◆ 幕間 師匠への報告(二)
師匠。報告だ。星削りができた。
工具箱のふたを開けて、まずそれを言う。五つ目が灯った。ちゃんと、四つ目の次にだ。マルタの婆さんにも、やっとあんたの弟子らしい音になったって言われた。あの婆さんの耳、どうなってるんだよ。
あんた、昔から石を削るたびに鳴らしてたな。俺は癖だと思ってた。あれも仕事の一部なら、もっと分かるように教えてくれよ。十四のガキに、音まで覚えろってのは無茶だろ。……まあ、できたからいい。
それから、魔力酔いが出た。あの令嬢が倒れたから、教わったとおりに魔力抜きをした。師匠が俺にやってくれたのと同じだ。仕事だからな。
手袋を外したのも仕事だ。布越しじゃ効かない。抱きとめたのも仕事だ。あのまま倒れたら頭を打つ。これから毎日手を合わせることになったけど、治療だ。仕事だ。本人だってそう言ってた。なのにミアのやつ、ずっと変な顔をしてた。
今、何回仕事と言った。数えるなよ、師匠。
十二のとき、あんたに手を握ってもらったのを思い出した。熱が下がるまで、ずっと離さないでいてくれただろ。あのときは、あんたの手が冷たくて助かった。今日の手は……。
いや、その話はいい。
指の布を巻き直そうとして、作業台から新しい布を取った。手のひらに当てたところで、指が止まる。傷はいつもどおりだし、特に変わったところもない。
俺はしばらくその手を見てから、布を机の上に置いた。今夜は、まだ巻かなくていい。




