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はじめてのおつかい


「つまり、今回はおつかいクエスト?」


 今日、受けた依頼は、とある村の工芸品の受け取りだ。それを聞いて思った。珍しい。リオ達は討伐系を好んで受ける事が多く、次に好むのは調査系だ。採取系もそれらとセットでないと受けない。配達クエストを受けるのは初めてでは無かろうか。


「そうだよ。ただ冒険者ギルドに依頼が来るような『おつかい』だから、町の中の配達と一緒にしちゃいけないよ。当然危険もあるからね」


「その危険というのは魔物以外で、という意味?」


「そう。目的地であるクルタ村は山の中にあるんだけど、標高もかなり高い場所で、着くまでに体調を崩す者も出たりするし、難所に至っては道と呼べる物ではないしね」


 王都の北部に聳える山脈。その山間に今回の目的地の村があるという。そこに到る道は高く険しく遠いらしい。勿論魔物も出ます。いやー、はじめてのおつかいにしては難易度高いなー。保護者同伴だけど。


「山登りかぁ」


 これまで本格的な登山はした事がなく、近所の山を片道一時間掛けて登った位の経験しかない。知識に関しては、登山を題材にした小説を数冊読んだだけの素人知識。注意するのは高山病と低体温症と……天気くらいしか思い付かないぞ?

 えーと、必要な物は、防寒具や薬各種、(日数+α)×人数分の食糧と水。山で役立つ道具って何だろう?

 嗚呼、インドアな趣味しか持ってなかったからこんな時、ネット環境が恋しいです。

 道中、店なんかも無いだろうから、今日は準備の為に費やして明日の朝一で出発予定。今日中に予備も含めて諸々揃えなければ。




「とりあえずこんだけあったら大丈夫かな?」


 あれから雑貨店をハシゴしていろんな物を買い漁ってから神殿に戻り、只今買い忘れた物が無いかチェック中。


「充分過ぎるニャ。ニャンでそこまで神経質ニャ?」


「食糧の他に一ヶ月分の非常食まで用意して。山籠りでもするつもりか?」


 いや、だって「自然を舐めたら死ぬ」というのは災害大国NIPPONの大事な教えですよ?登山なんて初めてだし、慎重過ぎる位で丁度いい。あと、山籠りなんてしないから。


「相変わらずヘタレだね。ティアはどう思う?」


 と、明日の用意を手伝ってくれていたティアにも話を振られた。ティアは今回もお留守番だから、何か可愛らしいお土産があれば買ってこようと思う。


「普通はこれだけの荷物を持ち歩くのは不可能なんですが、トオルさんには便利な魔術がありますからね。あって困るような物ではないですし、……その、ソレも含めてトオルさんかと」


 おぅ、ティアにもヘタレ認定されてたかー。うん、でも今更だね。ティアの遠慮が無くなった事を喜んでおこう。


「ですけどクルタ村ですか。あの村は少々閉鎖的で排他的なところがありますから、呉々もお気を付けて下さい」


「あれ?ティアも行った事があるの?」


「はい、お役目で。と言うかトオルさんに初めてお逢いした時のルート上にありましたから、つい最近の話ですね」


 ああ、そういえばフローラさんの部屋で金持ちの娘がそんな名詞を出していたような。あれ?あの娘さんの名前は何だっけ?興味ない事はすぐ忘れるからな、このポンコツ頭。


 それに、あのルート上にある閉鎖的な村ねぇ?……あれ、待って。なんか厄介事のフラグが立ってない?いやいや!ま、まだ大丈夫……だよね?




「トオル!二匹任せた!」


「二匹はキツいよ!?せめて一匹ずつ!」


「やかましい!いちいち弱音を吐くな!」


 一夜明けて、北門を潜り山脈を目指す。今回は近くまで駅馬車で向かう予定だったが、だいぶ日も高くなりだした頃、魔物の群れに出くわした。強さ自体は雑魚に分類されるがいかんせん数が多い。

 馬がやられたら他の乗客という足手纏いを大量に抱える羽目になる。それはまずいと判断し、リオ達が途中下車して足止めをしてる間に、馬車は戦闘区域を離脱する事を提案。そしてそれはあっさりと受け入れられた。

 熱血路線だね!俺の性格上「ここは任せて先に行け!」とか、やる側になるとは思わなかったよ。それにまだ往路一日目だよ?展開が早過ぎるわ!!こういうのは、もうちょい物語が佳境に入ってからだなあ……!!




「終わったー」


 固い甲殻に守られた甲虫を叩き潰した棍を拭いながら一息つく。うむうむ、キャーキャー悲鳴を上げていた頃に比べれば、俺も強くなったものよ。


「全く。お前は自己評価が低過ぎる。わざわざこちらが尻を叩かんといかんというのは面倒だ」


 同じように武器の手入れをしながら、リオが億劫そうに言ってくる。

 そうは言われても少年漫画じゃないんだから、彼我の戦力差が肌で判るとか無理だし。紙装甲の身としては安全マージンを大きく取りたいじゃないか。多対一より一対一を数回繰り返す方法を選んで何が悪いのさ?


「馬車、戻って来ないね……」


 とはいえ言い返す度胸は無く、別の話題を振ってみる。


「戦闘が終わった保証がありませんから~。こういう場合は戻らずに次の町に行き、その時に報告がなされます~」


「つまり、ここからは徒歩かー。初日から予定が狂っちゃったな」


「ま、いいじゃないか。王都に戻れば報奨金も貰えるよ。それに折角アンタが用意した食糧が役に立てる機会が早くも来たんだ」


「全然嬉しくない」


 軽口を叩きながら、周囲を見渡す。街道のあちこちに魔物の死骸が散乱している。


「これ、やっぱ片付けた方が良いよな?」


「そうだニャ。冒険者には街道に魔物を誘き出す因子があれば除去する義務が発生するニャ。これを怠ると罰金ペナルティを食らうニャ。よほどヤバい状況でもニャい限りほぼ強制ニャ」


 知らなかった。冒険者は掃除夫でもあったのか。あと罰金とか。世知辛い世の中だ。


「時間のロスを考えると~かなりこちらに不利な制度です~。ですがこういった善行の積み重ねがギルドの存在を支えています~」


 成程。誰だって危険は嫌だし汚れ仕事はしたくない。嫌がる仕事を率先して行う事で、「お役に立ちますよー。安全ですよー」とPRして、必要な組織であると認知してもらう訳だ。俺の保身的行動とやってる事は一緒だな。


「つまり、一般の皆さんの安全を支えるのがアタシ達の仕事。そんなアタシ達を支えるのがアンタの仕事」


「という訳で~。トオルさんの出番です~」


「ういーす」


 素材回収用の袋を手に取り、街道のお掃除に取り掛かった。

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