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のぞき込んだのは、髭もじゃの汚い顔。
「なんだぁ?がきと犬っころだけじゃねぇか。
だがいい服を着てやがる」
手を伸ばして姫さんに触ろうとするから、俺は思い切りその手に噛みついてやった。
「うわっ!」
引っ込んだ男が馬車から転げ落ちる音。
俺は開いた戸から出て、今は上になってる馬車の側面に飛び乗った。
馬車の長柄が折れ、馬たちは馬具を引きずったまま転倒から逃れて離れていた。
御者は転げ落ちたのか、姿が見えない。
道の上で戦っている、ジョン・ラモントと兵士たち。
馬に乗ってる兵士は二人だけ。
ジョンともう一人は馬を失くしたらしい。
戦いはほかの奴らに任せて、馬車から転がり落ちた荷物を拾い集めている、人相の悪い男たち。
残念。
ローランディアの兵が巻き返して来たのかと思ったのだけれど、こいつらはただの盗賊だ。
なら、俺は姫さんを守るだけ。
馬車の中はぐっちゃぐちゃだったけど、俺の鼻はエマが作ってくれてたお昼ごはんを嗅ぎ当てた。
ひざ掛けの毛布を拡げて真ん中にそれを乗せ、四隅をまとめて咥える。
結べないから不便だけれど、焼き肉をかっぱらってた時より、ずっとうまくなったぞ。
一度馬車から飛び出してそれを地面に置き、もう一度馬車に飛び乗って、中で立ち上がった姫さんの外套の背中を咥えて、馬車の上に引っ張り出す。
道のほうでジョン・ラモントがこっちを見て、ぽかんと口を開けた。
あ、よそ見してると、ほら、危ない。
ジョンは振り下ろされた棒をかろうじてよけ、体勢を崩して行き過ぎた相手の尻を蹴飛ばして、剣を振り下ろす。
盗賊のほうが人数が多いけど、ジョンたちはしっかり武装して手慣れた剣をふるってる。
ま、勝敗は五分五分ってとこかな。
でも悪いな、俺たちは人質になって敵国に行く気なんてないんだ。
ほら、盗賊たちも、こっちへ走ってくるし。
姫さんがいつもみたいに、俺の背に乗る。
俺は荷物を咥えて、速足で道から外れ、林の中に入っていった。
「まてーっ!ねこーっ!」
ジョンがなんか叫んでるけど、聞こえないもんねー。
がんばれよー。負けるなよー。
でもって、あばよー。




