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騎士に拾われた僕  作者: liege


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36/42

新米騎士のおしごと 生存の轟音


 そこにいたのは____



「あ、二人とも、無事だった?…耳、血が出てる。攻撃受けたの?魔法かけるよ」


 ———全身をパチパチと光らせてるノクス君がいた。


「あ…、やっぱり生きてたねノクス君」


「うん。痛かった。まだなんか変な気がする」


 顔をしかめながら肌が見えている鎧の穴をなでるノクス君。

 同時に私たちに回復魔法をかけてくれる。あったかい…。


「え、ノク、え…?」


「さっき言ったじゃん。あと少しって」


 困惑するノエル君。

 言葉足りなかったかも。


「安心して、ノクス君は簡単には死なないんだよ?ジーク様に鍛えられてるんだから」


「うん。安心して」


「ジーク様……?ノク、帰ったら全部聞かせてね」


 ノエル君ってたまに目の色変わるよね。こう、暗くなるというか。怖くなるというか。


「うん。わかった」


「はあ……。よし!現状を確認したい。ノクの方は何がどうなってる?」


「こっちは胸に穴空いたけど、治った。今ユリクレアさんが騎士団に報告と救援を求めに行ってくれた」


 ユリクレアさんも無事みたいでよかった。


「そっかあ、じゃあ私たちは救援を待つ感じ?」


「そうだね、現状僕らにできることはほぼ無いわけだし。できるのは、救援隊への敵の詳細な位置の共有かな。ノク、敵の位置は分かる?」


「いるのはわかる。でも近づかないと————」



 ピカッ



 そう話してる二人の間を一瞬強い光が照らした。

 まるで、ノクス君に穴をあけた時みたいな…。

 体が震えて、嫌な汗が流れる。

 向こうからの奇襲だったけど、ノクス君に傷を与えた攻撃。

 二人の反応は別々だった。


 ノエル君は、多分私と同じで、怯えた表情で。

 ノクス君は……ノクス君は…もう、そこには居なかった。


「え?ノ――」


 ドォン!


 ノクス君が現れた時と同じ大きな音が私のつぶやきをかき消す。

 更に森の奥でも何回も音が響いてく。


 さっき一瞬だけ見えたノクス君の表情が頭に浮かんだ。

 それはリラ様や、私たちと過ごしてきた中で()()()()()()()()()()()()顔。

 

 ノクス君、笑顔だった…。


 どうしてそんな顔をするのかわからない。

 出会った時から不思議な人だったし、もう慣れちゃったけど。

 でも、少し不安になる。

 ノクス君の知らないとこを、知ってるとこを、自分の中でうまくくっつけられない。


 私はいつも置いてけぼりだった。






 やっと耳鳴りが治まる。

 先程の光は奇襲された時の初撃と同じだと理解する。

 そして、彼――ノクが飛び出して行ってしまったことも。

 とっさに思い出すのは目の前で穴を開けられ倒れ行く親友の姿。

 僕まで胸の痛みを感じた。呼吸が出来無くなる様な、そんな感覚。

 先程治まった吐き気が、胃がひっくり返るような感覚が再び蘇ってくる。

 

 深呼吸する。思い出せ、ノクは無事だった。あの大怪我でさえ、何事もなかったかのように戻ってきた。僕はまだノクの力を全て知らないから、不安になるだけだ。ノクを信じよう。そして、帰ってきたら、親友の僕が知らない部分をたくさん教えておう。


 段々と呼吸が落ち着いてきた。頭の熱が取れ、冷静な思考が戻ってくる。

 すると、周りの音も聞こえてくる。轟音が、まだ森の向こうで響いてる。


 ノクは常識は無いが決して馬鹿ではない。それは一緒に過ごしてるうちに分かっていた。

 それに、かなり合理的な思考を持ち合わせている。稀に感覚に頼る所もあるけど。だから飛び出していったのは、何か勝算が有っての事だと思う。

 あるいは、感覚的にリズ隊長に危険があると感じたか…。

 どちらにせよ、ここにノクは居ない。しかし、心配はない。先程まで目の前が真っ暗になる程心配していたのに…。無事な姿でひょっこり現れて人の鼓膜を破っていくなんて、驚きと安心と痛みで情緒がおかしくなったよ。僕の涙を返して欲しい。……ダメだ、まだ精神が乱されている。落ち着こう。吸って、吐いて、吸って、吐いて…。

 …よし。僕達に出来る事をしよう


「テッサ、テッサ!」


 呆然としているテッサを強く揺さぶる。


「……っ」


「テッサ、聞いて。まだ終わってない」


 肩を掴む手に自然と力が籠る。


「ノクは戻った。つまり、少なくとも即死するような状況じゃない。それは君が一番わかっているだろ?」


「う、うん。でも……」


「リズ隊長もまだ戦ってる」


 森の奥で轟音が続く。


「僕たちがここで立ち止まっても、何も変わらない」


「…こわく、無いの?」


「もちろん怖いよ」


 先程から掴む肩の震えを感じてる。


「でもね、だからこそ、動くんだ!例え戦力にならないとしても!何かをしなきゃ!」


 言葉を区切る。


「僕さ、親友として、ずっとノクの隣に居たいんだ。だから、止まったり、蹲ったりしないで、彼の手を握り続けたいんだ」


「!!」


 震えは止まった。


「私も…私も!置いていかれたくない!!」


 テッサが乱暴に袖で涙を拭う。

 拭い終わった後の彼女は、いつもの明るい表情だった。


「ノエル君、何をすればいい?」


「僕らに出来る事さ」



 轟音はまだ聞こえる。今やそれは、ノクスの生存を確認できる合図となっていた。



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