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お花畑の住人


 もう何度、溜め息を飲み込んだろうか?いい加減目の前で繰り広げられる茶番劇に飽きてきた。

 ルー達はさっさと避難してしまい、残されたのは俺一人。

 本当にどうしてこうなったのか。




 汚れ落とし&匂い落としの魔術を掛け終え、パティが綺麗になった服を見て、上機嫌に「テディとキャシーに見せてくる」と駆けていった。

 そして二人を「お客様二名ごあんなーい!」と連れてきた。ここまでは良かった。

 テオの後ろに隠れながらも自分にも魔術を掛けるよう言ってきた少女。名前はキャサリン。

 この子がとにかく面倒な子だった。

 魔術の料金と仕様を説明し終わると、テオ以外の男に触れられたくないとごね出した。

 袖口や裾に少し触れるだけで、別に直接肌に触れる訳じゃない、と説明しても聞き入れず、十倍の代価を払うから触れないように魔術を掛けろと言い放ち、申し訳ないがそれは出来ないから諦めてくれと伝えると癇癪を起こした。

 間にテオが入り、少しは落ち着いたが、「でも……」「だって……」とテオにまで駄々を捏ね出す始末。

 テオは根気強く宥めているが、いちいち歯の浮く台詞を混ぜるのは止めてくれ。半分以上はキャサリンが言わせている感はあるが。女の掌で転がされてやるのも、モテる男の条件か?

 俺が傍で見ているのにも関わらず、二人の世界を作り出すお花畑な展開に、思わずジト目になってしまう。


 なんだかなーと見物に回っていると、パティから二人の非礼のお詫びと共に説明を受けた。

 キャサリンはあまり人が踏み入る事のない森の中で魔女に育てられた為、知らない人、特に男性を怖がってしまうそうだ。唯一の例外がテオで、理由は魔物に襲われていたキャサリンを颯爽と助けたテオの姿に一目惚れしたから。

 そのまま半ば強引にパーティーに入り込み、めでたくテオの恋人の一人になったが、人付き合いを全くしないまま育った彼女は、度々周囲と衝突を引き起こし、それをテオが諭すというのが恒例化していた。


 (……それって、駄々を捏ねたらテオに相手してもらえると思ってんじゃねえの?)


 目の前の光景を眺め、キャサリンをキャンキャン吠える小型犬、テオをベタ甘な飼い主に脳内変換してみると、かなりしっくりきた。


「つまり、人馴れしていない小動物の躾に失敗したって事か」


「うっわー。否定出来ない」


「私達が注意しても、すぐにテディの近くに逃げちゃうのよ」


 傍で聞いてたアンジェまでも加わってきた。どうやら甘やかす飼い主に対しても不満があるようだ。

 ちらりとテオ達に目を向けると、さっきまでは一応注意という形を取っていた筈だが、今はどれだけキャサリンが魅力的かを熱弁している。


 ベッタベタに甘やかしてますね。


 でもこれってアレだよね?アウトだよね?自分達から話し掛けてきたのに、話の途中で人をそっちのけして二人の世界を展開するとか。もしや俺ナメられてますか?


 温厚な俺ですら不愉快レベルなのに、短気な人にやらかしたらどうなるんだろう?ただでさえこっちの人の思考回路って過激なトコあるのに。

 アンジェにそれとなく聞いてみたら、やはり要らぬ苦労を買っているようだ。

 ……なんか段々腹立ってきたな。


 二人が互いを好き合ってるのは分かるが、だからといって色んなものを蔑ろにし過ぎだ。外聞とか、常識とか、パティやアンジェの立場とか。

 女一人御せない礼儀知らずの若輩者、とか陰口を叩かれているのが目に浮かぶ。しかしその声はお花畑の住人には届かない。結局、頭を下げるのはパティとアンジェである。


 あの二人もハーレムの一員なのに、なんでメンバー内でこんなに格差があるんだよ。どう考えてもおかしいだろうが!


 二人は俺の初めてのお客さんで、ついでに言うならキャサリン嬢はクレーマー以外の何物でもなくて、テオに至っては頭の緩いお坊ちゃんという認識だ。そして俺は聖人君子などではない。当然、依怙贔屓しますとも。

 それなのにこの状況。あまりにもあからさまな扱いの違いに、内心、腸が煮えくり返っております。


 坊っちゃん嬢ちゃんのおままごとに首を突っ込む気はさらさら無かったのだが、惚れた弱みとはいえコレに毎日付き合っているパティとアンジェの二人が気の毒に思えた。

 なのでほんの少しのお節介と、若干の意趣返しを籠めて、最後にもう一度溜め息を飲み込み、お花畑の住人に声を掛ける事にした。

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