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大商大応援団長・原田重道vs大阪チョーコー2年・リー・ソンウ 鶴橋駅での決闘 part1

ここで、一息ついて、大阪のチョーコーのあるタイマン話について語りたいと思う。



1969年 7月 朝8時頃 大阪 鶴橋駅前


黒の角帽に、黒の詰め襟学生服(学ラン)に高ゲタを履いた、170cm後半の黒髪のスポーツ刈りの男が、腕を組みながら鶴橋駅前で仁王立ちしていた。

夏の暑さもどこへやら。

その熱射をモノともせず、黒色の長袖長ズボンの学ラン男は、肉体から滴り落ちる汗にも微動だにせず、ある目的の為、その場でじっと、じっと待っていた。

その姿はまるで、高田馬場決戦時の花田幹夫(23歳)である。

鶴橋駅前で仁王立ちしているこの男。

名は、原田重道(22歳)。

大阪商業大学、略して大商大と言われる、東大阪市にある私立大学に通っている4年生である。

そして、大商大の応援団長でもある。

で、その目的とは・・・・・・。


「おい!」

「はいぃ?」


原田は、腕組みをしながら、自分の右横を通り過ぎようとした学ラン姿の学生に声をかけた。

いきなりバンカラに声をかけられて学生は変なトーンで返事をしてしまった。


「貴様、リーソンウか?」

「は?」


いきなり、誰かもわからない名前を言われ、困惑する学生。


「違うなら行ってよし!」

「は、はぁ・・・・・・」


いきなり呼び止められ、勝手に何かを判断され、勝手に通行許可された学生は、首をかしげながら駅構内へと入っていった。


「遅い!」


原田重道はイライラしていた。

既に7時ごろからここで仁王立ちしていて、目的の人物リー・ソンウという男を待っていたからだ。


(情報によれば、いつも7時半ごろには鶴橋駅に来ているはずだが・・・・・・)

「原田団長!」


頭に包帯を巻き、右目にアザがついた応援団員らしき学ラン姿の男が、原田の元に慌ててやってきた。


「なんだ!?きたか!?」

「お、押忍!奴が来ました!」

「よぉーし!」




スタスタスタ。


1人の学生が、鶴橋まで1キロ付近を早足で歩いていた。

名前は、リー・ソンウ。

大阪チョーコー2年。

ボクシング部所属。

身長175cm。アイビーカット風の黒髪。

白のシャツの胸元にサンペンのバッジをつけた学生であるリー・ソンウは、チョンバッグを小脇に抱えながら早足に鶴橋駅改札へと向かっていた。


(明け方までオモニのキムチ作り手伝わされたから眠いぜ・・・・・・)


リーの実家は、コリアンタウン周辺でキムチ販売店を営んでいるのだ。


クンクン。


早歩きしながらシャツの匂いを嗅ぐ。

幸いにもニンニク臭くないようだ。

今日は、イルボンサラム(日本人)彼女・下田順子とのデート。

下田順子は、リーと同じ高校2年生。

去年の夕方、東大阪の河内永和駅で、反戦活動のビラを撒いていた下田順子に2人の右翼が絡んでいたのをリーが助けた(ボッコボコにした)縁で付き合うようになったのである。


クンクン。


またシャツの匂いを嗅いだ。

大事な夜を、順子に「キムチ臭い」と言われたくない、純情な高校生の姿がそこにはあった。


「リー!!!」

「!!」


リーは内心(な、なんだ!?)と驚いた声をあげた。

前方100メートルの辺りから大声が聞こえてきた。

それも自分だと思われる名前をである。


「我が後輩が、数日前、貴様にお世話になったそうだなぁ!」


リーは、歩きながら、目の前で大声出してる男を発見・認識。


(ははぁ、数日前に俺がボコしてやった大商大の奴かぁ)


リーは、即座に現状を理解した。

大声をあげる学ラン男の隣には、数日前にリーがボコボコにした大商大の男が包帯を巻いた状態で自信ありげに立っていた。

(もうお前は終わりだ!)みたいな顔である。


「貴様に決闘を申し込む!!」


ダダダダダッ!


リーは、50メートルぐらい先にいる学ラン男のその言葉を聞くや否や全力でダッシュ。


ズザァ!


「!!」


ダッシュしながら、原田の目の前まで来ると、自転車が横滑り(スライド)しながら急停車するような恰好で急停止した。


ブワァ!!


急停止したことで、周辺に砂ぼこりが舞った。


「おっと、目の前におっさんがいたことに気づかんかったから急停止したら砂埃が待ってしまったな。すまんすまん」


リーは、自身がわざとまき散らした砂埃が、目の前の学ラン男(原田)にかかったことを確認し、満足げに煽りを入れた。


「・・・・・・」


原田は、口を真一文字にしながら黙ってリーを睨んでいた。


「貴様、河内永和・東大阪周辺で大分好き勝手暴れてるそうじゃねぇか」

「トンデパン(東大阪)は、俺たちのシマだぜ。売ってくる喧嘩は買う!こちらの勝手じゃ」


二人が近づいてにらみ合う。

メンチの切りあい。

不良同士の挨拶みたいなものだ。


スゥ・・・・・・。


原田が、メンチの切りあいを避けるように、少し距離を取った。


「口で言ってもしょうがなさそうじゃのぉ・・・・・・」


カランカラン。


原田は、そう言いながら履いていた高ゲタを、足で軽く後ろに放った。


カチャッ、カチャッ。


続けて、学ランのボタンを外していった原田は、脱いだ学ランを後ろにいた後輩の西川に渡した。

白のワイシャツがあらわになった。

既に、白のワイシャツは、汗でビシャビシャになっていた。


(プッ)


リー・ソンウは、心の中で吹き出した。

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