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訳あり物件


 リオ達は手頃な依頼を探す為、俺達は唯のギルド登録の為。皆で出掛ける事になった。

 折角町に繰り出すのだからと、ティアも「お役目に備えての買い出し」という名目で連れ出す事にした。


 だって、よく考えたら寂しいと思うんですよ。今まで共に過ごしてきた、姉妹同然に仲の良い友達が、ぽっと出の新顔に掛かりきりになっているんですよ?なのに自分は蚊帳の外。

 ティアの年齢は向こうで言えば中学生の女の子。寂しくない訳がない。

 ただでさえ前回のクエストは、なんやかんやで二週間近くも留守にしたのだ。せめて穴埋めをしっかりしないと申し訳ない。


 それにティアって、あんまり神殿から出ようとしないんだよね。修行が休みの日でも自主的に神殿の雑務を手伝っている姿をよく見かける。そういう姿を見ていると、あまり中学生っぽくないなー、無理とか我慢してないかなー?と心配してしまう。

 もっと青春を謳歌しようよ。こう、友達とキャッキャウフフと談笑したりとか。おしゃれを楽しんだり、可愛い小物を集めてお部屋に飾ってみたりとか。俺の持つ女子中学生のイメージって、こういうのなんだけど。

 かつて旅先で見せた、折鶴や小物を手に取り喜ぶ姿や、物語の世界に引き込まれて一喜一憂する姿を見る限り、そういった年頃の感性はある筈なのに。ティアときたら、そういう姿をなかなか見せてくれないんだよな。

 ここは護衛陣&唯の女子力に期待しよう。彼女達と共に町を歩けば、そんな姿を見られるかもしれない。




 やってきました、冒険者ギルド。ここは女子力とは無縁な場所だからな。さっさと用事を済ませてしまおう。

 早速ヒューイに声を掛け、唯の登録を申し込む。リオ達はティアを伴い、依頼を探しに掲示板の方へ。

 個室に入り待っていると、すぐにノックも無しにリオ達が入室してきた。


「決まったぞ。コレを受けた」


「早っ!?」


 依頼書をテーブルの上に滑らせる。即決ですか。本当に厄落としの意味合いが強いんだな。どれどれ……。


 《調査依頼(ランクF~)》


 王都郊外にある訳あり物件の取り壊しを行いたいのですが、奇妙な現象が頻発していて工事が中断しております。原因究明をお願いします。

 解決してくれた場合は成功報酬を上乗せし、魔物が原因だった場合、更に討伐報酬を上乗せします。


 調査報酬・半銀貨1枚

 成功報酬・半銀貨3枚(+α)

 依頼主・建築ギルド



 ……ナニコレ?訳あり物件って呪いの館?奇妙な現象はオカルト現象とか言わないよね?


「この建物を建てた最初の所有者は、明るくハキハキとした好青年で、仕事にも恵まれ、穏やかな両親と、優しく美人の奥さんと共にそこに住み着いた。だけど、そこに住み出してから僅か数日で、攻撃的で疑い深い性格に豹変、人相も変わり果ててしまったんだって。結局、半年で家族は離散。最後まで住んでいた男もいつの間にか姿が見えなくなったらしいよ」


「その後も何度か所有者が変わったのですが~長続きした方は居ませんね~。理由は皆さん共通して~どこからか声が聞こえてくるそうです~。男だったり~女だったり~子供の声もするそうで~」


「工事の合間にもそういう声が聞こえてきたそうニャ。お陰で作業員がビビってしまって仕事どころじゃニャいそうニャ」


 ますますオカルトじみてきたな。ええ~本当にこんなの受けんの?帰っていいかな?


「ラップ音やポルターガイストみたいな現象は起こってないのかしら?」


「それはどういった現象なのでしょうか?」


 唯が小首を傾げ呟けば、ティアが目を輝かせながら食い付き、それを受けて気を良くした唯が自らの持つオカルト知識を嬉々として語りだす。あー、あー、聞ーこーえーなーいー。


 こういうのもガールズトークと言うんだろうか?言うんだろうな。何よりティアが楽しそうだ。なので俺には何も言えない。

 でもね、こういう話が苦手な人が居るって事も知って欲しいの。ていうか、唯は知っているよね気づいているよね確信犯だよね!?


「トオルさん!私、是非トオルさんと一緒に『キモダメシ』っていうの、やってみたいです!」


 珍しくティアが年相応のピュアっピュアな笑顔を振り撒きながらのおねだりをしてきた。


 ……唯さん、アナタ、なんてモノを仕込んでくれちゃってんのぉっ!!





「そ、それはさておき!つまりゴーストは魔物扱い?討伐は可能って事だよな?で、ランクFって事は、危険度は低い、討伐は容易って意味であってるよな?」


 ティアの純粋無垢な願いを断ち切った後ろめたさから、早口になりながら話題変換を試みる。

 先の台詞はリオ達に向けて発せられたものだが、これに対する回答は扉の方から返ってきた。


「いや、その件に関してはそうとも言えない。と言うのも、誰も声の正体を見ていない事が問題なんだ。もしこれがアンデットの仕業なら危険度も跳ね上がり、もう少しランクが上になる」


 そこに居たのは我が友ヒューイ。以前にも見た、水晶玉を嵌め込んだ黒い箱を小脇に抱えての登場だ。


「そもそも曰く付きの物件って事は建築ギルドの連中だって判っていたんだ。あいつらにはお抱えの浄化の使い手だって居る。にも関わらずうちに依頼が回って来たんだからおかしな話だ。そいつらの手に負えない高位のアンデットか、移動型の魔物、魔物以外の理由って事になる」


「何だってそんなのがランクFの仕事なんだよ?」


「仕方ないだろ。誰も姿を見ていないどころか、被害らしい被害を受けてないんだから。あと依頼書をよく見ろ。『ランクF~』って書き方してるだろ?こういう時は不確定要素があるって意味だ」


 あー、つまりこの依頼自体が既に訳あり物件になってる訳ね。成程、成程。俺は慌てず騒がず、ひたとリオに視線を合わせ。


「チェンジで」


「却下」


 ああ、分かっていたさ。こんな時は俺の意見など有って無きが如くな事は。だけどせめてもの抵抗の証に抗議の声を上げるのを抑えられなかっただけだ!


「……もういいです。アンデットは物理的に退治出来るのか?」


「スケルトンやグール、リッチといった動く死体リビングデッド系なら、肉体?が残っているから、まだ有効だな。だが連中は言葉を発する事は出来ない。生前、高名だったリッチなら念話が可能な場合もあるが、基本恨み言を垂れ流すだけで、理性は残っていないと思っとけ。悪霊ゴースト系はちと厄介だな。こいつらは精神体の塊だから物理攻撃が効かない。魔力の籠った武器や攻撃魔術で散らすか、浄化で一掃ってのが主な対処法だな。ごく稀に搦め手の一つで、相手の無念を晴らして消滅させる事も出来るそうだが、相手の素性を知らなければ出来んやり方だ。手間だし、何より「正攻法では敵いませんでした」と言うに等しいからな。あまり冒険者達は好まない手でもある。ああ、ちなみにこいつらも念話が使える個体がたまにいる」


 うーん。おばけは居るけど退治は可能で、だけど殺される可能性もある、ってのがこちらの常識か。この場合、向こうとこちら、どちらがマシなんだろうな。

 まだ、アンデットの仕業と決まった訳じゃないけど、とりあえず【悪霊退散】を刻んだ護符を作るのは確定事項だな。絶えず持ち歩こう。



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