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浮気性の婚約者に「もげてしまえ!」と言ったら古の呪いが発動しましたーー腹黒王子の甘く執拗な検証生活  作者: 櫻庭希翠


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プロローグ 婚約者のアレがもげました


ご訪問ありがとうございます!


浮気現場に遭遇した公爵令嬢が、怒りのあまりトンデモナイ魔法を暴走させてしまう溺愛ラブコメです。


少しでもクスッとしていただけたら、ぜひ最後までお楽しみください!


「――もげてしまえ!」


 私の怒りの叫びは高価な調度品や壁を震わせ、白亜の豪邸の天井を突き抜けて邸宅全体へと雷鳴のごとくとどろき渡った。


 ……ええ、言いましたとも。


 私、ヴァルハイト公爵家のジェネヴィーヴが、婚約者の第一王子ユリシーズに向けて確かに言いました。


 あの言葉が本気じゃなかったなんて綺麗事を言うつもりはない。だって、つい一週間前に神殿で永遠の愛を誓いあったはずの彼は『浮気』の真っ最中だったんだから。



 ◇


 麗らかな春の日の午後、婚約時の決め事に従ってユリシーズの邸宅でお茶会をするために、私は侍女を伴ってサロンへと続く扉を入った。


 第一王子の結婚後の邸宅として十分な、白亜の豪邸。


 ――そう、ここは結婚後、私とユリシーズが共に暮らす予定の新居だ。


 調度品の選定や庭園の整頓など、ヴァルハイト公爵家の名に恥じぬよう、未来の夫となる彼と穏やかな家庭を築くための準備を進めていた場所。


 たとえ政略結婚で、そこに甘い恋情がなかったとしても。


 互いに敬意を払い、公爵令嬢と第一王子という立場に相応しい誠実な関係を築いていく――それが、貴族としての義務であり約束だと思っていた。


 ……なのに。


「……お嬢様、あの……」


 先を行く侍女ロッティが真っ青になり、力なく首を振る。私の方を振り返って静止しようとした。


「ロッティ、邪魔をしないで」


 そう言いながら私は侍女を押し除けた。だってもう、わかっていたから。

 扉を開ける前からうっすらと聞こえていた嬌声。その衣擦れの音、激しい息遣い――。


(……よりによって、私たちが暮らすはずのこの家で? しかも、私が選んだソファの上で?)


 胸の奥で、冷たい怒りがふつふつと煮え立っていく。


 私がこの家に注いだ時間も、公爵令嬢としての歩み寄りも、すべてを踏みにじられた。私への侮辱にとどまらず、ヴァルハイト公爵家そのものを舐めきった浅はかな裏切り。


 ――許せるはずがなかった。


「きゃあぁッ!」


 私の姿を見た女――侍女として奉公に上がっている伯爵令嬢マリアンヌがワザとらしく叫んで、私の婚約者に抱きついた。


 自慢のストロベリーブロンドを散らすマリアンヌの上に乗った半裸の婚約者ユリシーズが、太陽の光を編み上げたような金髪をかきあげながら気怠げに私を振り返り、青空のような青い瞳を細めた。


「あ、早かったね、ジェナ。もう少しで終わるから……」


(……せめて、そこは。『これは違うんだ!』じゃないかしら?)


 黒髪、黒目の私とは正反対。ユリシーズは華やかで誰よりも美しい。もちろん、私たちの婚約は家同士の決め事だから恋情など微塵もない。だけど、だからこそ、結婚前からの不貞が女神様の祝福を裏切る重大な契約違反だとは思わないのだろうか。見てくれだけで、なんて頭の足りない第一王子だろう。


「――もげてしまえ」


 私の声とは思えない低い声が、唸るように出た。そう、ここで冒頭に戻る。


「え?」


 ユリシーズがキョトンと私を見た。


「もげてしまえ!」


 キィィン……と耳鳴りのような音。地鳴りのような深い振動。


 私たちの周りに、うっすらと黒煙が漂い始める。


(え……なにこれ?)


 わたしが言葉を失っていると、ユリシーズとあばず……いえ、奔放で非常識な令嬢マリアンヌが真っ青になって叫び出した。


「やだぁッ! なに!?」


 あ、ロッティが倒れた。気丈な侍女もこの惨状に耐えきれなかったらしい。気を失えるものなら、私だってそうしたい。


「と、取れッ……取れたぁ!!」


 こざっぱりとした股間を指差して、私に見せようとするユリシーズ。見せられても、困る。


「早く、ズボンを上げてくださいませ」

「それどころじゃない、ジェナっ! 僕の、僕の……ッ」


 えーっと、つまり、この惨状をわかりやすく説明すると。


 ……要するに、婚約者のアレがもげました。




ここまでお読みいただきありがとうございます!

はい、見事に『もげて』しまいました。

散々な不貞現場ですが、ここから事件はさらに明後日の方向へと転がり始めていきます。

次回――今夜20:00!

「浮ついた婚約者なんて、必要ですか?」


腹黒第二王子登場します!


「面白そう!」「アレがどうなったのか気になる!」と思っていただけましたら、下部の【★で評価】や【ブックマーク登録】をしていただけると執筆の大きな励みになります!

よろしくお願いいたします!




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