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お喋りな口紅  作者: はる
18/18

第18話

 三上の強い口調に、夕夏は途端に弱気になってしまい肩を落とした。



「どうしたら……」


「困りましたね」


「お願いします。助けてください」


「まあ無いことはないんですけど、また騙したとか言われるとこちらも困るんで」



 夕夏は焦った。椅子から飛び降り土下座をした。



「お願いします。さっきの言葉も謝ります。私には、もう頼れる人が三上さんしかいないんです。お願いします」



 夕夏は必死だったので、三上が嫌な微笑みを浮かべていることに気づかなかった。



「そこまで頼まれたら断れないですね」



 渋々という感じで、三上が言った。


 夕夏は、先程まで三上に対して怒りを持っていたことも忘れ、感謝の気持ちでいっぱいになった。



「これなんですけどね」



 そう言いながら、三上が白いワンピースを、夕夏の目の前に差し出してきた。



「可愛い」



 思わず声が出た。そのくらいそのワンピースは魅力的だった。



「そう。これを着るだけで、あなたはこの服の色のように真っ白な心になれるんです」


「真っ白な心」


「そうです。あなたの心の奥にある邪悪な精神を、このワンピースが真っ白に浄化してくれるんです」



 夕夏は、一刻も早くワンピースを着たいと切望した。


 ワンピースを受け取る為に、手を伸ばした。あと少しでワンピースに手が届くという時、ドアが勢いよく開き、数人の男たちが部屋の中になだれ込んできた。


 男たちは夕夏には目もくれず、三上の元へ向かった。


 咄嗟に夕夏は、ワンピースを三上から奪いとり、胸に抱え込んだ。夕夏の手から口紅が落ち、転がっていく。


 夕夏がワンピースを握りしめながら三上を見ると、男たちに取り囲まれていた。



「なんなんだ、あんたたち」


「三上茂、詐欺容疑で逮捕する」


「何かの間違いだ」


「話は署で聞く。連れていけ」



 三上は、刑事と名乗る男たちに小脇を強く抱えられ、引きずられるように連れて行かれた。夕夏は呆然とその光景を見ていた。



 どうして三上が逮捕されたんだろう。



 床に座り込んでいる夕夏に気づいた刑事が近づいてきた。



「大丈夫ですか?」



 刑事が夕夏に手を差し出した。その手を掴み、夕夏はよろよろと立ち上がった。立ち上がりながら、気になっている事を刑事に尋ねてみた。



「あの人は……?」


「あの男は、カウンセリングを装い、相談に来た人達に高額な商品を売りつけていたんですよ」


「詐欺……」


「あなたは、あの男から何か買わされたりしてませんか?」


「いいえ、何も。今日初めて、ここに来たので」


「そうだったんですか。騙される前で良かったです」


「はい。騙されなくて良かったです」


「一応、話をお伺いしたいので、あなたも署までご同行願えますか?」


「はい。あ、その前に着替えだけいいですか?」


「着替え?今じゃなきゃ駄目ですか?」


「はい。今じゃなきゃ駄目なんです」



 刑事が不思議そうな顔でこちらを見たが、夕夏は着替える為にトイレに向かった。




                    つづく

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