表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/106

お買い物


「申し訳ありません。お見苦しい姿を見せてしまって。それと、ありがとうございました」


 漸く落ち着きを取り戻したティアからお礼の言葉を頂戴したが、これは素直に受け取っちゃ駄目だろ。


「いや、ティアは悪くない。お礼を言われるのも心苦しい。なんせ今回の発案者は俺だからな」


「えっ?」



 歩きながら話すよ、と服屋に向かいながら説明していく。

 いつもお務めに励むティアを労う為に、ここ暫く依頼で留守がちだった皆と楽しく過ごして貰おうと今日買い物に誘った事。

 唯にだけは事前に説明し、協力をお願いしていた事。しかし協力者である唯がアドリブを入れて、プレゼントしようという方向に話を仕向けた事。


「その提案にホイホイ乗っかった俺が言うのもなんだけど、ルー達があれほど食い付くとはなぁ」


 結果、ティアが取り残された感を持て余し、パニックに陥った。喜ばせるどころか怯えさせてどうするよ、俺の馬鹿!



「……という訳だ。マジごめん」


「……私はトオルさんから、クルタ村で買ったという小物を貰ったばかりですよ。何故、更に贈り物をしようとするのですか?」


「あれはお土産。俺達の国では、遠方に出掛けた際に親しい人達に配る品を買う風習があるんだよ。だけど今回は、日頃の感謝を形にして、という名目。だから別物。それにこれは唯からの贈り物でもある」


 つーか当初の予定でも、ティアが何か気に入る素振りを見せたならプレゼントしたいなーと内心思ってたし。

 これでもし俺達から服を受け取らずとも、あれだけ張り切っていたルー達がそのチャンスを看過ごすと思えないんだよな。結局ティアは彼女達から服を贈られる事になるんじゃないか?


「だからね、ここは諦めて私達に服を贈らせて?」


 ニッコリと笑い掛けながら、服屋のドアをそっと指差す唯であった。






「うんうん。これも似合うねー。果たして素材が良いのか、選ぶ者のセンスが良いのか」


「勿論、ティアが可愛いからよ。……うぅん、これの色違いはあるかしら?」


「うぅ、何か落ち着きません。ど、どこか変じゃないですか?」


「とても良くお似合いですよ、お客様。……こちらの色合いならどうでしょう?しかし異国ではこのような着こなしが流行っているのですね。勉強になります」


 はい、こちら店の中では。ファッションショウの真っ最中です。

 戸惑うティアに次から次へ服を合わせ、従者のように後に付く店長さんに保留案を数着預け、店内を闊歩する唯。

 俺はといえば店の片隅に陣取り、試着したティアを褒めるだけ。

 折を見て、店に訪れていた他の女性客達の反応を窺うと、チラチラと視線を飛ばす者、熱心に見つめる者ありと、なかなか好評のようだ。奇抜、もしくは斬新なファッションと見られやしないかと危惧していたが、どうやら杞憂だったようだ。

 というか、店長さんの食い付きが凄い。あれこれ質問しては唯の語る言葉を一語一句聞き逃すまいとする姿勢を見ていると、思わず唯に「もういっそここで働いちゃえよ」なんて言いたくなった。

 だってなんか店長手当が出そうな勢いよ?わざわざ危険を冒す必要無いんじゃね?


 しかし唯の中では、俺と共に行動するのは確定事項のようだ。そう言って貰えると悪い気はしないもので、ならばその路線で今後を考えなくてはいけない。

 俺自身は能力が低すぎて冒険者にはなれない。だからフリーのサポーターとして臨時に雇って貰うしかない。二人一組で売り出すとどうしても高くなる。それでも構わないと言って貰えるよう、商品価値を高めるしかない。

 幸いにも、俺と唯の得意分野はそれほど重ならない。支援・阻害をメインとした【言霊魔術】が俺の持ち味。唯は今のところ料理だけだが、おそらく火魔術の素質がある。加護も高いし、鍛え上げれば上級魔術にも手が届くんじゃなかろうか。

 これらをいかにして強化及び宣伝していくか?が当面の課題だな。


 思考が纏まったところでフムと一息。

 そういやティアはどうなったかな?と店内に目を遣ると、カウンターに服を並べ、最終選考に入ったようだ。俺もそちらに足を向ける。

 むぅ。ふわふわモコモコゆったりタイプは予選落ちか。残念。あれは小動物感が増して庇護欲をそそられたのだが。ちょこんと出した指先もグッドだった。

 とはいえ、あれは季節が限定されるからな。この辺りって割と温暖な気候だし。

 最終選考に残ったのは、清楚系ワンピーススタイルと野外系パンツスタイル。

 どちらかをティアに決めてもらおうとした訳だが、ここでも認識の差が出てしまい困惑させてしまった。


「服を贈るって一着という意味じゃなかったんですか?」


「うーん。1セットだったみたいだね!気にしない、気にしない」



 こっちの服屋って平台に商品を並べる売り方が一般的だから、セット売りの概念が無いんだよな。そういやマネキンも見た事ないや。


「お客様、マネキンとは?」


「等身大の着せ替え人形、かなぁ?」


「ああ!それに着せる事で全体の雰囲気が良く分かるのですね!……成程、セット販売……悪くない」


 何やら新しい商売を考えている店長さんは置いといて、ティアの意見を聞く。


「どっちがより気に入った?」


 迷った末に、旅先でも着る事の出来るパンツスタイルが選ばれた。

 恐縮するティアを宥めて唯への服を1セット選んでもらう。

 それらの代金を支払い終えたところで、丁度他の皆も到着。合流を果たし、晩御飯の時間までブラブラと町を散策した。


 うーん?当初の目的とは裏腹に、俺達が一方的に振り回してしまった感が凄くする。これではいけない。また後日、別の形で報いてやらねば……


「トオルさん?今度は私の我儘を聞いてもらう番ですよね?キモダメシは夜やるものと聞きました」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ