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騎士に拾われた僕  作者: liege


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新米騎士のおしごと 報告


「なるほどね。…みんな、よく生き残ったわ」


 少し時は進んで、今は陣の天幕の中、大きな机を囲むように座って、リラさんにみんなで報告している。

 周囲には恐そうな顔の騎士とこれまた野性味を帯びた騎士に、ちょっとおどおどしてる騎士が居る。彼女らは静かに口を挟むことなく報告を聞いている。


 僕が意識を失っている間、ユリクレアさんは全く適性の無い回復魔法を使いながら、あの高速移動する魔法も併用していたようで、僕が起きた時にはかなり疲れた感じだった。

 傷の完治と、リズさんが殿に残ったことを聞いて、僕は森に引き返した。ユリクレアさんはそのまま騎士団に報告と救援に行ってもらった。

 

「僕たちはリズ隊長のおかげで助かったんです。特に僕は戦闘面においては、みんなの足を引っ張ってしまいますので…」


「それは他の隊員が飛びぬけているだけよ。あなただって十分に強いわ。それに加え、あなたの状況判断は素晴らしい。私たちが到着した時に速やかに動けたのはノエル、あなたのおかげよ」


「ルミナス様……。ありがとうございます…」


「あれ?ノエ君泣いてる…?」


「泣いてない!ちょ、覗き込まないで!」


「…テッサ、あなたもよく働いてくれたわ」


 リラさんが立ち上がってテッサを抱き撫でる。テッサは少し怯えているようにも見える。


「ひぇ…。わ、私はなんにも…。リズ隊長が逃がしてくれたおかげで…」


「そんなことないわ。あなたの前向きさにはみんな助けられてるのよ?」


「う、ううう…」


 泣き出したテッサをなだめるように優しく頭を撫で、椅子に座らせるリラさん。

 ただ、表情は真剣なものになっていた。


「こちらからも共有する情報があるの。まず、ノクスとリズの捜索と一緒に斥候を出していたわ。そして、ノクスとリズが発見されたところから数百メートルの距離に濃霧が発生していたの。しかも、普通の霧ではないわ」


「普通の霧ではない…?」


「ええ、混成種の能力かもしれないわ。高温の熱い霧よ。更に現場には大きな爆発の跡があったわ。これはノクスの言っていた不可視の光撃の影響かもしれない」


「あ~、口を挟んで悪い。現場を見る限り、霧や爆発はおそらく、そこのガキの魔法と敵の光撃が原因だと思うぜ」


 怖そうな騎士が発言する。


「ガキではなくノクスよ?」


「……その、ノクス坊は水魔法を使うんだろ?うちの団員で以前、火魔法と水魔法を訓練でぶつけた奴が居るんだが、その時と全く同じだった。熱い霧に、焼けた地面、爆発跡、俺が見たのは、全部その時の状況を大きくしたもんだったぜ」


「そう…、戦闘の余波、なのね……」


「ああ、もしあの規模の爆発を受けて、なおかつ生きてんだってぇなら、相当の強運、もしくは実力があるな」


 怖そうな騎士、いや、()()()()()()は獲物を見つけた獣のような視線を飛ばしてくる。いっそ、殺気と言えるかもしれない。


「今はよしなさい…。それで、森の奥には焼き切られた木々があったといったわね?」


「うん。あった、焼けた木、切れた木、いっぱい。後、これ…見たこと、ない」


 そう言って、鎧を胸当てしかつけてない騎士が取り出したのは、見覚えのある()()()()()()だった。


「そ、それについては、あ、あたしからっ」


 おどおどした騎士が手を挙げて発言する。


「こ、これは、おそらく、()()ですっ。これを撃つには、()()()という()が必要とか。しょ、商業連合で開発中と、聞いていますっ。ただ、ノク、ノクス君に聞いた、連続で撃つものでは、な、無く、一発ずつしか撃てないと、き、聞きました…」


「ヒナワ…ね。報告は聞いているわ、商業連合の新たな防衛設備ね。そんな技術がこの聖王国に来ていて、なおかつ新種の魔生が持っている…」


「……」


 誰も何も言わないけど、何となくわかった。

 この混成種の出現は自然じゃなくて、人が作り出したものなんじゃないか、と。


「ルミナス教導官よぉ、今回のは今までの混成種とは、どうにも勝手が違うように思うんだがよ」


「ええ、その通りよ。今までの混成種は飛び道具といえば、せいぜい(いしゆみ)を使ってくる程度。使ってない個体に関しては、多腕で剣槍を複数扱う個体だったり、逆に全身鎧だらけで堅いくらいだったわ」


「こ、混成種の形態に関しては、い、今まで解体した魔生の中でも、と、特徴というか、共通点が、あります」


「共通点?」


 怖い騎士さんが方眉を上げた。迫力ある。


「ひぃっ。……あ、の、混成種の体内には、よ、用途不明の魔道具がありまして、か、解析を書院に依頼していますが、未だ、せ、成果はありません…」


「けっ、書院の奴ら、普段は偉そうにしてんのによ、大したことできてねえじゃねか」


「そう言わないの…彼らも、必死に頑張っているわ」


 そういうリラさんの目には複雑な感情が見え隠れしている気がした。


「…すいやせん。口が過ぎやした」


「いいのよ。共有を続けるわ」


 怖い騎士さんを宥め、リラさんが話を進める。


「今まで皆には話していなかったけど、今回の件でようやく確信したわ。()()()()()()()()()()()()()()()()()


 リラさんはこれまでの混成種の特徴を、出現した順番に話していく。多腕、堅殻、弩、そして、ヒナワ。

 

 多腕(タワン)。不定形肉塊。複数の触手には様々な武器が融合しており、射程関係なく迫る刃に、凄まじい再生能力。巡回騎士だけでは手に余るとして、たまたま暇であったリラさんに依頼が来たそうだ。確かその時期は屋敷の仕事をするようになったあたりかな…。

 討伐自体は細切れにして凍らせて終わりにしたんだとか、流石だと思う。


 堅殻(ケンカク)。不定形岩塊。八腕四脚で大きな鉄棒をそれぞれ握っており、前個体とは違い柔軟性はないが、その頑強さに加え魔法への抵抗の高さが巡回騎士には鬼門だったらしく、これもリラさんが討伐。

 お気に入りの剣が折れたと愚痴を言っていたのはこれの事だったのか。


 弩弦(ドゲン)。多腕蜘蛛型。八脚多腕でそれぞれに弩や武器を構えていたそう。防御力も堅殻ほどではないがあり、何より魔法が全く効かなかったと言う。二日程掛けて全ての足を切り落としてから、とどめを刺したんだとか。

 矢がかなり大きく、一撃一撃が致命傷になりえたと語るリラさんの表情は、少し陰っているように見えた。


「……そして今回は、ヒナワ?を使っていたと…」


 リラさんに質問されたので静かに頷く。


 新しい混成種。人馬型と暫定で呼ぶことになった。人型の上半身に六脚馬の下半身。更にそこに複数の足のようなものが生えていた。動きは俊敏で、攻撃が激しく、そもそも反撃が出来なかった。

 ヒナワという武器を使い、火撃をしてくる上に、頭部からの光撃。凄い痛かった。かなりの脅威だと思う。


「た、確かに、強進化論はあ、ありえますね。じ、実際に変異体の魔生も、い、いますし。ただ、目撃数がす、少ないのでな、何とも……」


「……んー、こればかりはここで話しても仕方がないわね」


「書院がさっさと結果を出してくれりゃなぁ」


 怖い騎士さんの言葉で場が静かになる。

 そんな静かな空気の中しゃべりだしたのは胸当ての騎士だった。


「私、入る。夜の森」


「ん?何か引っかかることでもあった?」


「分かない。見にいく」


「……わかったわ。偵察班は再度森の調査ね。深入りはダメよ?」


「わかた」


「戦闘班は陣の防衛、警戒を強めて巡回人数も増やして。会敵したら即時撤退と合図を。私が行くわ」


「…あいよ」


 怖い騎士さんはなんだか悔しそうだ。


「情報部は統制者たちに情報の共有と、これからの動きについて指示を出しておいて」


「りょ、了解です!」


 最後の騎士が返事を終えると騎士たちは一斉に動き出した。

 そしてその場には新米の僕らだけになった。


「少し長引いてしまったわね。あなたたちはもう休みなさい」


 その一言で僕たちも解散となった。

 正直いろんな情報が出てきて疲れた。テッサなんか途中から魂が抜けたかのような表情だったし、ユリクレアさんは堂々と居眠りしていた。多分魔力が不足してたんだと思う。完全に枯渇すると気絶しちゃうから。

 唯一話の内容に対して、表情を変えていたのはエルだった。話が進むたびに唖然としたり、ぶつぶつ考え込んだりしていた。やっぱり頭がいいんだなと思う。


 なかなか起きないユリクレアさんを背負って用意された天幕に向かう。

 天幕は五人が寝そべればいっぱいになるくらいのものだったけど、誰も文句を言わず眠りについた。


 正直、限界、だった。


強面騎士さん 強襲

野生児騎士さん 追跡

おどおど騎士さん 情報

今後出て来るかどうかわからないけど、名前どうしよ。

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