2、『魔女の宅急便』シリーズ(角野栄子・福音館書店)
先週、日本テレビの金曜ロードショーで放映されたジブリ作品『魔女の宅急便』。働く女性や自立を目指す若者たちを応援してくれる、音楽も舞台となる街も、とてもオシャレで明るい作品で、日本ルーツの人でこの作品が嫌いという人はあまりいないと思います。
私も子どもの頃から大好きな作品なのですが、実は一つだけ不満がありまして。
それは、途中から主人公キキの相棒、黒猫のジジが喋らなくなってしまうことです。
確かに、キキが子ども時代に別れを告げて大人になるということを象徴的かつ分かりやすく示してくれる、良い演出だとは思います。
しかし、昔から思っていたのです。魔女が箒で飛ぶ世界なのだから、猫が喋り続けることも許してくれたって良いのではないかと。何故なら、ジジともう話が出来ないというのが、とても寂しくて。
余計にそう思ってしまうのは、多分、原作のジジが最終巻までずっと喋り続けているからだと思います。
原作のジジは、キキの従属物ではなく、対等な相棒なのですよね。だから、キキに対して秘密を持つこともあれば諌めもするし、喧嘩もする。赤ちゃんの頃は自分がキキのお兄ちゃんだと思っていたくらい。お互いに結婚して、別の家庭を持ってからは、それぞれ自分の家庭を大事にしているけれど、どちらかが悩んでいれば、それに寄り添いもする。キキの子どもたちに伯父か叔父のような眼差しを向けていることもある。キキの子どもが何かを間違えそうな時は叱ってもくれる。
そういう関係はうらやましくて良いなあ、と思います。血は繋がっていないけれど、親友でもあって、家族でもある。
それは時々、ポケットがなくても良いからドラえもんが側にいてくれたらなぁ、と思うあの感じに似ています。
――それなら自分でもそういう存在を作ってみる?
……結果はある意味惨敗でした。
ある時、とある登場人物が命を預ける相棒として、ケット・シーはどうだろうと思ったのです。
それなりに存在感があってモフモフで、瞬間移動とまではいかないまでも、長距離を短時間で移動出来る魔法が使えて、でも普通にそれだけではドラえもんみたいで、ちょっと嫌だから、もっと個性的な人物が良い。
名前の方は一人では考えきれそうになくて、いつも仲良くしてくださる相互ユーザー様方に相談しながら、こちらでもせっせと人物に肉付けしていました。
相棒となる人間が無茶と無謀の塊で飾り気のない感じだから、こちらはもう少し落ち着いた、高貴で知的な感じが良いな、ノルウェージャンフォレストキャットのような。伝統的なケット・シーは黒白猫だからタキシードを着てるような感じになるはず。立場としては公爵様かな、いやいっそ王様にしよう。
それも、語尾に「ニャ」なんて絶対に付けない、誇り高い王様。声は艶のあるバリトンボイスで。
ある相互ユーザー様から古風で落ち着いた印象の素敵な名前を挙げて頂き、他の相互ユーザー様からは「親しみやすい、美味しそうな感じの名前だと良いですよ」とアドバイスを頂き、「書庫裏様のペンネームに因んだ名前にしては」と仰ってくださる相互ユーザー様のアドバイスもあって、「ボンボンショコラなら普通に美味しそう」ということで愛称も無事決定。
そして「二人の関係がわかる名前が良いですね」というアドバイスも頂き……。
そこでふと思ったのです。知的で誇り高き王が「ボンボンショコラ」と呼ばれても受け入れてしまう関係とは、と。
脳裏を、これまた別のジブリ作品の名言がよぎりました。「わからんか、愛だ、愛」
そうだよね、愛しかないよね。そう思った時から何か、当初思っていた関係と違っていってしまったのです。
「父親と娘とか、兄妹のような感じ……それでは、この愛称では呼ばせてくれなさそう」
そう気付いた時、彼は既に語り始めていました。
――彼女こそ、命を懸けて守りたい、ただ一人の女性なのだ。我ながら浅ましいとは思うが、彼女を他の誰かの手に委ねようとはとても思えない。
「でも、種族の壁はどうするの?」
――我が妹は人間の姿で人間の男と結婚し、息子を一人儲けている。だから問題ない。
「……ああ、そうなんだ。あるんだ、人間形態」
ノルウェージャンフォレストキャットだから、北欧繋がりで、しかも高貴な感じで、見目麗しいけれど、それなりにツワモノ感もある……。となると、とある北欧出身俳優さんに似た容姿しかイメージ出来ず。
こうして私は「どうしてこうなった」と思いながら、彼を自分の作品世界に送り出したのでした。




