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10 怪物の跡

 サザンがパーティーに入ってから数日が経った。


 「アンスは今、小銭稼ぎで木の実を集めてるから、帰ってくるまで暇だな」


 「ヘデラはまだ寝てるね」


 「そうだな~。何しようか」


 「ハルト君。一緒に外でよ」


 「これまた急だな」


 「私、サキュバスだからさ。男の人に対して何も思わなかったんだけど。ハルト君たちを見ると楽しそうだなって」


 「じゃあ、町に行こうか」


 「うん……。ヘデラは……」


 「こいつはほっといていいだろ」


 「そっか。じゃ、行こう」


 サザンと一緒に町に出かけた。


 「突然なんだけどさ。服買おうか。その格好はさすがに……」


 「そう? サキュバスなら普通だけど」


 露出度が高く、布一枚。さらに紐一つ解くだけで脱げる。

 もしかしたら、ち〇び見えるんじゃないか。


 「ハルト君。その目はエッチだよ」


 「あ……。ごめん」


 「まあサキュバスなら嬉しいことだけど」


 「そっか。そういえばサザンは何歳なんだ? 勝手に年下だと思ってるんだが……」


 「私はね~。今年で百四十歳かな」


 「え? ほんとに?」


 「まあ、魔物は人間よりも長生きだからね」


 「長すぎだろ……」


 サザンは百年以上もあんなに虐げられてたのか。

 心に来るものがあるな。


 「それよりも、なんか目線が多いいね」


 「そりゃそんな服着てたらな」


 「恥ずかしい……」


 「その感性はあったんだな」


 「服買お……」


 俺とサザンは服屋に向かった。


 服屋に着くとサザンはゆっくりと服を見て回る。

 俺もサザンに似合う服を探すか。


 「なあ、サザン。このワンピースなんてどうだ?」


 「興味ない」


 冷たく一蹴される。

 いいと思ったのに。


 「となると、これはどうだ?」


 このトレーナーはいいと思う。


 「ハルト君が着たら」


 また失敗。


 「じゃ、じゃあこの透けブラは……?」


 「変態」


 ドMはこの感覚が嬉しいのか。

 俺には分からん。

 するとサザンが一着の服を見つめる。


 「サザン。それがいいのか?」


 それは寝巻き用のロングTシャツだった。


 「なあサザン。もっと可愛いのがあると思うけど……」


 俺の問い掛けに反応しない。

 するとこの服屋の店員がやってきた。


 「お客さん。その服が欲しいの?」


 「うん」


 「となると、あなた小さい羽があるからね。私が少し改造してあげる」


 すると店員は、サザンが見つめていたロングTシャツを持って店の奥に行ってしまった。


 「本当にあれでいいのか?」


 「私の好みに口だすの?」


 「……」


 何も言えない。

 そうしてるうちに店員が出てきた


 「お客さん。これでどう?」


 ロングTシャツの背中側に小さい穴がある。


 「着てみる」


 「じゃあ試着室に行きましょうか」


 サザンは店員と一緒に試着室に入る。

 カーテンが閉められるが、二人の会話は聞こえる。


 「お客さん。普段からそんな格好を?」


 「うん。私サキュバスだから」


 「そう。魔物なのに人間の世界に馴染めてるね。すごいわ」


 「ありがと」


 「でも、人間の世界でその格好は危ないからね」


 「そっか」


 「はい。着れたね。じゃあ彼氏に見せましょうか」


 彼氏? そう聞こえたな。

 会話を盗み聞きしていたら試着室のカーテンが開いた。


 「ハルト君。どう?」


 「ちっこく見えて可愛いと思うよ」


 「それ悪口?」


 「違うよ」


 「でもこれだとパンツ履かなくても見えないね」


 「なに考えてるんだよ。パンツは履けよ」


 「これ気に入った」


 「そうか、じゃあ買うか」


 「ありがとうございます。では会計はこちらで」


 俺は店員についていく。


 「三千マニーね」


 「どうぞ」


 「ありがとね。彼女、可愛いわね。それとお似合いのカップルだと思うわ」


 「あ……ありがとうございます……」


 「では。また来てね」


 俺はサザンを連れて服屋を出た。


 「あの店員、私たちをカップルだと思ってたね」


 「そうだな。本当は違うのに」


 「ハルト君はヘデラとアンス両方と付き合ってるからね」


 「だからそれは違うって」


 「あれ? そうだっけ?」


 「もういい」


 まだ勘違いが収まらないのか。

 それにしてもロンT姿のサザンが可愛く見えてた。

 もともとの身長は俺よりも低いが、サイズの合ってない服がより小ささを表している。

 小動物みたいで守りたくなりそうだ。


 「さっきから私のこと見て発情してるの?」


 「そ、そうじゃねーよ」


 「じゃあなに?」


 「……」


 「……変態」


 「うるさい!」


 小さく呟くサザンがまた可愛く思えてきた。


 「そろそろ家に着くね」


 家が見えてきたところに一つの人影が見えた。


 「ん? あれアンスじゃね?」


 「ほんとだ」


 息を切らして玄関前で膝をついている。


 「アンス。どうしたんだ?」


 「あ! やっと帰って来たの!」


 「アンス。そんなに息を切らして……相当激しかったんだね」


 「ねえ。聞いてよ!」


 「分かったから。とりあえず家に入ろう」


 俺たちはヘデラが待つ家へと入る。


 「なんでヘデラはまだ寝てるんだよ」


 「ハルト君。ヘデラは昨日の夜中に一人で何かしてたよ。掠れ声も聞こえてた」


 「まじかよ。俺の隣でなにしてくれてたんだよ」


 「ねえ! 二人とも! 話を聞いてよ!」


 忘れてた。


 「どうしたんだ?」


 「木の実を取りに行こうとハルトたちと出会った森に入ったの」


 「ほうほう」


 「そしたらね! これがあったの!」


 そういうと、アンスはポケットから少し大きく、黒ずんだ茶色いものを取り出した。


 「なにこれ」


 「分からないの!?」


 「これは……」


 サザンが驚きの目でその物体を見る。


 「サザン。これなんなんだ?」


 「ハルト君。これは糞だよ」


 「うぇ!? きたな!」


 「確かに汚いけどもっと重要なことが分かるの」


 「そうよ。これはね。ある怪物の糞なの」


 「へー。そんなにすごいんだ」


 「すごいってもんじゃないわ! これはすぐギルドに報告しないと! サザン。ついて来てくれる?」


 「うん」


 「さ! いこう!」


 二人は出て行ってしまった。

 アンスがあんなに慌てるってことは相当なことじゃないのか?


 「うーん。ハルトはどこ~」


 やっと起きたな。


 「ハルト~。私、キスしてくれないと起きれな~い」


 「黙れ。もう起きてるだろ」


 「そんなに当たりが強くなくてもいいじゃない!」


 「まあ落ち着けって」


 「あれ? ほかの二人は?」


 「なんか怪物を見つけたってことでギルドに報告しに行ったよ」


 「てことは今は二人きりってことよね!」


 「やめろ! 近づくな!」


 「うるさい! 私も溜まってるの!」


 「お前昨晩一人でしてただろ!」


 「え? なんで知ってるの? もしかしてその気が……」


 「ない! 絶対ない!」


 「ツンデレもいいわよね。でも私はやっぱりデレデレね」


 「お前の好みなんか聞いてねーよ!」


 相変わらずのヘデラだ。

 そろそろ鬱陶しくなってきた。




 「ただいまー」


 やっと帰ってきた。


 「アンス。どうだったの?」


 「急いで依頼を出すんだって。それともう民間のハンターにも知れ渡ってるから強い人なら調査に向かってるかも」


 「そうか……。ちなみになんだけどその怪物の名前は?」


 「言ってなかったわね。その名前はサフランよ」


 「サフラン?」


 「そう」


 「ちなみにそのサフランは何がすごいの?」


 「簡単に言えば龍人。サフランはこの世界の魔物でもトップレベルの実力の持ち主よ。その実力を買われて魔王の幹部にもスカウトされたわ」


 「へー。そんな化け物も野糞するんだ……」


 「逆よ! 自分の存在をひけらかせるって言うことよ」


 「なるほど。じゃあそのサフランを倒しに行くの?」


 「無理よ。というかあの森にいるかどうかが確定してないんだから倒すも何もないわ」


 「はえー」


 「今の依頼はそのサフランがいるか調べてる段階だからね」


 「じゃあしばらくは魔物の討伐はしなくていいの?」


 「ハルト君。それは違うよ。魔物は実力がある魔物についていくのが普通なの。だからサフランについて行っている魔物はたくさんいるよ。それを討伐しなきゃいけないの」


 「大変だな」


 「そうねー。ハルト」


 「なんであなたたちはそう楽観的なのかね」


 「私たちもサフランに群がってる魔物を討伐すの」


 「え?」


 「なに驚いてるのよ。当たり前でしょ」


 「そうだよ。明日からにも依頼はどんどん来ると思うから、今日はしっかり寝ないとね」


 「うそ……今夜も楽しみたかったのに……」


 「あんまり人前でそんなことは……」


 「なに? ハルト。心配してくれるの? 私が好きだからよね?」


 こいつほんとに分からせようかな。


 「まあ、そういうことで今日はご飯を食べて、さっさと寝ましょ」


 「そうだね。私、作ってくるよ」


 明日はかなり忙しくなるのか……。

 俺の望んでたい異世界はもっとこうキラキラして……ムフフな感じだったのに。

 悔やんでも仕方ない。とりあえず明日の討伐だけを考えよう。

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