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【完結】皇帝陛下の不採算な溺愛~転生コンサル、契約外の執着で定時に帰れません!~  作者: 深山 凛
第3部『御前プレゼン』

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終わらない業務提携、あるいは永遠の夜明け

冬冬(トントン)――、冬冬(トントン)――。




暁光を切り裂くように、長安の各門で鳴らされる「曙鼓(あけぼのつづみ)」の振動が、地を()い、石壁を伝って、私の意識の表層を揺さぶった。

かつて、この音は巨大な檻が口を開ける不吉なノイズだった。



けれど、昨夜の寵愛の熱を吸い込んだ薄絹の(とばり)の内側で聞くそれは、ただの「市場しじょう開場通知オープンアラート」に過ぎない。






格子窓の隙間から、白磁のような鋭い朝光が射し込み、宙に舞う埃を金粉へと変えていく。

胸の上に置かれた腕の、ずっしりとした確かな重み。



李宵の、規則正しく繰り返される肺の律動と、眠気を含んだ肌の、焦がした龍脳のような熱が、私の半身を完全に支配していた。






視線を移せば、そこには皇帝という名の「最強の意思決定者」の仮面を脱ぎ捨てた、無防備な貌があった。

眉間に刻まれていた責任という名のデッドロック()は解除され、今はただ、満ち足りた静謐な曲線を描いている。



(……ああ、幸せだ)



言葉にした瞬間に霧散してしまいそうな、圧倒的な充足(サープラス)

喉の奥が熱い質量を伴って狭まり、網膜の裏側がじわりと熱を帯びて潤んでいく。



これからも、帝国の「不採算部門」の整理や、利権に固執するボトルネックたちの反撃など、想定されるリスクは枚挙にいとまがない。

国という巨大なシステムの再設計(リ・エンジニアリング)は、一瞬の油断も許されない。



けれど、私の思考回路に迷いという名のノイズは一切走らなかった。

この腕の中に、私という存在を「唯一の正解」として承認し続ける彼がいる限り、どんなバグも「最適化」できるという確信だけが、脊髄を貫いている。






私は、首筋に残る微かなしびれを意識しながら、そっと身を起こした。

彼の、()りたての青みが僅かにのぞく頬へと、羽毛が触れるような温度の唇を寄せる。



「……おはよう、私の皇帝陛下」



彼が、睫毛を震わせて琥珀色の瞳をうっすらと開き、焦点の合わない視線で私を捉えた。

やがて、その唇の両端が雪解けのようにふわりと緩み、私という「聖域」を確認するように貌が(ほころ)ぶ。



「……おはよう、俺の尚書令」



彼は、私の右手を強引に自身の胸元へと引き寄せた。

その薬指の付け根に、熱い刻印を刻むように唇を押し当てる。



指先に伝わる彼の心拍の振動。

昨夜の「再契約」の余韻。



それは、どんな物理的な翡翠ひすいの指輪よりも重く、私をこの国へと、そして彼という名の幸福へと永久に繋ぎ止める、不可逆な「終身契約」の証だった。






開け放たれた窓の向こうには、どこまでも吸い込まれそうな蒼天(そうてん)

さあ、今日もこの美しい世界を「管理」しに行こう。



愛という名の実利(リターン)を、共に分かち合い続けるために。






扉の向こうで、巡邏兵(じゅんらへい)(よろい)が擦れる「カシャリ」という微かな生活のノイズが響いた。

私たちの、新しい人生(クォーター)のキックオフを告げるかのように。

最後までお読みいただきありがとうございました!

『皇帝陛下の不採算な溺愛~転生コンサル、契約外の執着で定時に帰れません!~』はいかがだったでしょうか?


私にとって初めての長編小説だったので、アクセスや日々みなさまからのリアクションを励みにしておりました。

本当に本当にありがとうございます!


この作品は中世中国の唐をモデルにした国に、現代のバリキャリコンサルタントが転生したらどうなるんだろうと思い、アイデアを出して創作しました。

まぁコンサルタントとはいえ、この作品に出てくるように専門用語や横文字を出しまくっていると少々おかしいですよね。世界観を作り込むためとはいえ、こんなに横文字バンバンな人はルー大柴さんくらいしかいないと思いますよ!



次作も鋭意製作中なので、もし宜しかったら次作もお楽しみにお待ちください。



末尾になりますが、ここまでお読みいいただき本当にありがとうございました!

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