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騎士に拾われた僕  作者: liege


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新米騎士のおしごと 巡回2


 二度目の王都巡回にもなると、少しだけ余裕が出てきていた。


「今日は迷子ゼロで終わるといいね……」


 テッサさんが遠い目をする。

 前回は泣きじゃくる子供を三人保護した。

 途中で居なくなった一人はパン屋で寝ていた。


「でも巡回って、思ったより平和ですね」


 僕がそう言うと、先輩騎士が笑った。


「平和で俺らの仕事がこんなものなのが一番さ」


 なるほどと思った。

 今日の担当区域は中央商業区から地下街入口付近。

 王都でも特に人通りが多い場所だった。


 商人。

 旅人。

 冒険者。

 貴族の馬車。

 色んな人が行き交っている。


「地下街って、本当にあるんだねぇ」


 テッサが階段の奥を覗き込む。

 石造りの大きな入口。

 この間の地下街入り口とはまた別の入口。

 元は古い水路だったらしい。

 今では店や酒場が並ぶ半地下の街になっている。


「夜はもっと危ないらしいよ」


 エルが小声で言う。


「新人だけで入るなってリズさんが言ってたね」


 そんな話をしていた時だった。


「――おい!」


 怒鳴り声。

 少し先で人だかりが出来ている。


「騎士だ!」


「来てくれ!」


 先輩騎士が即座に動く。


「新人は周囲整理!」


「「はい!」」


 駆け寄る。

 人混みの中心には、倒れた荷車。

 散乱した果物。

 そして怒鳴り合う二人の男。


「てめぇがぶつかったんだろ!」


「違ぇよ! そっちが急に――」


 かなり険悪だった。

 周囲も野次馬で溢れている。


「下がってください!」


 テッサが声を張る。

 意外と通る声だった。


 一方。


「……止まれ」


 ユリクレアさんが二人の間へ入る。

 空気が変わった。

 長身。

 鋭い目。

 そしてあの圧。

 怒鳴っていた男たちが一瞬で黙る。


「まず状況を説明しろ」


 低い声。

 静かなのに妙に迫力がある。

 どうやら、通行中に荷車同士が接触したらしい。

 片方の車輪が壊れ、揉めていたようだった。

 先輩騎士が確認に向かう。


「……あー、これ軸緩んでるな」


「は?」


「元々ガタ来てたんだよ。接触で完全に外れたんだろう」


 男たちが気まずそうな顔になる。

 その間。

 僕は散らばった果物を拾っていた。


「ノク、自然に混ざるね……」


 エルが苦笑する。


「片付けた方が早いでしょ。果物傷むし…」


 その時。

 ぐらり。

 荷車が傾いた。


「あ」


 車輪が完全に外れたらしい。

 崩れそうになる荷台を、とっさに支える。


「うおっ!?」


 周囲がざわついた。

 かなり重い。

 でも持てないほどじゃない。


「今のうちに直してください」


「い、いや支えてるのお前一人だよな!?」


 先輩騎士が引いていた。

 結局。

 応急修理を終え、双方へ軽い注意だけで話はまとまった。

 人だかりも解散していく。


「……騎士って、こういうのもやるんだ」


 テッサがぽつりと呟く。


「喧嘩止めるだけじゃないんだね」


「むしろ、止めなくて済むようにする仕事なんじゃない?」


 エルが言う。

 その言葉に、少し納得した。

 剣を抜くことは、一度もなかった。

 でも。

 こういう仕事ばかりの騎士、それが一番なのかもしれない。


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