今日もマック。
2日連続でマックなんて、本当に珍しい。
俺と大谷は昨日と同じものを頼み、同じ場所に座る。
こういう時、大谷は悩まないので助かる。
多くの女子はメニューを決めたり座席を選ぶのに時間がかかる。より良い条件を探すのはいいことだと思うけど、こんなところでいちいち考えのは時間の無駄じゃないのかと思う。
「ポテトちょうだい。」
席に座ると、大谷がそう言った。
冷めたポテトは嫌いな口か。
昨日は手を付けなかったのを思い出す。
「おいしいね、ポテト。」
「ああ、アツアツの状態なら絶対うまい。」
そう、アツアツなら。
昨日の俺のメッセージが伝わったのかどうかわからないが、大谷は遠慮することなく半分ぐらいポテトを食べてしまった。
「ずっとこうやっておいしく食べられたら良いのに。」
大谷は満足したようにバニラシェイクをすする。
俺は短くカリカリの一本をつまむと、こう答えた。
「ずっと食べられないからいいんだよ。」
「・・・そっか。」
そんな流れで、他愛もない会話が続く。
ポテトもなくなり、大谷のシェイクがズズズと音をたてはじめたころを見計らってこう切り出した。
「で、どうだった?」
あえて主語は言わない。
こうやって話をしにくそうな時、相手を促すにはこうしたほうが良い。
これで迷うならまだ時間を置いたほうが良いし、話すタイミングがつかめなかっただけならこれで話し始めてくれる。
大谷ならこれで十分だろう。
ところが大谷には珍しく、話は始まらなかった。
仕方なく、俺はほぼ水と化したコーラをすすった。
店内を見回すと、家族連れやカップル、女の子同士や部活帰りと思しき学ラン姿の野郎どもなど、グループの人間が多い。勉強中の大学生と思しき一人の人間もいるが、基本的には俺たちのように2人以上で向かい合っていたり、隣り合っていたりする。
みんなハンバーガーやポテトにかぶりつきながら夢中に話してる。
そんな中、俺たちはどう見えるんだろうか。
沈黙の中、そんなことをぼーっと考えてしまった。
「みっきー?」
「ん?」
「いや、なんかボーっとしてたから。」
まぁその通りなんだけど、その原因は大谷だとは言えない。
「遅くなるし、帰る?」
俺の提案に、大谷はこくりと頷いた。
ごみを一つのトレーに集め、大谷の分も重ねて俺は立ち上がる。
それを片付けていると、大谷がポツリとつぶやいた。
「なんだか、難しいなぁ。」
そう、難しくて、そして、面倒。
そんなあんまり気持ちよくない事に巻き込まれているのが俺なんだよ。
俺は心の中で呟いた。