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32 囲い戦法


 「視界が悪いな……」


 「暗くなると同時に森の中だしね。無理もないだろ……」


 足場が悪い。本当に魔物いるのか? しかもここに財宝があるらしい。嘘ついてたら許さんぞ……。


 「ハルト君。なんか周りが騒がしくない?」


 「そうか? 足音なんて俺らのしかないだろ」


 警戒心はいっちょ前なサザン……だといい。正直このまま何も起こらないのが望ましいのが現状。起きても少しの問題でしたで終わりたい。


 「ヘデラ。こうなりゃ魔力探知だ。頼むぞ……」


 「ほいほい~。お任せあれ」


 「へ~。魔力探知ね。よくやるわ……」


 やっぱり珍しいのか……。よく考えれば、当たり前に出来る人が多ければこんな苦労を強いられる必要はない。ギルドでも魔力探知らしきものを使うが扱いは高貴なものだったし……。


 「なるほど……げ! 囲まれてますね……」


 「やっぱり……」


 サザンの予言が当たってしまった……。


 「ハルト君。周りを照らして。敵を見つけなきゃ……」


 「それなら私にまかせな。明かりだけつけてもこんなに障害物が多いんだ。吹き飛ばせば必然的に視界がよくなる」


 「ちょま!」


 止めようとしたときにはもう周りの木々は消し飛んだ。


 「はい。これで見晴らしがよくなった」


 煙がモクモクと漂っている。爆発は芸術らしいが、更地を芸術とは呼ばせたくない。


 「ちょっとお姉さん。洗脳されている仲間を助けるんじゃ……」


 「まあいいだろ」


 よくはない。よくはないが、この際仕方ない。命を奪おうとしている相手を救うなどの都合のいい話、俺は出来ない。


 「しかし敵がいない……」


 「ちょっとそこの金髪。本当にいたんだよね?」


 「なに? 私を疑うつもり? 百年早いわよ」


 「百年ぽっちなら生きてるけど」


 「まあまあお二人さん。ここは落ち着く場面だ。それに……」


 「ハルト君。後ろ」


 サザンが皆とは違う方向を指さす。煙が邪魔していたところには一人の兵士がいた。


 「やっぱり敵は想像通りだ……」


 さっきサキュバスのお姉さんがしていた行動、手を合わせ首を傾けながら笑っている者がいる。


 「ぎぎ……あひゃ! あひゃひゃひゃひゃ!」


 きもい。なんというかおぞましい。これが相手か……。

 目がかっぴらいている。しかしその目は涙目だ。


 「あぐぐぐぐぐ……」


 「ばばば……あああああああ」


 まずい! いつの間にか囲まれた。全方位が洗脳された兵士。一人ひとり個性はあるが、一律に同じ行動をとっている。


 「こいつら本当に助かるのか?」


 「ドロスノーを倒したら洗脳は解けるさ……。ただ……その張本人がいないんだけどね……」


 見た感じ、腕六本で馬の頭蓋骨をかぶっているやつはいない。


 「とにかくだ、この戦況をどうにかしないとな……。おいハルトだっけか。お前ならどうする? 正直私としては全員殺す……のが手っ取り早いけど、そうはいかないんだろ?」


 物騒にもほどがあるだろ。魔物の考えは分からない。時折サザンを見ても思う節がある。


 「俺なら……分からん!」


 「そんな堂々と……おい。きんぱ……ヘデラは?」


 「私は……わかんない」


 「無能しかいないな……全く……サザ」


 「危ない!」


 その時、降りかかる魔法をかばう形でサザンがサキュバスのお姉さんを押しのける。


 「いっ……!」


 「うう……」


 二人が野垂れる。さっきお姉さんがいたところには更地どころか穴。それも漫画でしか見ない落とし穴のように直角にえぐられている。


 「大丈夫か!? くっそ卑怯だぞ!」


 見るところサザンが足を負傷、かすり傷のようだがダメージはデカい。そしてサキュバスのお姉さんは……。


 「ああ尻が……尻もち着いたのいつぶりだ……?」


 「ちょっとハルト。鼻の下伸ばさない」


 いいだろ。ラッキースケベくらい見逃せ。


 「サザンにかばわれる時が来たとは……ああキレてきた」


 理不尽だな。


 「理不尽ね」


 「うう。痛い」


 「サザン。大丈夫か?」


 首を横に振るサザン。仕方ないと言わんばかりにサキュバスのお姉さんが肩を貸す。


 「今治癒魔法を掛けたから……しばらく私が付きそうよ……それよりだハルト。打開策を」


 「打開策って……とにかく攻撃をかわそう。相手を傷つけられないし……洗脳さえ解ければ……」


 「そうね。私が洗脳を解けば……」


 ん? 今なんて……。


 「洗脳を解ける魔法は疲れるし……」


 「ヘデラ。無理を承知で言うが、洗脳は解けるか?」


 「まあできるけど……」


 「はよやれ!」


 「わ、分かったわよ……」


 とにかくこれで何とかなる。

 ヘデラが洗脳兵士に対して詠唱した光を浴びせた。


 「ほうほう。そんな魔法もね」


 関心してる場合じゃないだろ。とにかくこれで何とかなる。


 「ああ、俺は……」


 「よし。これで……」


 「俺は何を……ああ、まただ! またこれだ! やめろおおおおおお! ああああああ!」


 「あれれれれれ?」


 「ハルトもおかしくなったの?」


 おかしい。今明らかに洗脳が解けたはずなのに……。どういうことだ?


 「とにかくもう一回」


 ヘデラが同じ行動をし、兵士もまた同じ行動をした。結果は変わらない。

 やっぱり何かおかしい。


 「ねえ、らちが明かないわよ」


 「一気にできないか? とにかく試すぞ」


 ヘデラが俺の言葉を受け全力を出す。

 一時は全員が意識を取り戻し、安心したのも束の間、またもや洗脳が繰り返される。


 「くそ……どうしたら……」


 その時、洗脳兵士が一斉に詠唱を始めた!

 言葉にならない言葉をこちらに浴びせてくる。


 「どないしよ……」


 「これ全部くらったらたまったもんじゃないよ……」


 とにかく状況を変えなければ。


 「そうだ! 魔法を打つ瞬間に洗脳を解いたらいいんじゃ……」


 「……無駄かもしれないが、死ぬよりましか……」


 「ヘデラ! 頼んだぞ!」


 「任されました!」


 ヘデラの魔力の方が高いのか、洗脳兵士より早く魔法を完成させ、時を備える。

 その瞬間、洗脳兵士が俺たちに向かって落雷を落とす。

 ギリギリのタイミングでサキュバスのお姉さんが防御をしてくれた。


 「おい! 失敗じゃねえか!」


 「タイミングはばっちしよ!」


 確かに相手が雷を打つ瞬間に洗脳は解けたように見えた。

 

 「やっぱり殺すしか……」


 「そうしなきゃダメなのか。すまない兵士たち」


 サキュバスのお姉さんが全方位の兵士に向かって魔法を放とうとする、がしかし、いきなりその手を下げた。


 「あそこ見てみな……」


 指を差す方向にヘデラとサザンが見つめる。

 つられて見た景色の中にドロスノーがいた。うまく隠れていたようだ。なかなか気づかなかった。


 「いたね……ハルト。やるよ!」

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