288 別荘にて 03
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表紙がとにかく素敵なので、表紙だけでも見ていただきたいです☆
「カルロを隠したのはあなたですか?」
魔王の表情が呆れたものになった。
「お前、この状況が怖くはないのか?」
「先に私の質問に答えてもらえますか?」
先ほどから、私の質問には答えずに話を逸らすのはやめてもらいたい。
魔王がまた機嫌よく笑った。
よほど、憑依する相手が見つかって嬉しいのだろうか?
「それでは、お前が気にする者の様子を見せよう」
魔王が差し出した手のひらの上に黒く輝く球体のようなものが現れた。
真っ暗な世界ではあるが、濃淡があるからわかる。
その球体に徐々に映像が映し出されていく。
倒れているカルロの姿があった。
しかし、すぐに魔塔主がカルロを見つけてくれたようで、魔塔主がカルロの頬を打った。
「なっ!?」
私はその映像に驚いて思わず声を上げた。
そんな私の声が魔塔主に届くはずもなく、魔塔主は何度もカルロの頬を打ち、カルロの目がうっすらと開かれた。
どうやらカルロは気を失っていたものの、命に別状はないようだ。
カルロは魔塔主の姿を見るとその体を起こして魔塔主に何か尋ねている。
そして、その顔を青くした。
おそらく、私のことを聞いたのではないだろうか?
私はカルロの無事な様子にほっと息をついた。
「よかった……」
カルロが無事で、魔塔主に保護されたのならばなんの問題もない。
「そなたは本当に私のことが怖くないようだな。中身を入れ替えることにどんな意味があるのかと思ったが、前回よりも楽しめそうだ」
「なんの話をしているのかわかりませんが、魔王は精神体だと聞いています。この世界に顕在化することに意味はあるのですか?」
何か目的があってこの世界に現れるのだろうか?
「私は邪悪な心に引き寄せられて現れるだけだ。私を引き寄せた者の精神が強ければ私の力を使って、その者は野望を叶えようとするだろうし、私を呼んだだけでその精神を磨耗させてしまえば、このように私の意思の方が強くなる」
「つまり、私の祖父はもうその精神を残していないということですか?」
「そういうことだ。そもそも魔力もそれほど多くなく、まともに魔法も使えなかったからな。私の力に抗う力もないのに、そなたを欲する思いだけで私を身の内に呼んだのだろう」
「それは……」
非常に気持ち悪いので、精神が消えてしまってよかったと思う。
しかし、そうなるとわからないことがある。
「私に執着していた人物の精神……魂のようなものでしょうか? それが消えたというのに、魔王はこちらに何をしにきたのですか?」
「そなたは冷静すぎないか?」
「すみません」
前世の大人な記憶があるし、この場には私だけで、心配の種だったカルロが無事なこともわかったので、今の私には恐怖心も焦りもないのだ。
「それで、ご説明いただけますか?」
「まぁ、構わんが……」
なぜか、魔王に呆れたようなため息をつかれた。
「私を呼んだ者の精神は消滅したものの、私が憑依した体にはその意志が刻み込まれている」
行動の指令を出す脳の部分に、ということだろうか?
「私自身には特に目的があってこの世界に顕在化したわけではないからな。憑依体に刻まれた意志に則って行動しているまでだ」
魔王自身には目的はないということは、よく前世のアニメや漫画で見たような、世界を滅ぼしたいみたいな欲求はないということか。
「なるほど。それで、その憑依体の本来の目的はなんなのですか?」
先ほど、「私を欲する思い」で魔王を呼んだと言っていたが、欲するとは、具体的にどういう意味だったのだろう?
それによって、魔王の行動は変わってくるのではないだろうか?
殺してでも、この体を手に入れたいとかなら少し困る……私はきっと、魔王には勝てないだろうから。
「それがだな。この人間は、どうやらそなたを手に入れたいというか、一緒に暮らしたかったようなのだ」
「……」
おそらく、あの離宮にいた美少年たちのように侍らせたかったのだろう。
「なるほど……それで、その精神が消えた今、魔王はどうしたいと?」
「さて、どうしたものかととりあえずは憑依体の意志に従ってそなたのところに来てみたのだが……」
魔王がじっと私を見つめ、それからニヤリと笑った。
変態の顔でそういう笑い方をされると本当に気持ちが悪いのでやめてもらいたい。
「この憑依体の意志に従い、この先もそなたと一緒にいるのも面白いかもしれないな」
「このまま引いて下されば敵対せずとも良いと思ったのですが?」
とりあえず、私のことを殺したいということはなさそうだ。
「我は魔王だぞ? 敵対しないという選択肢があるというのか?」
「そうですね。憑依した体が魔塔主のものとかだったら、最初に倒しておかないと危ないかなと思いますけど、その変態のものなので……いや、魔王自体が強大な力を持っているのでしたっけ?」
顕在化していない時は安全だが、肉体を得た今は危険なのだろうか?
「そうだな。魔塔主というのが私が知っている者だとしたら、同等の力はあると思うが?」
「それは……」
つまり、災害級の危険があるということでは?
魔王と呼ばれる存在なのだから、それはそうだろうと、この場にオーロ皇帝がいたなら冷静にツッコまれたかもしれない。
やはり、一度は戦う他ないのかと思い、手のひらに意識を集中して光の聖剣を出そうとしたのだが、光属性の魔力を全く感じることができず、光の聖剣を作り出すことはできなかった。
「……」
私が自分の手のひらを見つめると、魔王が教えてくれた。
「そなたが光の聖剣を作り出せるほど魔力が豊富であり、魔法操作が巧みであることはこの憑依した体の主が調査済みだったため、この場所にはそなたに力を貸す光の精霊はおらぬ」
なるほど、それゆえの真っ暗闇の空間だったということか。
「しかし、私は全属性なのですが?」
いつもカルロが張り切って闇属性を鍛えているため、私はそれほど闇属性を使ってこなかったけれど全く使えないということでもない。
「そのようだな。しかし、私も闇属性の魔法を得意としているし、そなたはそれほど闇属性の魔法は得意ではないのだろう?」
魔王が憑依している祖父が調べた情報ではそのようになっており、魔王はその情報を憑依体から得ているのだろう。
私は「まぁ、確かに」と素直に答えつつ、その場にしゃがんで足元に触れた。
「何をしているのだ?」
「闇の中ですから、別に影を媒介にする必要はないと思うのですが、いつもと同じ場所の方がイメージがしやすいので」
だから、足元で魔力を探る。




