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皇帝陛下の不採算な溺愛~転生コンサル、契約外の執着で定時に帰れません!~  作者: 深山 凛
第3部『御前プレゼン』

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王の出迎え、あるいは最強のバディ復活

門を抜けた瞬間、網膜を焼いたのは、朱雀大路(すざくおおじ)の果てに沈む溶岩のような残照だった。

その光の渦を背負い、石畳に長い影を落として立っていたのは、一人の男。







李宵(リ ショウ)




彼は私を視界に入れた刹那、皇帝としての絶対的な静止を自ら破棄した。

周囲を固める近衛兵の視線や、不文律(プロトコル)という名の作法を完全に無視し、私の元へと駆け出そうとする。




「鈴……!」




震える喉から(こぼ)れ落ちたのは、執着と安堵が凝縮された、重く、熱い音塊。

近づくにつれ、彼の「非公式な疲弊(オフ・デューティ)」が(あらわ)になる。




整えられているはずの赭黄の(ほう)には微かな砂塵(さじん)が付き、黄金の瞳の下には、私不在の夜を幾度も超えてきた証――濃い隈が刻まれていた。

私の指先が、その熱を求めて不随意に痙攣(けいれん)する。

本能が、彼の胸という名の「聖域(セーフティ・ゾーン)」に飛び込めと、脳内に警告(アラート)を鳴らし続けていた。




けれど。

私は、踏み出しそうになる足を自律神経の制御下に置き、背筋を垂直に固定した。




私の背後には、地獄から帰還し、再起動(リブート)の合図を待つスペシャリストたちがいる。

そして眼前に広がるのは、腐臭を放ち、機能不全に陥った「不採算部門(パレス)」。




「……陛下。感動の再会は後回しです」




私は、監獄の石床で研ぎ澄ませた監査役(オーディター)(かお)で、彼を真っ向から射抜いた。




「まずは業務復旧(リカバリ)が先決です。ゴミの焼却処分、洗濯物の回収ルート再編、食材の緊急調達……やることは山積みです。ロマンスに(うつつ)を抜かしている暇はありません」




李宵の動きが、物理的にフリーズした。

突き出されたロジックに、駆け寄ろうとした慣性が押し留められる。

数秒の真空地帯。




やがて、彼の肩が小さく上下し始め、肺の底からこみ上げるような振動が空気を震わせた。




「ははは! ……そうか。そうだったな」




彼は自嘲気味に、けれど、この上なく誇らしげに目を細めた。

その視線は、もはや私を「守るべき弱者」としてではなく、唯一対等に背を預けられる「最強の資産パートナー」として定義し直していた。




「お前は、そういう女だった。……俺の、世界一有能で、どうしようもなく愛しい監査役だ」




絡み合う視線の温度が、数百度まで跳ね上がる。

今はまだ、物理的な接触という名の報酬は支払わない。




けれど、この「信頼」という名の共有メモリは、どんな抱擁よりも強固に、私たちの魂を同期させていた。




「……よくやった。本当に」




すれ違いざま。

龍脳(りゅうのう)の香りが、監獄の悪臭を強引に上書きし、彼の低いバリトンが鼓膜を直接揺さぶる。




「だが、俺をここまで待たせた罪は重いぞ。……すべて片付いたら、たっぷりと『追徴課税(ついちょうかぜい)』を取り立ててやるからな」




その、耳朶(じだ)を溶かすような粘り気のある(ささや)きに、私の背中を電気的な戦慄が走り抜けた。

私は不敵な弧を唇に刻み、彼を見返した。




「望むところです。……覚悟しておいてください」




私は彼という熱源をあえて突き放し、腐臭漂う後宮へと足を踏み入れた。




さあ、仕事(クリーンアップ)の時間だ。

この国のOSを書き換え、私たちの「安住の地」を物理的に構築するために。

読んでいただきありがとうございます!

もしよろしければ、「リアクション」や「ご感想」をいただけると嬉しいです。


また明日[19:00]にお会いしましょう。

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