第3話
それから1週間後──。
迎えの馬車に乗りこみ、宮廷へと向かった。
馬車が停まり、この前会った従者が馬車の戸を開けてくれる。
「お待ちしておりました。ご案内いたします」
「ありがとうございます」
馬車から降りると、まるで別世界に来たような建物が広がっていた。
赤色の建物、そして金の装飾品。ありとあらゆるものが洗練されていて美しい。
さすが、皇族の住まう家だった。
「皇子はあなたが来るのを今か今かと楽しみにされております」
そう言いながら、従者は建物の中へと通してくれる。
「これから荷物検査、身体検査がありますが、女性がやりますのでご安心ください」
その言葉通り、建物の中に入ると身体検査をするために別室に通された。なにも持っていないので、服を脱がされたところでなにも出てくることはない。身体検査をされたあとで、荷物検査をしている場所へと向かった。
「どうですか?」
「あなたは今までどうやって暮らしていたのですか? あまりにも物が少ないのでは?」
「私は旅をしながら暮らしていますから。必要なものしか持ち歩きません」
荷物検査も終わり、荷物が綺麗に行李に入れられて戻される。その荷物は従者が持ってくれて、私は持つ必要はなかった。
「今までどんなところを旅してきたのですか?」
「大きな山間部で暮らす人たちのいる村や、湖の中に浮かぶ島……。たくさんあります」
「湖の中に浮かぶ島、ですか。そんな珍しいものはどこに?」
私はどこにあったか、と記憶を巡らせる。
「たしか……、湖胡国だったはず」
「湖胡国? その国はずいぶん昔に滅亡したはずでは?」
「そうなんですか? 私はそういうのには疎いもので」
「あなた、見た目に反してずっと長生きしているんですね」と従者が言う。
「そうですね。もうずっと生きています」
長いこと、一人で生きている。
友もいたけれど、友も先に死んでしまう。
妖怪たちも不老不死のものもいれば、寿命があるものもいる。
不老不死のものの多くは、修行を重ね神、もしくは神に近い存在となっているものが圧倒的に多く、私のような人間と関わりになってくれることは滅多にない。
全くないわけではないけれど、今まで仲良くしてくれたのは一人だけ。その一人でさえ、修行のために別れを告げられた。
「きっと、もう寂しくはありませんよ。皇子がいますからね」
寂しいという感情が、顔に出ていたらしい。
私は恥ずかしくなり、頬を軽く赤らめた。
そして、皇子のいる場所へとやってきた。
扉が護衛によって開かれると、遠いところで鈴のなる音がする。
その瞬間、バタバタと音がして皇子が駆け出してこっちへとやってきた。
「蓮華!」
満面の笑みで飛びついてきて、よろよろと、バランスを崩しながらもその熱い出迎えを受け止める。
「皇子、お元気でしたか?」
「もう、お姉ちゃんがいなくて退屈だったよ!」
顔をパッとあげて皇子は言う。
「そうだ! 僕がこの家を案内するよ!」
「ありがとうございます」
皇子が床に降りると、自然と小さな手が私の手を握った。
「どこから案内しようかなあ」
「まずはお嬢様の部屋に案内しなくてはなりません」と従者が言う。
「じゃあそうしよう。陸、案内して」
陸と呼ばれた従者は、くす、と笑って「もちろん」と頭を下げた。




