エピソード3
貴族のご令嬢冒険者来店
「シャルさんは、このピーラーで野菜の皮をむいてください」ピーラーをシャルさんに手渡す。
「はい!」
シャルさんにひととうり仕事を教えた後、キッチンにて、二人で野菜の皮むきをしている。
「それにしてもシャルさん、物覚えがいいですね」
記憶力がいいのか、あっという間に覚えてしまった。
「そうなんですか?」
「僕なんて何度もやらないと覚えられないよ」
色々な野菜の皮をむいていて、ふと思った。
あっ、そうか・・・店が移動しているって事は、シャルさんと一つ屋根の下で暮らさないといけないんじゃないか?
「シャルさん、一緒に暮らしませんか?」
「えっ!・・・・・・あの、プロポーズ・・・ですか?・・・///」頬が赤くなっている。
「えっ!?あっ、間違えました、一緒に暮らすのですが、大丈夫ですか?」
「な、なんだぁ・・・大丈夫です・・・」あれ?ガッカリしてる?
「あー、そうだ!、どうやらこのお店ダンジョン内を移動してるらしいんです」
「え、それでは、お店の外に出てる時に扉を閉めちゃうと移動しちゃったりとか・・・・あるんでしょうか?」
「うーん、かもしれません」
カランカランと入り口の扉のベルが鳴る。
「あっ!いらっしゃいませー!」と入り口に早歩きで向かうシャルさん。
「え!人!?モンスター!?」知らない少女の声がする。
「あっ、モンスターだけど、違くて・・・えっと・・・」
「モンスターね!切るわ!」と剣を抜く音が聞こえた!!
「待ったー!!!」とシャルさんの前に出る。
剣を抜いてる少女は高貴な軽装戦士の格好をした、強気な可愛い感じの娘だった。
「ゴブリンも出たわ!ルード!」
「レリー、ここがギルドのお知らせがあったお店だと思うよ」と少女の後ろから杖を持った、普通なローブを着た美少年が出てきた。
「えっ?あ!、確か似てるけど・・・ゴブリンじゃないわ!」
リディアさんと同じ反応だ。
「と、とりあえず、一緒にもう一度言おうか」とシャルさんに問い掛ける。
「はっ、はい!」
「いらっしゃいませ!」と二人で笑顔で言う。
「うーん、影の娘は可愛いけど、ゴブリンの方は醜いわね!」グサッ!と言葉の刃が僕の心臓をひと突き。
「レリー、思ったことをすぐ言ってはいけないよ」
「え?ダメかしら?」
「い、いえ、いいんです・・・」大丈夫、僕は大丈夫だ。
「わ、私は好きですよ!ゴブさんの笑顔!」
「ありがとう、シャルさん」天使!天使がいる!
「入っても大丈夫でしょうか?」とルード君が聞いてくる。
「どうぞ、武器を預ける場合は、そこの収納ロッカーにどうぞ」とロッカーに手で促す。
「何これ?見たことないわ、どうやって使うのかしら?」
「この取っ手を引いて、ロッカーの扉を開けます、剣を中に入れて扉を閉じます、そうしたらこの鍵を掛けてから抜いて、手首に、鍵が付いてるバンドを付けてくださいませ」シャルさん使い方を説明する。
「出る時にこのカギを返して武具を取り出すってことですね」と、ルード君。
「へぇー、武具だけじゃなく道具袋も入れられそうね!」と、レリーちゃん。
そうか、武器収納ロッカーって書いてあったけど別の物もはいるか。
二人とも収納ロッカーを使うようだ。
「お好きな席にどうぞ」とシャルさんが言う。
「レリー、はどこがいい?」
「そうねぇ、ここがいいわ」とテーブル席に座るレリーちゃん。
レリーちゃんの向かいの椅子にルード君が座る。
「お水とメニューです」と、シャルさんが二人分の水とメニューをテーブルに置く。
「水は頼んでないわよ?」
「あっ、お水は無料です」とシャルさん。
「え!、いいんですか?」とルード君。
「ええ、大丈夫ですよ」
レリーちゃんとルード君は、水を一口飲む。
「うわぁ!冷たくて美味しい水ね!ねえ!ルード!」
「そうだね!氷も入ってるのに無料なんて・・・採算はとれるのかな?」
仲のいい・・・似てないから・・・幼馴染?
「二人は、幼馴染とかですか?」
「いえ、従姉弟で、レリーの方が歳が一つ上です」と、ルード君。
なるほど、従姉弟か。
レリーちゃんは、メニューを見ながら「私は!このステーキにするわ!」
「ガーリックソースとバジルペッパー、どちらになさいますか?」とシャルさんが言う。
「うぅん・・・両方でもいいの?」
「ゴブさん、両方でも大丈夫でしょうか?」
「味が混ざっちゃうのであまりお勧めはできませんね」
「そう・・・でも、どっちも気になるわね」
「じゃあ、僕も頼んで半分にしようか」
「そうしましょう!」
「焼き加減は、レア、ミディアム、ウェルダンがありますがいかがいたしましょう?」と、シャルさんが言う。
「弱火、中火、強火な感じでしょうか?」
「ええ、焼石が付きますので後で自分で焼くこともできますよ」と、シャルさんが言う。
「じゃあ、ミディアムで」
「私も」
「ミディアム二つですね、ライスとパンは、どちらになさいますか?」と、シャルさんが言う。
「ライス?」レリーちゃんが言う。
「お米っていうものらしいです」
「じゃあ、僕はパンにするよ」
「じゃあ、私はライスで!」
「あっ、それと、このコーラというのもください」と、ルード君が言う。
「何それ?」
「ドリンクの所にあったよ」
「どれどれ・・・コーラって真っ黒ね・・・どういうものなの?」
「口の中で弾ける甘い飲み物です」
「そう・・・じゃあ、私もそれを頼むわ」
「ドリンクは食前、食後どちらになさいますか?」と、シャルさんが言う。
「甘い飲み物なので僕は後でお願いします」
「私も後でいいわ」
「かしこまりました、少々お待ちくださいませ」と、シャルさんが言う。
シャルさんとキッチンに向かう。
「では、鉄板プレートを乗せる木の板をお願いします」
「はい!」
十五分後
「出来ました、シャルさん一つお願いします」
「はい!」
二人で、トレイでレリーちゃん達の席にステーキとライス、パン、取り皿、ナイフ、フォークを持っていく。
「お待たせしました、ステーキです」と、テーブルに置く。
「いい匂い・・・凄く美味しそうね!」
「うん、家の骨付き肉とは全然違うね」
「この取り皿でステーキを分けてくださいね」
「はい」と、レリーちゃんとルード君がナイフでステーキを切る。
「えっ!スゥっとナイフで切れるなんて」
「ほんとね!家のだと、何度かナイフ引かないといけないのにね」
取り皿でステーキとライス、パンをお互い半分づつ交換する。
レリーちゃんとルード君は、お祈りみたいなのをしてステーキを切って一口食べる。
「ん!・・・・・・家の負けね」と、レリーちゃんが言う。
「うん・・・圧倒的に・・・ね」と、ルード君が言う。
「どうかしましたか?」
「いえ、レリーの家で出る料理の違いに驚いてしまいました」
「ええ、口に入れた時の味の刺激が・・・たまらないわね!」
「うん、凄く美味しいです!」
「ありがとうございます、ごゆっくりどうぞ」と、シャルさんとキッチンに向かう。
「うう・・・凄く美味しそうでした、ステーキ」
「後でシャルさんにも、まかないで作るよ」
「本当ですか!楽しみです!」
ニ十分後
「そろそろ、コーラを持っていこうか」
「はい!」
シャルさんは、コーラを二つトレイに用意して持って行く。
「失礼します、食後のコーラです」と、レリーちゃん達のテーブルに置く。
「泡立ってて・・・真っ黒ね・・・」
「大人が飲んでるエールみたいだね」
「食器を下げてよろしいでしょうか?」
「はい、お願いします」
食器を持ってキッチン来るシャルさん。
「綺麗に食べてくれましたよ!ゴブさん」
「うん!料理人、冥利に尽きるね」とても嬉しい。
「レリーちゃん達と話しをしようと思うんだけど、シャルさんもどうですか?」
「はい!、私もお話したいです」
コーヒーを二つ用意して持って行く。
「失礼します、話させてもらってもいいですか?」
「僕は構わないけど、レリーは?」
「私もいいわ」
「どうぞ、お座りください」と、ルード君が手で空いてる椅子に促してくれる。
「ありがとうございます」と、コーヒーをテーブルに置くき、ルード君の隣の椅子に僕が座り、レリーちゃんの隣の椅子にシャルさんが座る。
「僕は、護武 凛太郎です」
「シャルです」
「レリー グラディスよ」
「ルード ライネルと申します」
「で、二人って何?モンスター夫婦?」レリーちゃんが言う。
「夫婦!・・・///」両手を自分の頬に当て顔を赤らめてチラッとこちらを見てくるシャルさん。
「あっ、いえ、店主と従業員ですよ」
「そんな直ぐ否定しなくても・・・」と、拗ねてる様子のシャルさん。
「それで、なぜダンジョンの中でお店を?」
「ああ、神様に店ごとダンジョンに放り込まれちゃったんだよ」
「ああ、・・・なるほど、ワーナリ様ですか」
「あっ、知ってるんですね」
「ええ、時々突拍子の無いことをする神様です」
いろいろやってるのかワーナリ様。
そういえばリディアさんがまた来るって言ってたけど、店が移動してるって事は・・・。
「レリーちゃんとルード君は、リディアさん、リディア エバンスさんって知ってますか?」
「レリーでいいわよ」
「僕もルードでお願いします」
「じゃあ、僕の事は」と、言おうとしたら、レリーに途中で切られた。
「分かってるわ!ゴブリンね!」
「レリー、人に対してゴブリンはあまりにも」
「えー、でも自分でもゴブリンって名乗ったじゃない」
「あっ、いえ・・・ゴブリンでいいんですよ・・・」うん、諦めよう。
「それで、リディアさんでしたね、知ってますよ、数少ないゴールド級の冒険者ですからね」
「凄いわよね!リディアお姉様、あのビキニアーマーは・・・・・・似合ってるけど・・・・・・うん」
「うん・・・目のやり場が困る感じがね」と、ルードの顔が少し赤くなっている。
「えー、その割には、チラチラと見てるわよねルード」
「えっ!、あ、いや、それは・・・」目が泳ぎ、焦る様子なルード。
僕は、ルードの肩に手を置き「分かる、あれは・・・見ちゃうよね」
「うぅ、ビキニアーマー・・・私にも似合うでしょうか?」と、シャルさんが言う。
「うーん、シャルさんは、今のウェイトレス服の方が似合うと思うな」
「ええ!私もそう思うわ・・・ちょっと私も着てみたいって思うもの」
「僕もそう思います、それに、レリーの屋敷のメイド服より可愛い感じでいいですよね」
「そ、そうですかぁ・・・///」と、嬉し恥ずかしがっている。
「それで、リディアさんに店が移動してるって、伝えて欲しいんだけど、お願いできますか?」
「ああ、リディアさん知ってますよ」
「え、そうなのかい?」
「ええ、このお店があるってことを確認するために、リディアさんと冒険者が何人か行ったけど無かったと聞きました」
「汚物・・・汚物が食べたいの・・・ゴブリンの汚物が食べたいのって、最近言ってるわね」
リディアさん・・・ビーフカレーなんだけどな。
「ここにお店が有ると伝えますね」
「それなんだけど、この店、ダンジョン内をなんかのタイミングで移動しちゃうらしいんですよね」
「それは・・・大変ですね」
「あら、じゃあ、偶然見つけるしかないのね」
「ええ」
「僕達が出る場所も移動してたりして・・・」と、ルードは不安げな顔をしている。
「何か問題あるの?」と、レリー首を傾げる。
「外に出たら深い階層だったら・・・敵が強い」
「ああ・・・まずいわね」
「そ、その時は移動するまで留まるのはどうでしょうか」シャルさんが言う。
「そうだね」
「その時はお願いするわ・・・そうだ、コーラ飲んでなかったわ」と、コーラを飲むレリー。
「ん!ゴクッ、ピリピリして凄く甘いわ!」口を抑えて驚く。
「え?、どれどれ、ゴクッ、ん!これは・・・甘くて美味しい!」ルードも驚いている。
「さらにバニラアイスを乗せたコーラフロートもありますよ」と、シャルさんがオススメする。
「バニラアイス?」と、レリーが言う。
「牛乳にバニラエッセンスを加えた冷たいデザートです」
「牛乳?バニラ?よくわからないけど、それを頼むわ!」
「かしこまりました、ルードはどうですか?」と、シャルさんが言う。
「僕は・・・・・・いや、一つお願いします」
「はい、バニラアイス、二つ持ってきますね」と、シャルさんがキッチンへ向かう。
少し経ち、シャルさんがバニラアイスを二つとアイス用スプーンをトレイで持って戻ってくる。
「お待たせしました、バニラアイスです」と、テーブルに置く。
レリーは、スンスンとバニラアイスを嗅ぎ「甘い、いい香りね」
「うん、何て言うか・・・落ち着く香りだね」
ルードはバニラアイスを一口「ん!本当に冷たい!なめらかな濃厚なミルクが溶けて、口いっぱいに・・・・・・」と、目を閉じて味わっている。
「じゃあ、私も」と、レリーも一口。
「凄いわ!・・・こんなにも美味しいデザートがあったのね」
作ったかいがあったな。
十五分後
二人は会計を済ませ入り口の扉を開け外を確認する。
「入った時と同じ場所ね」
「うん、じゃあ行こうか」と、出て行こうとする。
「あ、待ったー!」と、呼び止める。
「どうかしましたか?」
「武器忘れてますよ」
「あっ」
「あっ」と、忘れていた様子の二人。
「つい、美味しさの驚きの連続で忘れてたわね」
「そうだね」
二人はロッカーから武器を取り出して「あれも忘れてたわ」
「あれ?」
「ギルドのお知らせにあったじゃない」
「ああ、あったね」
「どうかしましたか?」
「ゴブリンに孕まされたわ!」
「ゴブリンに孕まされました」
「え?」な、なんだ・・・リディアさんも言ってたけど、この世界のご馳走様ってこれなのか?
「あ、ああ、ありがとうございます、またお越しくださいませ」引きつった笑顔で言う。
「本当に喜んでいるわ」
「うん、本当だね」と、コソコソと何か言っている。
「レリー、ルード、また来てくださいね」と、シャルさんが言う。
「ええ!、また会いましょうシャル」
「はい、必ず」
終わり




