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チョーコー!朝鮮高校喧嘩列伝改  作者: 姜公紀


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東京チョーコーサッカー部・ソク・ソンミン part3

東京チョーコーサッカー部監督・キム・ミョンフン。

東京チョーコーサッカー部を、1971年から1987年まで率いた、伝説の監督である。

戦後、GHQによって朝鮮学校の運営母体であった朝鮮連盟が解散させられた事がキッカケとなり、東京の朝鮮学校は、公立化。

東京都立朝鮮人学校に変更する事になった。

その都立時代の3年間は、全国高等学校サッカー選手権大会への参加が認められ、1955年、都立朝鮮人学校サッカー部は、圧倒的強さで東京予選を勝ち抜き、第33回全国高校サッカー選手権大会に初出場。

その大会で在日コリアンの超攻撃的サッカーを披露。

そのアグレッシブなプレースタイルで勝ち上がった都立朝鮮人学校サッカー部は、初出場で見事ベスト4(3位)という快挙を成し遂げた。

その快挙は、在日コリアン社会に勇気と希望を与え、在日朝鮮人教育の歴史にも多大な貢献・影響を与えたのであった。

キム・ミョンフンは、その快挙を成し遂げたチームのエースであった。

その全国大会で名を売ったキム・ミョンフンは、中央大学に進学。

そこでも中心メンバーとして大活躍。

中央大学サッカー部を日本一へと導いた。

大学卒業後は、在日朝鮮蹴球団の創設メンバーの一人として活躍。

対日本人サッカーチーム相手と鎬を削りあっていた。

そして、現役引退。

引退後は、指導者の道に進もうと決意。

母校の東京チョーコーに戻り、現在に至るのであった。

1960年代のチョーコーサッカーは、基本、圧倒的フィジカルと運動量を武器に、オフェンス・ディフェンス時でも激しく戦う超攻撃的サッカーであった。

チョーコーサッカーの凄い所は、その超攻撃的サッカーと同時に、パスを細かく繋ぎながら全員が連動して動きゴールをもぎ取っていく、そういう連帯感と緻密さを備わっている点にもあった。

在日コリアン同士としての絆の強さがあったればこそのチョーコー独特のサッカースタイルが、それを可能にさせていた。

既に、最強を誇っていた東京チョーコーサッカーに、1971年に監督として就任したキム・ミョンフンは、そのチョーコーサッカーをさらに1次元上に引き上げた。

従来の超攻撃的サッカーに加え、当時、戦術の最先端を行っていた、東欧圏のユーゴやチェコの戦術をチームに取り入れたのだ。

その世界最先端のサッカー戦術を取り入れる事ができたのは、1980年、平壌で開かれた、FIFA主催のコーチングスクール(指導者は、ユーゴのロス五輪代表監督・イヴァン・トゥプラック)に在日朝鮮人という立場ゆえに参加できたことが大きかった。

持ち前の肉体的頑丈さを生かした超攻撃的サッカーに、世界最先端のサッカー戦術を日本でいち早く取り入れた東京チョーコーサッカー部の快進撃はすさまじく、静岡県清水市(現・清水区)で日本全国の強豪高校サッカーチームが集い鎬を削る招待親善試合「清水高校サッカーフェスティバル」でも、他の強豪を抑え、1986年までの間に、見事二度優勝を果たしている。

その姿は、まさに「影の日本一」という称号にふさわしい大活躍ぶりであった。




1978年 10月下旬 東京朝鮮中高級学校 応接室 夕方


「ソンミンに紹介したい人がいてね。富士丸サッカー部監督・八重樫誠司さんだ」


キム監督は、向かいに座っている八重樫のために、日本語で話し始めた。


スクッ。


キム監督の紹介に合わせるように、ソファから立ち上がった八重樫誠司(45歳)は、ソクに歩み寄りながら右手を差し出した。


「富士丸サッカー部監督・八重樫誠司です。ソクくん、どうぞよろしく」


ソクよりも5cmほど身長が高いが、少し細身の日本人は、ソクに対して笑顔を向けながら挨拶した。


「はじめまして。東京チョーコーサッカー部のソク・ソンミンです。よろしくお願いします。」


ソクは、八重樫が差し出した右手を、右ひじに自身の左手を添えながら右手で握り返した。

目上の人に対して、敬意や丁寧さを示す、朝鮮の握手をする際のマナーである。


「立ちながらもなんなので、この後の話は、座りながらでどうでしょうか?」


キム監督が、八重樫に提案する。


「そうですね。では・・・・・・」


キム監督の言葉に頷きながら、ソファに座る八重樫。


「ソンミンも、ここに座りなさい」


キム監督が、ソクに自分の横に座るよう指示する。


「分かりました」


ソクは、言われるがまま、キム監督の横のソファに座った。


(富士丸サッカー部って、日本サッカーリーグ2部に所属する、実業団チームじゃないか)


ソクは、サッカー少年らしく、海外だけでなく、日本のサッカー事情にも詳しかった。

ソクは、向かいに座っている八重樫誠司を観察しながら、もしかして、その実業団チームが自分に用が?と思い始めた。

そんな事を考えながら、ソクは、表面上は冷静を装っていたが、内心興奮で胸がいっぱいであった。

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