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繰り返し見る夢 1

 朝に目が覚めて直ぐ、今夜この夢の続きを見よう、と決めて実際に続きを見たことがある。たぶん小学一年生とかそんな頃だろう。

 

 近所の友達だったしんちゃん、けんちゃん兄弟の家でー覚えてはいないが何かをしてー遊んでいた。ぼくの兄貴はいなかった。現実でも誰か一人が欠けるのは珍しくないので、夢ならではの、あの違和感を感じない違和感もなかった。 

 彼らのお母さんが出してくれたオレンジジュースを飲むと、普段口にしている味とどう違うのかはまるで分からないのだったが、文字通り目が覚めてしまうくらい美味しく、またお母さんも普段から優しい人ではあったけれど、その時はいつもよりさらに優しかった。いや、優しいというか普段は感じたことのない「えこ贔屓」をしてくれているのが、あるいはぼくに「そうしてあげたいな」と思ってくれているのが伝わってきていた。ぼくはそれがとてもうれしかった。故に目が覚めたときは残念で仕方なかった。だから勢い、この続きを今夜見よう、と決めた。「見たいな」ではなく・・・・・・あの日の朝、目が覚めた直後に、今夜見る夢を選べるのがなぜか可能だと思えた。そして実際に「見た」のだった。ただ続きといってもいわば一話完結ものでの続きであって、しかも結局は二話で打ち切りとなる。


 二話目のシチュエーショも昨夜とほぼ同じ。しんちゃん、けんちゃんの家で三人で遊んでいるところに、お母さんが今夜(夢の中ではもちろん昼間である)はカルピスを出してくれた。でも普段飲んでいるカルピスでしかなく、少しは味が濃かったのかもしれないけれど「昨日」のような驚きはない。お母さんも「昨日」のようではなかった。こっちは明らかに。つまり普段のままだったのだ。口にはしなかったけれどぼくに対してだけ密かに持っていた「想い」が微塵もなく、欠片すら感じ取れない。ぼくは単に息子たちと仲のいい、年の近い近所の子の弟の方で、地域の子供たちの間における「味噌っかす」くん。私の可愛い次男がその立場にならずにいられているのは「この子」のおかげ、ありがとうね・・・・・・という、なんなら密かに軽んじている感じで、いくらか味の濃いいカルピスを出してくれるのだった。

 

 目が覚めたとき、ぼくは憤った。もちろん彼らのお母さんに対して。身勝手な事件を起こす、自分に都合が良すぎるか悪すぎる解釈の才に溢れた、危険な妄想男みたいに今夜もまた見るぞ、そのときはたっぷり「えこ贔屓」してもらおうと思った・・・・・・しかし昨日の朝のように「決めた」とは少し違う感覚だった。昨日の朝には感じなかった、意思次第で夢を選べた不思議な「力」を、今朝は意識してしまったのが原因だったのかは不明だけれど、とにかく「続き」は二話で打ち切られてしまい、三話目以降は未だ見ていない。

 たぶんぼくは二日続いた夢の中でしんちゃん、けんちゃんのお母さんに恋の原型のような、あるいは種のようなモノを持っていたのか、あるいは得たのかしたのだろう、と今にして思う。とはいえしんちゃん、けんちゃんの顔は思い出せてもお母さんは思い出せない。白いブラウスと灰色のスカートを履いて、中身の入った三つのグラスを丸い木のお盆に乗せる、ぼんやりとした姿しか覚えていないのだ。朝、目覚めた直後に選んだ、今夜見る「夢」の中にいた姿である・・・・・・ってか、そもそも自ら選んでそれを実際に見た「夢」の経験がなければ、しんちゃん、けんちゃんのお母さんが、何十年後のぼくの記憶に引っかかっていること自体なかったような気がする。




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