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第2話『解き放たれた呪いと、地獄の始まり』

身体の変容: 追放された直後、オリッペの体に劇的な変化が起きる。仲間から引き受けていた何千ものデバフや呪いのバインドが解け、体に満ち溢れていた「呪力」が純粋な「超高濃度魔力」へと精錬される。

オリッペが街を去った翌日。 冒険者ギルドは朝から活気に満ちあふれていた。

「おいドナン! 今日もダンジョン攻略か?」 同僚の冒険者が声をかけると、ドナンは自慢の聖剣を腰に叩き、不敵な笑みを浮かべた。

「ああ! 今日からはあの給料泥棒のオリッペがいないからな! 足手まといがいなくなった俺たち『栄光の剣』の本当の実力を見せてやるぜ!」

「ハハハ、期待してるぞ天才剣士!」

ドナンは仲間の前衛戦士、魔導士、ヒーラーを引き連れて、意気揚々と『亡霊の迷宮』の第15層へと足を踏み入れようとしていた。ここ最近、オリッペのサポートのおかげ(とドナンは思っていないが)で順調に攻略が進んでいたダンジョンだ。

「よし、サクッと最深部まで行って、貴重な宝箱を持って帰るぞ!」

ドナンの掛け声とともに、一行はダンジョン内へと進んでいく。 だが、彼らはまだ気づいていなかった。 自分たちを守っていた「絶対的な盾」が、もうどこにも存在しないということに。

ダンジョンの通路を歩いてすぐ、前方に3体の『ポイズン・スパイダー』が現れた。巨大な毒蜘蛛だ。

「ふん、雑魚め! 俺の神速の剣技の錆にしてやる!」

ドナンは不敵な笑みを浮かべ、剣を抜いて突撃した。 いつも通りの素早い踏み込み。今までなら、蜘蛛が吐き出す毒液や糸の攻撃は、なぜかドナンの直前で奇跡的に外れるか、当たっても「なぜか毒状態にならない」のが常だった。

しかし——。

プシューッ!

「ぐわっ!?」

ポイズン・スパイダーが放った毒液が、ドナンの肩に直撃した。

「な、なんだと!? なぜ避けられなかった……!? いや、たかが蜘蛛の毒、俺の強靭な生命力なら——」

次の瞬間、ドナンの顔面が急速に紫に変色し始めた。

「ガハッ……!? い、息が……!? なんだこの猛毒は!? 痛い、全身が焼けるように痛いぞ!?」

「ド、ドナンさん!? すぐに『キュア(毒解除)』をかけます!」 後衛のヒーラーが慌てて呪文を唱える。

「『キュア』!」

温かい光がドナンを包み込む。しかし——毒はまったく消えなかった。

「な……なんで!? ヒーリング魔法が効かない!? いつもなら一発で治るのに!」 「バカ言え! 早く治せ! 痛くて剣が握れねぇ!!」

ドナンは地面の泥をのたうち回った。 彼らが知る由もなかったが、今まで彼らが「一発で治る」と思っていたのは、オリッペが裏で特殊な呪具を使い、デバフの毒素を自分の体内に直接引き抜いていたからだ。ヒーラーの生ぬるい回復魔法だけで治っていたわけではない。

「ギャギャギャ!」

さらに悪夢は続く。ドナンの悲鳴を聞きつけた他のモンスターたちが、次々と集まってきたのだ。

「ひっ……! ヴァンパイアバットの大群だわ! 魔法で払うわ!」 魔導士の女性が杖を掲げ、強力な火炎魔法を唱えようとした。

「燃え上がれ、フレイム——えっ!?」

パチンッ!

魔導士の杖から出たのは、小さな火花ひとつだけだった。

「な、なんで!? マナ(魔力)が巡らない!? 体が……身体が金縛りにあったみたいに重い……っ!?」

「バカな、お前もか!? 俺も……腰のキズが急に痛み出して動けん!」 戦士の男も膝をついた。

彼らが「今まで蓄積してきた疲労、古傷、呪い、デバフ」のすべてが、オリッペという『器』を失ったことで、一気に本来の持ち主である彼ら自身に跳ね返ってきたのだ。

「ウギャアアアア!」 「助けて! 痛い! 痛いよぉ!!」

たかが第15層の雑魚モンスター相手に、『栄光の剣』は手も足も出ず、ボロボロになりながら逃げ惑うことになった。

「なぜだ……! なぜ急に俺の身体がこんなことに……!?」

全身を毒に侵され、激痛に耐えながら這うようにダンジョンを逃げ出すドナン。 彼の脳裏に、ふと昨日追い出した「地味な呪具師」の顔が浮かんだが、ドナンはそれをすぐに打ち消した。

「ちくしょう……! 今日は体調が悪かっただけだ! あのゴミのオリッペなんか関係あるわけがない……! げふっ!?」

ドナンは吐血しながら、命からがらダンジョンを脱出するのだった。 これが、彼らの終わりの始まりであるとも知らずに。

主要登場人物

オリッペ(主人公)

表の顔: 地味でパッとしない後衛。「呪具師」というマイナー職。

真の能力: 固有スキル【厄災の器】。仲間が受けるはずだった「攻撃」「デバフ」「呪い」をすべて自分の身に引き受け、体内に蓄積していた。

覚醒後: 追放されたことで呪いの供給がストップ。体内に溜め込んでいた莫大な呪いを「魔力」へと完全変換する術を体得し、人類規格外の魔導師へ変貌する。

ドナン(元パーティーリーダー)

人物像: 勇者職の剣士。自己中心的でプライドが高い。

状況: オリッペが裏で呪いを全て吸収していたおかげで「天才剣士」として無傷で活躍していたが、それに気づかずオリッペを「お荷物」として追放する。

シェンヌ(ヒロイン)

人物像: 追放されたオリッペと出会う、訳アリの没落貴族少女(実は古代魔導技師の末裔)。

役割: オリッペの真の凄さを最初に理解し、彼の相棒として新しい事業(呪具工房)を立ち上げる。

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