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27.オーガ③

オーガの目が、はっきりと私を捉えている。


さっきの一撃で、標的は完全に私へと移った。


「……っ!」


来る。


「……もう一度っ!」


杖を突き出し、魔法を放つ。


バチッ――


火の玉がオーガの顔面で弾け、一瞬だけ動きを止める。


「……やっぱり、これじゃ……」


威力が足りない。


でも、強い魔法を撃つには時間がない。


せっかく戦えるだけの力を、守れるだけの力を取り戻したのに。


どうすればいい――


そう思った、その時だった。


空気が震える。


「……え……?」


背後から、異常なほどの魔力を感じる。


振り返ると、倒れていたはずのミナトさんが、ゆっくりと立ち上がっていた。


その体からは、溢れるように魔力が滲み出ている。


次の瞬間――


ドンッ!!


地面が弾け、ミナトさんの姿が消える。


「ガァッ!?」


オーガの巨体が、横から叩きつけられたように吹き飛んだ。


極限まで魔力を足に集めての蹴り。


その一撃でオーガは壁まで飛ばされている。


「……え……?」


理解が追いつかない。


そんな私に、ミナトさんは振り向きもせずに言う。


「俺1人で倒す」


いつものミナトさんとは違う、低く、感情の薄い声。


「……え……?」


何を言ってるの……?


「今の俺なら、あんなの一人で倒せる」


淡々とした言葉。


「だから、ソフィアはそこにいればいい」


違う。


ミナトさんはそんなこと言わない。


この人は――いつものミナトさんじゃない。


「……ミナトさん?」


胸の奥がざわつく。


近くにいるはずなのに、どこか遠い気がする。


「……嫌です」


気づけば、そう言っていた。


ミナトさんが、わずかに視線だけこちらに向ける。


「……一緒に戦います」


いつもと違うミナトさんを前にして思わず震えてしまう。


「必要ないって言ってるだろ」


少しだけ苛立ちが混じっている。


「今の俺なら、オーガくらい一人で倒せる」


「……それでもです」


一歩、前に出る。


「……もう、守られるだけの存在は嫌なんです。……決めたんです。私は、もう逃げないって」


息を吸って――


「だから……いつものミナトさんと、一緒に戦わせてください」


一瞬の、沈黙。


「……チッ」


小さな舌打ちと共にミナトさんが纏っている膨大な魔力は小さくなっていった。



気がつけば、俺はソフィアの前に立っていた。


さっきまで動かなかったはずの体は、まるで最初から無傷だったかのようにどこも痛くない。


それどころか、以前より調子がいいとすら感じる。


目の前には、吹き飛ばされたオーガ。


そして背後には――こちらを見つめているソフィア。


さっきまでの記憶が、途切れ途切れに頭の中をよぎる。


自分の体が勝手に動いていたこと。


そして――ソフィアの言葉。


あの、まっすぐな目。


「……一緒に戦いたい、か」


小さく呟く。


「ガァァァァァァッ!!」


オーガの怒りに満ちた咆哮が響く。


「ソフィア、一緒に倒すぞ」


「は、はい……!」


そうして、俺はオーガへと駆け出す。


「っ!?」


いつも通り、間合いを取って戦うつもりだった。


だが――体が言うことを聞かない。


気づけば、一瞬でオーガの懐まで踏み込んでいた。


「今のミナトさんは、あの時と同じ……いえ、それ以上に魔力を纏っています。身体能力も大幅に上がっているはずです!」


「そういうことか……それなら!」


拳を振り抜く。


その一撃はオーガに防がれるが――


防御ごと、巨体を数メートル吹き飛ばした。


「……でも、さっきほどじゃないな」


手応えに違和感が残る。


「さっきの蹴りは、足に魔力が集中していました。全身に分散するより、一点に集めた方が威力は上がると思います……!」


「今の俺には、そこまでの制御は無理だな」


「はい……なので、ミナトさんは1分だけ足止めをお願いします」


一瞬の間。


それでも、ソフィアははっきりと言い切る。


「わたしが……一撃で仕留めます」


その声には、もう以前のような迷いはなかった。


「……了解!」


ほんの少し見ない間に、ソフィアは見違えるほど頼もしくなっている。


負けてられないな。


内心でそう思いながら、俺は再びオーガへと踏み込んだ。 



オーガとの拳の撃ち合いが始まる。


お互いに避けることはない。

相手の拳を防ぎ、そのまま自分の拳を叩き込む。


鈍い衝撃が何度もぶつかり合う。


俺もオーガも確実に消耗していく。

それでも――どちらも倒れない。


そんな戦いが、1分ほど続き、


「ミナトさん……準備できました……!離れてください!」


背後から、ソフィアの声。


その声には確かな覚悟が宿っている。


「了解だ……いつでもいいぞ!」


俺はオーガの拳を弾き、後方へ大きく跳ぶ。


「いきます……!《フレア・ジャベリン》」


ソフィアの前に、灼熱の魔力が収束する。


赤く、そして白く輝く光。


それはやがて“槍”の形を取る。


炎でできた槍。


だがただの炎ではない。


圧縮された魔力によって、炎は揺らがず、鋭く、まるで実体を持つかのように凝縮されている。


空気が焼ける。


地面が焦げる。


視界すら歪むほどの熱量。


振り下ろすように、ソフィアが腕を振る。


放たれた炎槍は、一直線にオーガへと突き進む。


轟音と共に、空間を焼きながら。


とてつもない威力。


この一撃なら――倒せる。


そう、確信出来るほど。


だが――


オーガは、咄嗟に身体を捻る。


巨体とは思えない速度で、炎槍を躱した。


「なっ……!?」


「まだですっ……!」


ソフィアの声が響く。


その瞬間――


逸れたはずの炎槍が、空中で軌道を変える。


ぐるりと円を描き、まるで獲物を追うように、再びオーガへと向き直る。


「……ガァ!?」


初めて、オーガの動きが鈍る。


「逃がしません……!」


炎槍が加速する。


そして――


オーガの胸部へと、一直線に突き刺さり、空間を焼き尽くす閃光が走った。

明日から数日間、お休みをいただきます。


ここまで勢いで書き進めてきたのですが、気づけば当初考えていた構成から大きく離れてしまっていました。


一度しっかり整理し、今後の展開をより良い形でお届けするため、ストック作りの期間に入ります。


再開まで少しお時間をいただきますが、続きが気になる方はブックマークしてお待ちいただけると幸いです。

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