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チョーコー!朝鮮高校喧嘩列伝改  作者: 姜公紀


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大商大応援団長・原田重道vs大阪チョーコー2年・リー・ソンウ 鶴橋駅での決闘 part2

「何がおかしい!」


原田が突然激怒。

大声を出した。


(あら、何で笑ったのバレたんだ?)


リーは、心の中で原田の汗でビチャビチャになった白シャツを笑っていたのだが、内面の笑いが顔にも表れてしまっていたのだ。


ピキピキ。


原田の顔がどんどん鬼の形相に変化していった。


スゥゥゥー。


鬼の形相になっていた原田が、急に大きく鼻で息を吸い始めた。


(?)


それを訝しげに見るリー。


バッ!


鼻で息を吸い終わると、両腕を素早く顔の高さ辺りでクロスさせた。


「コォォォォー!コツ!」


大きく息を吐きながら、顔の前でクロスしていた両腕を、呼吸と連動させるようにゆっくり開き、腰のあたりまで腕をおろしていった。

伝統派空手の精神統一法、息吹である。


「痰でも詰まってんのか?おっさん」


それを見ていたリーは、原田を茶化す。

だが、チョーコーにある空手部での練習を見学した事があるリーは、あれが空手の型の一つである事を知っていた。


ザッ。


息吹を終えた原田は、両足をガニマタに開き、左手を前に、右手を自身の丹田付近に落とし、身体全体を上下に揺らし始めた。


「ヨイショー!」


伝統派空手独特の構えを始めた原田は、気合十分。

リーに向かって気合の雄たけびを発した。

もちろん、自身に向けて気合をいれるという意味でもあった。


「東大阪で暴れれるのも今日が最後じゃ!リー!往生せいや!」


スゥ。


原田が構えるのに合わせて、リーも自然と両手を肩のあたりにまで上げ、サウスポースタイルのファイティングポーズをとった。

リー・ソンウは、左利きなのだ。


「フゥフッ」

「・・・・・・」


鼻から吸った息を丹田へ、丹田に溜めた空気を口から小さくかつ細かく出して攻撃のタイミングを見計らう原田と、静かにファイティングポーズを取るリー。

喧嘩四つで向かい合う両者。

数人の野次馬も息をのんでいた。


(自分から身体を低くしてくれて助かったぜ)


リー・ソンウは、感謝した。

原田がガニ股になった事で、原田の厳つい顔面がリーの胸辺りにまで下がり、リーのパンチが非常に当たりやすそうな高さであったからだ。


(ムッ・・・・・・こやつサウスポーか)


原田は、リーの構えにやりづらさを感じていた。


(だが、漢・原田重道!朝鮮人に負けるわけにはいかん!)


身体を上下し続ける原田に、サウスポーでファイティングポーズの構えのまま静止し続けるリー。

お互い相手の動きを警戒して中々先にしかけない。


「オイショー!」

「・・・・・・」


気合を入れながら上下する原田。

相変わらず無言のリー。

同じ打撃系とはいえ、戦闘スタイルはまるで真逆であった。


(反応せんな・・・・・・)


原田は、自身の気合にも平然としているリーの姿に、敵ながら感心していた。

だが、相手は高校生。

大学の応援団長で数十人の部下をまとめている自分が高校生ごときに負けるわけにはいかない。

ましてや、相手は大阪で好き放題暴れる朝鮮高校生。

負ける事は、大和男児たる自分にとってあってはならない事であった。

ちなみに、原田重道の父親は、中国戦線で中国で暴れまわっていた大日本帝国の軍人でもあった。


「・・・・・・」

「・・・・・・」


お互いにらみ合いが続く。

一度も視線をそらさない。

その時だった。


スィ。


原田の目線が、一瞬下に下がる。


「!?」


視力両目1.5のリーは、その目の動きを見逃さなかった。

その刹那───。


バッ!!!


「───!!」


原田の前手である左手の拳が、リーの眼前に迫っていた。

原田重道オハコの、目線変更で相手の虚をつき、遠距離からの飛び込みによる追い突きである。


「きまった!!」


原田が追い突きをした瞬間、包帯を巻いた大商大の男は、勝ちを確信したような大声をあげた。




「ハッ!」


バァッ!


原田道重は、息を吐くような声を発しながら、あおむけの状態から上半身だけを勢いよく起こした。

鶴橋駅前。

既に時間は、朝9時になろうとしていた。


「団長!」

「おぉ、篠原か」

「だ、大丈夫ですか!?後頭部を思いっきり地面に打ってましたが・・・・・・」

「後頭部・・・・・・?」


右手で自身の後頭部をさする原田。

確かに、篠原の言う通り後頭部を地面に打ったのだろう。

触った部分にタンコブができていた。


「・・・・・・あ!」

「うわっ!」

「そうじゃ!リーは!?あの朝鮮人はどうしたんじゃぁ!?」

「あ、あいつなら、朝鮮高校に行くと言って去っていきました・・・・・・」

「な、なんじゃと!ワシとの決着は!?」

「そ、それは・・・・・・」

「あー!リーに一発で失神させられたアジョッシ(おっさん)が起きたぞー!」

「な、なんじゃと!このガキ!」

「キャハハハ!逃げろー」


原田とリーのタイマンを一部始終見ていた、小学生2人組の男子が、原田をからかい走っていずこかへ消えていった。


「ワシは、あの朝鮮人の小僧に一発でやられたというんか?」

「お、押忍・・・・・・」

「・・・・・・」




東大阪市稲田上町


スタスタスタ。


「しっかし、あのおっさんの踏み込みと左ストレート早かったわ」


リー・ソンウは、歩きながら、先ほどタイマンした大学生のパンチ(追い突き)を思い出していた。

伝統派空手の間合いを詰める際の踏み込みの速さと、パンチのハンドスピードの速さを体験し、バカにしていた空手の認識を改め、見直していた。


「空手・・・・・・恐るべしやな」




原田重道とリー・ソンウの決闘。

原田の左追い突きを、リーが右へダッキングしながらの左ストレートによるクロスカウンターを放ち、原田の顎を一撃。

原田は、そのまま仰向けで倒れ、地面に後頭部をしたたか打ち付け失神したのだった。


大商大応援団長と大阪チョーコ生の鶴橋駅での決闘。

この結末は、すぐに大阪中を駆け巡り、今でも語り草となっている。

昭和の伝説の決闘であった。

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