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『始まったアウェー戦』

************



 完全な闇の都市を迷焦たちは駆けていく。

 目指すは天界の中央、聖母マーデラス神殿。

 そこに栞がいるとメイヤは言った。

 何故ならそこがボルス召喚に適した場所だからとも。

 詳しい説明を省いたため迷焦と爆音寺はメイヤに従って行くのみだ。

 

 すぐに巨大な建造物が見えてくる。

 と、


(青白く光ってる?!)


 迷焦は目的地である神殿を見てそう心の中で叫ぶ。

 月が雲に隠れ、光無き闇の世界をそれは鈍く映し出していた。

 まるでこれからの事を告げる不穏な笑みのよう。


ーーまさか儀式はもう始まっているのか。


 尋ねようとした迷焦をメイヤが制す。

 ジェスチャーで落ち着けと伝えた彼はそのまま青白い建造物を囲う外壁によじ登って行く。

 軽やかな身のこなしで瞬く間に向こう側に行くメイヤを合図に、二人も下手ながらも音をたてまいとしがみつく。

 敷地内へと侵入し終えた三人の目に真っ先に映りこんだのは建物の中へと続く扉だった。

 建造物も巨大なら扉もでかい。

 巨人が使うのではないかと思えるほどでかく、そして、重そうである。


 しかし、三人が視線を向けたのはそれだけが理由では無い。

 ギィィという重そうな音と共に開かれる扉から姿を表す騎士が見えたからだ。


「......ガブリエル」


 迷焦は甲羅のような盾を担ぐガブリエルを見て、内側からこみ上げてくる殺意を確認する。

 何かに取り付かれたかのよう瞳の色を変える。


「アクウィール。全力で行くよ」


『待つんだ! 天界で彼らと戦闘は』


 返事を聞きもしないまま迷焦は電光石火の如くガブリエルとの距離を食いつぶす。


「ゲイ・ボルガ」


 走る合間に迷焦が発したワードで疑似創造書庫が長槍の姿に変化、そのまま光の矢となって、風を切る。

 まだ迷焦は放たない。

 盾を構えたガブリエルとのゼロ距離。

 大地をえぐり自らの勢いを殺し、ただ一点、盾を穿つ猛獣の牙を放つのだ。

 

「死ねよ。糞天使」


 迷焦は必中であるはずのゲイ・ボルガで盾ごとガブリエルを貫いてやると紫電を穿つ。

 劣化しているとはいえゲイ・ボルガとは最強の槍なのだから。

 迷焦の放つ殺戮の槍は木々のように枝分かれし、ガブリエルをアイアンメイデンのように殺す。易々と貫いたガブリエルは鎧ごと弾け、鮮血を散らす。


 はずだった。


 確かに迷焦の放った槍は甲羅の如く重厚な盾に当たった。

 でもそこから先が迷焦の予想と大きく外れる。

 なんと、大きくへこみこそすれど殺戮の槍は盾を敗れる事が出来なかったのだ。

 迷焦は忘れていたのだ。

 天界ではガブリエルの力が増すことを。

 

「な、ん」


 それだけじゃない。

 一瞬だが思考を刈り取られた迷焦に岩石のように固く重い体当たりがおみまいさせる。

 とっさに槍で体を隠すよう防いだのがこうをそうしたのか凄まじい衝撃を食らいも迷焦はすぐに起き上がる。

 本来ならここで後退するところだと思う。

 だが、今の迷焦は止まれない。

 このガブリエルを、栞への道を阻む障害として認識してしまった迷焦には排除の選択肢しか無い。

 まさしく理性の無い飢えた獣。

 迷焦は意識の全てを己のスピードのみに当て、更なる加速を図る。

 盾とはいえ全方位を防げるわけでは無い。

 そこを迷焦は狙う。

 が、向こうもそれは承知だ。

 綿密に展開されたシールドを迷の攻撃に合わせてスライドさせていく。

 隙をすくのも駄目。

 ヤケクソに迷焦は盾を力業で押し破ろうとする。

 当然出来るわけも無く、押し返される。

 ガブリエルは再び盾を構え直し、聖域を犯す者を絶対に通さんと防ぐ体勢をとる。


「我が盾は何人も貫けん最強の盾だ。愚直に突っ込むとは失策だな」


 パチンッ。

 ガブリエルが指を鳴らすと訓練された執事の如く他のガブリエルが迷焦たちを取り囲むよう集まってくる。

 もちろん、容赦はしないだろう。

 このままやられれば良くて迷焦かメイヤのどちらかが死なない程度で生かされるか。

 天界にたどり着く前のように簡単には行かないだろう。

 一人一人が本当に破格であり、迷焦と同等かそれ以上の存在なのだ。

 だが、


「んだよこの程度かよ弟。この程度の相手朝飯前だろうが」


 メイヤは髪をかき、場違いなセリフを吐く。

 

「んなこと言われたってあの装甲超固いし! 僕じゃ火力不足なんですけど。爆音寺は?」


 と、既に爆音寺が大多数のガブリエルを相手している事に迷焦はようやく気付く。


「なんてむちゃな!」


 だが、メイヤは止めさせようとはせず、迷焦の横を通り過ぎる。

 正確には盾のガブリエルへと進む。


「むちゃじゃねえよ。あいつの能力は触れる前に音かなんかで迎撃するんだろ。なら、大多数だろうが関係ねえだろうが。ようは適材適所って奴。そして、盾野郎の相手は僕。オウケイ?」


 メイヤは剣を抜くと、標的のガブリエルの上に向けてそれを放り投げる。

 一瞬、ガブリエルの視線を剣に引きつけて、その隙をつくのかと迷焦は思った。 だが、違う。

 走るメイヤだが、その手に新たな武器は無い。迷焦の攻撃はことごとく盾に阻まれた。

 どんなものも通さない無敵の城。

 それにメイヤはどう立ち向かっていくのだろうか。

 さすがに素手では挑まないだろうと思う迷焦の考えを覆し、メイヤはなんと素手で盾に掴みかかるのだった。

 それにはガブリエルも驚きを隠せなかっただろう。

 メイヤは盾の縁に手を引っ掛け、ガブリエルの顔に乗せられた足に力を入れ、無理やり引きちぎろうとする。


「止めろ小僧。ばかばかこんなむちゃな方法があってたまるか! 我ら誇りあるガブリエルから武器を取り上げるとは貴様に剣士としての誇りは無いのかッ!」


「黙ってろよ。僕のいたとこダストレーヴって呼ばれてるとこだぞ。あるとしても埃しかねえよ」


「冗談は大概に、ギャアアアアッッ」


 メイヤが奪った巨大な盾にはガブリエルのものであろう腕までついてきていた。

 メイヤは汚物のようにそれを捨てると、拳でガブリエルを黙らせる、もとい絶命させる。

 壁に激突し、そのままとなるガブリエルに向け、メイヤは言うのだ。


「僕の第二の故郷荒らしといて何が騎士の誇りだぁ? 冗談きついぜまったく」


 そして、メイヤはポケットから札を数枚取り出し、それを爆音寺のもとに投げる。


「ヘラクレス、ケルベロス、ウィルオーウィスプ、アジ・ダハーカ。地獄より召喚、んでガブリエル共を殺せ」


 爆音寺とガブリエルたちが戦う上空に巨大な門が出現する。

 そこに札が吸い込まれるや、開かれる地獄の門より亡者たちが蘇る。

 あるものはローマコロッセオで戦っていた甲冑の巨人。あるものは三つの首の犬、あるものは炎、あるものは三首の巨竜。

 それは黒き感情粒子が生み出した呪われし魂の者たち。

 ダストレーヴで運命を呪い死んでいった者たちが残した恨みの塊にメイヤが形を与えるのだ。

 

 直後の爆発。

 怒り狂う地獄の亡者たちが復讐の咆哮を上げる。

 その隙にメイヤは爆音寺を引っ張り出し、迷焦に向けて言う。


「このまま内部に侵入すんぞ」


「お、おう」


 迷焦が振り返り目にしたのは押されていく地獄の亡者たちであった。

 彼らは強い。

 でも、ガブリエルの数が多かった。

 一人、また一人とやられていく。

 と、


「おら、行くぞ」


 メイヤの声で我に帰る迷焦。

 メイヤの後に続き、門へと駆ける。

 途中でガブリエルが追いかけてきたがそれを難なくメイヤが押し退ける。

 そんな彼を見て迷焦は思ってしまうのだ。


ーー僕がメイヤみたく強ければ良かったのに。


 しかし、その考えを迷焦は捨て去る。

 考えても始まらない。

 現状出来る事に尽くした方が良い。

 前回の失敗から迷焦は多くの事を学び、嫉妬は破綻しか生まないことを知っている。

 だから迷焦は今のままで最大の効率になるよう考え、これから始まる更なる戦いの扉を潜るのだった。

 

************



 聖域マーデラス神殿と呼ばれるガブリエルとの最終戦争場所の中は一言で表すなら蜂の巣。

 内側の壁に空いた穴の全てには何かが収まっていた。

 それが発光しているのだ。

 外の光はこれだったのだろう。

 

「夢石。しかもあんなに」


 夢石が収まっている穴の壁はどこまでも高く続いており、天界を見渡す建造物は上を見上げても先が見えないほどにびっしりしている。

 ハルシオン全てのドリムや破綻者を倒しても集めきれないほどに多い。

 つまり、それがあるここはボルスを召喚させる儀式場なのだろう。

 僕はメイヤに声をかけられるまで圧巻の一言に支配されていた。


「扉を塞げ迷焦」


「了解」


 重く、人には余るほど大きい扉をメイヤが閉め終えると僕は氷魔法で簡単には開かないよう固定する。

 もうガッチガチだ。

 更に創造魔法で衝撃にも耐えられるよう補助パーツを作成していく。

 戦闘になれば僕はアクウィールの力を借りなければ二人に劣ってしまうのだ。

 そもそもあの時のように力も出ない。

 多分使いすぎたのと、ディオロスにもらった一撃がよほど効いたんだろう。

 とにかく今は支援に回ろう。

 僕はそう言い聞かせ、再び上を見上げる。


「上に行くためにはえーと」


 階段は、無い。

 そもそも翼のあるガブリエルには必要無いからか。

 ならば


「アクウィール、頼む」


『オウケイだよ』


 剣を取り出し、アクウィールを氷の巨竜の姿に戻す。

 と、


「兄貴。ほんとにすまねえ」


 ふと、爆音寺が申し訳なさそうな顔をしていた。

 ここのところ口数が少ないと思っていたがどうしたのだろうか。

 

「いきなりどうしたんだよ爆音寺。トイレか、重大な何かの告白か。出来れば前者であることを願うんだけど」


「そんなんじゃねえ。俺はあの時栞といたんだ。なのに、守れなかった。俺のせいで......すまねえ兄貴」



 メイヤに続き、アクウィールに乗ろうと足をかける迷焦。

 爆音寺は一向に乗ろうとしない。

 ここで食い止めるから先に行けとか言われても困ってしまう。それに爆音寺が謝る事では無いと思う。

 だって


「テメーが謝んななら僕はなんなんだよ。こちとら主犯格だぞ。お前の何十倍も罪があるんだが」


 メイヤが高々と宣言する、

 えばるなよ、蹴り落とすぞ主犯格。

 しないけど。

 と、僕の恨みメーターがぐんぐん上がる。

 爆音寺に至っては「え? 兄貴の兄が??」と戸惑っている。 そう言えば爆音寺はメイヤと会うのは天界が初めてだったか。

 

「まあだからあれだ。爆音寺が気にする事じゃ無いよ。それに僕だって助けられなかったわけだし。だから一緒に救おうよ」


 僕は爆音寺に向けて手を伸ばす。

 そして、終わったら共にメイヤをぼころう。

 と、僕は未だに消えない恨みを心の内だけに止めておく。

 爆音寺は躊躇しながらも、最後はこの腕を掴んだ。。

 引っ張り上げ、僕らを乗せた巨竜が勢い良く空を駆ける。

 アクウィールは勢いに乗ってぐんぐん加速していき、僕らはアクウィールにしがみついて、振り落とされないよう食らいつく。

 やがて、更に上の方の中央、天井のような広間がある事がわかった。

 しかも、縁は隙間があいており、そこから通れる。

 そこを抜けると、やはりと言うかガブリエルがいた。

 二人。

 周りに楽器を浮遊させる者と刀を二本鞘に収める者が待ち構える。

 

 

 

  


 

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