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最終話です。

 赤から黒へと変わった視界。

 目を開いた次の瞬間には、それが真っ白に変わっていた。


 夏だというのに涼しくて、快適な柔らかさが全身を包んでいる。

 ぼんやりしていた頭がはっきりしてくると、(じゅん)は今ベッドに寝転んで病室の天井を見上げているのだと気がついた。


 そうか。生き残ったんだ、俺。

 口には出なかったが、そう呟いたつもりだった純。

 その心境は半分安心したような、半分残念なような、何とも言えない複雑なものだった。


 純が目覚めたことに気づいた看護師が、すぐに担当医を呼んできた。

 意識がはっきりしていることを確認されると、純は病室にやってきた警察からの事情聴取に答えることとなった。


 もちろん純はすべてをありのままに話した。

 自分がしてきたいじめのことも、被害に遭った親友たちのことも、大山(おおやま)(めぐみ)が話していた計画のことも、すべてだ。


 ちなみに大山恵は、地下駐車場で倒れているところを警察によって確保され、別の病院へ搬送されたとのことだ。

 目覚めた彼女は計画のすべてをあっさりと白状したらしく、隣町の山に埋めたのだという二人と、駐車場に残されていた一人の遺体も発見された。

 これで事件は一段落したのだとホッとした半面、もう戻ってこない親友たちを思うと、純にとっては死にたくなるほど嘆かわしかったのは間違いない。


 検査の結果、殴られた頭にも大きな異常はなく、純は頭にぐるぐると包帯を巻き、一時は脱臼していた左腕を首から吊った状態で翌日には退院できた。

 ワンルームに帰ってきたはいいものの、しばらくは大学もアルバイトも休まざるを得ないだろう。それは身体の怪我のこともあったが、何よりも純の精神状態を考えてのことだった。


 事件が解決しても虚無感が消えない。三年前の何気ないいじめがこんな事態を招くなんて、考えてもいなかった。

 そのせいで大切な友人たちを三人も亡くした。これはきっと、自分に課せられた罰なのだ。


 だからこの罪を一生背負って生きていこうと、純は改めて覚悟を固めた。

 過去を変えることはできなくても、未来はいくらでも変えていけるのだ。とても償える罪であるとは思えないが、それでも彼には償おうと足掻くことしか思いつかない。自分が奪ってしまった命のために。奪われてしまった大切な命のために。


 大山恵が逮捕されたことは、両親の耳にも既に届いているはずだ。

 ならば純が最初にすべきことは決まっている。例え軽蔑されようとなんであろうと、明日にでも大山恵の両親に会って、三年前のいじめのことも今回の事件のことも、すべて正直に話そうと彼は決意していた。

 そこでようやく初めて、自分は三年前の償いのスタートラインに立てるのだと、純はそう考えていた。


「……ん?」


 そんな純は、久し振りに帰ってきたように感じる自室で妙な違和感を感じた。

 誰かの視線を感じるような、不気味な雰囲気。鳥肌が立つような感覚に、純は急いで玄関の鍵を閉め、窓もすべて閉め切った。


 例の事件のせいで神経質になっているのだろうか。それとも大山恵が仕掛けたと言っていた盗聴器を意識しているせいだろうか。

 いろいろ落ち着いたら業者でも呼んで、探して撤去してもらわないと。

 そう考えて無理矢理納得しようとした純だったが、そのときだった。


「――――なッ!!??」


 ふと振り向いた部屋の隅。

 そこにはいつの間にか、真っ赤な着物を着たおかっぱ頭の少女が俯いて立っていた。


 全身から冷や汗が噴き出し、脚が震え始める。

 心臓が高鳴り、目の前で起きている現象を否定しようと首を振る。


「嘘だろ……大山恵……!? そんなはず……お前は警察に捕まったんじゃ……!?」


 まさか、警察を振り切って追ってきたのか?

 事件は終わったのだと安心していただけに、純は思わずその場に尻餅をつくほど脱力してしまった。


 しかし、自分が大きな勘違いをしていることに純が気づくまでには、それほど時間はかからなかった。

 目の前にいる『座敷童』には、先日自分が抵抗してつけたはずの、頬の大きな引っ掻き傷がないのだ。

 一日二日で治癒するような傷ではなかったはず。ならば考えられる可能性など、純の中には一つしかない。


「お前、は……まさ、か……」


 その先の言葉は、純の口からは出なかった。

 純の声に持ち上がった顔は無表情。

 座敷童はそのままの表情に何の変化も見せないまま、目下で腰を抜かした憎き男に向かい、




 音もなく一歩、踏み出した。





最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。作者のわさび仙人です。


小説家になろう公式企画「夏のホラー2018」参加作品として書かせていただきました本作はいかがでしたでしょうか。

普段は恋愛ジャンルを書いているだけに慣れない表現も多かったですが、非常に楽しんで書かせていただきました。よろしければぜひぜひ感想をお聞かせくださると嬉しいです。


夏のホラーイベントは昨年(2017年)から参加したい参加したいとずっと言い続けてきた企画でした。

ですが昨年は私情により参加を断念してしまったので、今年こそはやってやろうと非常に意気込んだイベントでしたね。

本作の構想も昨年の夏には大まかに出来上がっていたもので、そこに今回のイベントのテーマである「和ホラー」を追加要素として盛り込んで完成させたのがこの「シンセツ」です。

幽霊や妖怪といったオカルト的なホラーよりは、現実味の強い「人間の狂気」を描いたホラーが書きたくて、長い時間をかけて準備した作品だっただけに形になって嬉しいですね。


本作を読んで気になっていただけた方は、ぜひわさび仙人の別作品もどうぞご覧になってくださいませ。

恋愛ジャンルの長編を二つ、代表作として投稿しておりますので、また違った作風を楽しめることと思います。宣伝失礼しました。笑

イベント期間中は最終話のページの下に、夏のホラー2018企画の表情ボタンがあると思うので、よろしければそちらの方もぽちっとお願いいたしますね!


それではまた別の作品でお会いできるのを楽しみにしています。

以上、わさび仙人でしたー!

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