々諦めるけどさ」
そう言った後、髪の毛がぐしゃぐしゃになるようにわざと頭を撫でれば、
「……俺の居場所になってくれんのかよ」
やっと素直になってくれたので、からかうことなく真剣に答える。
「もちろん、君が望むならね」
そう答えれば、顔を真っ赤にさせた後、照れているのかそれ以上何も言わなかった。




