話し合い
それから、思っていたよりも早く、話し合いの場が設けられた。
担任の先生と、別クラスの先生。
そして、私と母。四人だけの、静かな空間。
私の学校は田舎で、クラスは二つしかない。
もう一つのクラスも、いじめに関わっていた。
そのため、その担任も同席している。
重たい空気の中、最初に口を開いたのは私の担任。
「生徒たちに話は聞き、このようなことがないよう、しっかり改善していきます」
どこか、決まりきったような言葉に聞こえた。
続いて、もう一人の先生がゆっくりと口を開く。
「花音ちゃん、辛かったよね。
ごめんね、もっとちゃんと話を聞いてあげていればよかった」
そう言って、目を伏せる。
隣で担任は、何度も小さく頷いている。
その様子を、私はただ見ていた。
謝られているはずなのに、
なぜか何も届いてこない。
言葉だけが、表面をなぞっていくようで。
あの教室で起きていたことも、
あの苦しさも、
本当に伝わっているのか、わからなかった。
母も、同じように感じていたのかもしれない。
それまで黙って聞いていた母が、ゆっくりと口を開いた。
「改善するって、何を改善するんですか?」
空気が、一瞬で張り詰める。
「そんなふうに見えません。
画鋲が入ってるとか、ステンレスの水筒が頭に当たるとか、ありえないことです。
――もう、学校には行かせません」
正直、驚いた。
母の口から、そんな言葉が出るとは思っていなかったから。
先生たちは、言葉に詰まったように視線を落とす。
焦りを隠しきれないまま、ただ謝ることしかできない。
「まずは学校に戻って、生徒たちと話し合いをします。
それから、全員に手紙を書かせます」
なんだろこの違和感。
違う気がした。
そういうことじゃない。
本心で書くはずがない。
そんなこと、意味があるとは思えなかった。
きっと母も、同じことを感じていたと思う。
しばらくやり取りが続いたあと、
母はふっと表情を緩めて、頭を下げた。
「偉そうなことを言って、すみませんでした」
母はその時何を思っていたのだろう。
そして次の日。
本当に、全員分の手紙が用意されていた。




